1万660人という現在地と、2050年の8,066人
長野県上高井郡小布施町は、観光と景観の話題で名前が挙がることが多い町である。ただ町が国に出した計画書を開くと、語り口はもっと乾いている。内閣府が公表した第2期小布施まち・ひと・しごと創生推進計画は、人口の推移と推計から書き始めている。
人口は1985年の11,663人がピークで、その後ほぼ横ばいを保ったあと2015年以降は0.4パーセント前後の減少が続き、2020年の国勢調査で10,660人になった。国立社会保障・人口問題研究所の推計では2025年以降は年5パーセント前後の減少が続き、2050年には8,066人になるとされている。年齢3区分で見ると、年少人口は1955年の3,626人をピークに減り2045年に1,218人、生産年齢人口は1995年の7,364人をピークに2045年は5,005人、65歳以上は1960年の667人から2045年に3,432人へ増える見通しである。
単年の動きには別の顔がある。出生数は1999年の120人をピークに減り2023年は57人、死亡数は2023年に145人で、自然増減は88人の減少だった。いっぽう2023年の社会動態は転入212人が転出116人を上回り、96人の社会増である。2020年には580人の社会減を記録した年もあり、振れ幅は小さくない。計画は、合計特殊出生率が2022年に1.51で長野県平均の1.47を上回ったこと、基幹産業である農業の成長で雇用機会が増え就職を機に若年層の移住が生じたことを、近年の動きの要因として挙げている。
りんごの町が景観の町になるまでの70年
いまの姿を一足飛びに説明することはできない。町が公開している現代のまちづくりは、年号を追って経緯を並べている。1954年に小布施村と都住村が合併して町が生まれ、1956年には県下一の生産額を誇るりんごの町になった。それでも人口は1950年の約1万1000人から1970年の9,625人まで減っている。
転機は1969年で、市村郁夫町長が「文化立町」「農業立町」を宣言した。1972年に人口は1万人へ戻り、1976年に北斎館が建って初年度の来場者は3万4000人を数えた。1980年代には6地権者による町並修景事業が始まり、1990年に「うるおいのある美しいまちづくり条例」が制定される。1992年にフローラルガーデンおぶせが開き、1993年にはまちづくり会社「ア・ラ・小布施」が設立された。
2000年代に入ると、住民の庭を町の景観として開くおぶせオープンガーデンが2000年に始まり、町の説明では現在130軒超が参加している。2003年には小布施見にマラソンがスタートし、いまは毎年約8000人が走る。2004年に自立宣言を出し、2008年に小布施まちづくり委員会が発足、2009年に町立図書館「まちとしょテラソ」が開館して2011年にライブラリーオブザイヤーを受けた。2018年には小布施松川小水力発電所が建ち、2019年からは長野市とフィンランドのトゥルク市との協働が始まっている。
役場の中に大学の研究所を置いた2005年
町外の人材と組む形がはっきりしたのは2005年である。市村良三町長の就任と同じ年に東京理科大学との協働が始まり、「東京理科大学・小布施町まちづくり研究所」が役場内に開設された。大学の研究室を役場の建物の中に置くという配置は、町の説明では日本の官学協働の先行事例として位置づけられている。
その後の広がりも町が列挙している。信州大学、法政大学、東京大学先端科学技術センター、慶應SDM・SFCである。人口1万人規模の自治体がこれだけの大学と関係を持っている例は多くない。研究所が役場内にあるという一点が、学生や研究者が町に通う理由を日常の業務の隣に置いたという読み方ができる。
若者を集める側の仕掛けもあった。2012年から2018年まで開かれた小布施若者会議は、町内外の若者による事業創造と行政との協働を支援する場で、町の説明では会議をきっかけに新たな施策や事業が生まれ、町の認知度の向上にも寄与したとされている。スポーツ施設の整備が相次ぎ、若い世代の感性による事業が生まれているという記述も続く。そして町は、次の時代のまちづくりを担う世代の育成と、町外の応援者との協働を今後の課題として挙げている。会議という形は2018年で終わり、関わり方の設計はいま作り直す段階にあるということである。
町が何を数えているかで、方針が見える
2025年4月から2030年3月までの第2期計画には、企業版ふるさと納税の寄附活用事業に紐づく重要業績評価指標が分野ごとに並んでいる。そのうち町外との関わりに直接ふれるものを抜き出すと、町の構えが見えてくる。
| 指標 | 現状値(計画開始時点) | 目標値(2029年度) |
|---|---|---|
| 関係人口向けLINEアカウント「おぶせじん」登録者数 | 2,700人 | 4,000人 |
| 転入者数 | 338人/年 | 400人/年 |
| 観光協会利用者数 | 19,471人/年 | 35,000人/年 |
| オープンガーデンオーナーの軒数 | 102軒 | 107軒 |
| 新規就農支援制度を利用し定着した農家数 | 24人 | 35人 |
| 農地の集積率 | 35.1パーセント | 50パーセント |
| 行政との施策展開に具体的に繋がった協働プロジェクト数 | 記載なし | 5事業 |
| 図書館来館者数 | 80,377人 | 81,000人 |
目標の置き方には強弱がある。観光協会利用者数は約1.8倍、関係人口のLINE登録者は1.5倍に伸ばす一方、オープンガーデンのオーナー軒数は102軒から107軒と控えめで、図書館来館者数もほぼ現状維持である。先に挙げた町の説明が参加130軒超と書いているのに対し、計画のオーナー軒数は102軒となっていて、数えている対象と時点が違うことに注意したい。前期の小布施まち・ひと・しごと創生推進計画は転入超過者数83人に対して平均50人、新規雇用創出30人という目標で、合計特殊出生率は1.39を維持する設定だった。企業からの寄附の目安は2期とも28,000千円の5年累計で、毎年7月に外部有識者が効果検証を行い、結果は町の公式サイトで公表するとされている。
学生がこの町と関わるなら、どこを見るか
関わり方を探す側から読み直すと、使える入口は3つある。ひとつは関係人口向けのLINEアカウントで、2,700人から4,000人へ増やす目標が立っているので、受け入れの意思がはっきりしている。ふたつめは協働プロジェクト数という指標で、行政の施策展開に具体的に繋がったものを5事業と数える設計になっている。企画を持ち込む相手が数を追っているという状況は、提案する側には追い風である。
3つめは農業の側で、新規就農支援制度を利用して定着した農家を24人から35人へ、農地の集積率を35.1パーセントから50パーセントへという目標が置かれている。計画が「若者が戻りたくなる事業者誘致」を具体的な事業に挙げている点も合わせて読むと、就農と起業が若年層の受け皿として想定されていることが分かる。町民一人あたりの体育施設利用数の算定根拠には令和6年1月1日現在の総人口10,992人という数字が使われており、町の規模感もここから掴める。
ひとつの自治体を計画書から読む手順は他の町にも使える。似た形で読んだ記事としては合併しない選択をした村があり、大学側から見た入り方は大学のゼミが地域に入る450件と大学は関係人口の入口になるかで扱っている。実際に地域の現場へ足を運ぶ機会を探すなら、FLASPOのような地域体験の窓口から当たるのも手になる。
よくある質問
小布施町の人口は増えているのですか。国勢調査では2020年に10,660人で、2015年以降は0.4パーセント前後の減少が続いたとされています。単年で見ると2023年は転入212人・転出116人で96人の社会増でしたが、出生57人に対して死亡145人で自然増減は88人の減少です。長期の推計では2050年に8,066人とされています。
小布施若者会議はいまも開かれていますか。町の説明では2012年から2018年までの取り組みとして記載されています。会議をきっかけに新たな施策や事業が生まれたと町は書いており、今後の課題として次の時代のまちづくりを担う世代の育成と町外の応援者との協働を挙げています。現在の関わり方を探すなら、関係人口向けのLINEアカウントや協働プロジェクトの枠から当たることになります。
大学との協働はどの大学が関わっているのですか。2005年に東京理科大学との協働が始まり、東京理科大学・小布施町まちづくり研究所が役場内に開設されました。町はその後の広がりとして信州大学、法政大学、東京大学先端科学技術センター、慶應SDM・SFCを挙げています。
オープンガーデンの軒数が資料によって違うのはなぜですか。町の「現代のまちづくり」は2000年に始まり現在130軒超が参加していると説明し、第2期計画の指標は「オープンガーデンオーナーの軒数」を計画開始時点102軒としています。数えている対象と時点が異なるため、どちらかが誤りというより、別の数え方が並んでいると考えるのが正確です。
計画の進み具合はどこで確認できますか。計画は毎年度7月に外部有識者による効果検証を行い、検証後速やかに町の公式サイトで公表するという手順を定めています。指標の現状値と目標値は内閣府が公表している計画書に載っているため、公表された検証結果と突き合わせれば、どの分野が動いてどの分野が止まっているかを追えます。
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