関係人口のデジタル窓口は誰が回すのか|登録制度389団体の内側

名簿はデジタルになった。回す人はどうか

地域と関わる人を増やしたい自治体が、まず作るものは何か。答えは窓口である。訪ねてきた人、寄附をした人、イベントに来た人を名簿に載せ、次の案内を送る。この一連をデジタルに載せる動きが全国でどこまで進んだのかを、国の調査が1年ごとに記録している。

内閣官房が実施した令和7年度 関係人口の創出・拡大に向けた取組状況調査は、全都道府県と全市区町村の1,788団体を対象に、令和7年8月15日から11月17日にかけて行われた。回答は1,738団体で、有効回収率は97.2パーセント。全国の自治体がほぼ漏れなく答えている調査なので、一部の先進事例ではなく平均的な姿が見える。

結論を先に置くと、デジタルの道具はすでに行き渡っている。詰まっているのは道具ではなく、それを動かす人の側だった。以下、調査の数字をその順に追う。

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1,436団体が動き、389団体が名簿を持つ

まず規模の確認から。令和6年度に関係人口の創出・拡大に関する取組を実施したのは1,436団体で、前年から29団体増えた。実施しなかったのは302団体である。地方版総合戦略に関係人口の記載がある自治体は1,328団体で、文言は使っていないが同じ趣旨の記載がある団体を足すと1,515団体に達する。政策文書の上では、ほぼ全国的な方針になっている。

取組の中身は複数回答で集計されている。最も多いのは個人版ふるさと納税を行った人を関係人口にしていく取組の650団体で、次に地域から都市部住民への働きかけが614団体、都市部で開くイベントや相談会が608団体と続く。企業版ふるさと納税を通じた創出・拡大は470団体、不特定の相手への情報発信と活動募集が400団体だった。

そして本題の登録制度である。関係人口の登録制度を持つと答えたのは389団体。実施団体の約4分の1にあたる。寄附やイベントで一度接点を持った人を、名簿に載せて継続的に扱う段階まで来ているのはこの範囲ということになる。残りの1,000団体あまりは、接点を作ってはいるが名簿化はしていない。

手段の中身を開くと、順位がはっきり出る

389団体はどんな手段で登録者とつながっているのか。調査はここを複数回答で聞いており、順位に偏りがある。公式SNSが239団体で最多、デジタルとアナログを問わないファンクラブが164団体、メールマガジンが86団体、オンラインコミュニティが38団体、その他が110団体だった。

特典の側も見ておきたい。登録者向けの情報発信が301団体で最も多く、オリジナル会員証や名刺、NFTなどの登録証が130団体、グッズや特産品が88団体、地域内の商業施設での割引が70団体、公共施設の割引が43団体、地域通貨やポイントが32団体となっている。

区分 内容 団体数 389団体に占める割合
手段 公式SNS(LINE、Facebook等) 239 61.4%
手段 ファンクラブ(デジタル・アナログ問わず) 164 42.2%
手段 メールマガジン 86 22.1%
手段 オンラインコミュニティ 38 9.8%
特典 登録者向けの情報発信 301 77.4%
特典 登録証(会員証、名刺、NFT等) 130 33.4%
特典 地域通貨・ポイント特典 32 8.2%

割合の列は調査に載っていないため、団体数を389で割って算出した。並べ替えると性格が分かる。6割が選んだ公式SNSは、既存のアプリに相乗りする形で、運用の手間が最も軽い。一方、双方向のやりとりが前提になるオンラインコミュニティは1割に届かない。特典も、送るだけで済む情報発信が8割に迫るのに対し、原資と精算が必要な地域通貨やポイントは1割を切る。

つまりデジタル化の進み方は、技術の新しさではなく「続けるのに人手がかかるか」で順番が決まっている。NFTを含む登録証が3分の1まで広がっているのは、発行して渡せば終わる一方通行の道具だからだと読める。

詰まっているのは人のほうだった

同じ調査は、施策を進めるうえでの課題も聞いている(1,726団体が回答、複数回答)。最も多いのは自治体内の人員不足で1,176団体。次が予算不足の771団体、担う地域主体が少ないか存在しないが689団体、中間支援組織が見つからないが512団体、何から始めればよいか分からないが347団体だった。地域住民の理解が得られないは81団体にとどまる。

予算の出どころも見ておくと、単独予算が1,272団体で突出している。内閣府の地方創生に関する交付金は478団体、他の自治体の予算は415団体、その他の国の補助金やモデル事業は238団体、民間企業や団体からは111団体。予算措置はないと答えた団体も249あった。交付金で始めた事業を、自前の予算で継続する構図になっている。

所管部署が担っている政策も複数回答で聞かれており、移住・定住が1,269団体、まちづくり・地域活性化・企画が1,158団体、観光が458団体、産業振興が377団体、雇用が231団体。所管する部署がないと答えたのは163団体だった。移住定住の担当者が、移住に至らない関わりまで併せて見ているのが多数派である。導入したSNSやコミュニティを回すのも、同じ机の上の仕事になる。

学生の側から見ると、どこに隙間があるか

以上を学生の立場に置き換えると、入りやすい場所と求められている役割が見えてくる。公式SNSで登録できる自治体が239あるということは、住んでいなくても名簿に入れる地域がそれだけあるという意味だ。登録のハードルは低く、情報発信を受け取るだけなら負担もない。

一方、オンラインコミュニティが38団体しかないのは、やり取りを設計し回す手が足りていないからである。人員不足を挙げた1,176団体と、何から始めればよいか分からないと答えた347団体は、ここで重なる。投稿の企画、参加者の呼び込み、記録の整理といった仕事は、学生のインターンやプロジェクトで引き受けられる範囲に入る。実際に調査では、高校生の地域留学が105団体、都市部住民の副業・兼業の推進が103団体、地方創生インターンシップが43団体で実施されている。数が少ないぶん、提案が通る余地は大きい。

地域と若者をつなぐ入口づくりはFLASPOが各地で取り組んでいる領域でもある。関わり方の全体像は関係人口のオンライン事例と関係人口の現状を数字で確かめるに、自治体側のデジタル施策の広がりは地方創生DXの成功事例にまとめてある。あわせて読むと、389団体という数字が全体のどこに位置するかがつかめる。

よくある質問

この調査はどこで公開されていますか。内閣官房の地方創生のサイトに概要資料が置かれています。対象は1,788団体、回答は1,738団体で、令和7年8月15日から11月17日までの期間に行われました。同じ系統の調査が毎年実施されているため、前年との比較も資料の中に併記されています。

関係人口のDXというとき、何を指しているのでしょうか。この調査に「DX」という項目はありません。登録制度の手段と特典、情報発信の方法といった個別の設問を集めると、人の名簿と連絡経路をデジタルに置き換える動きとして読めます。本記事の整理はその読み方に沿っています。

登録制度に入ると何が届きますか。最も多いのは情報発信で301団体が実施しています。会員証や名刺、NFTのような登録証を出す団体が130、グッズや特産品が88、商業施設の割引が70、公共施設の割引が43、地域通貨やポイントが32という分布です。金銭的な見返りより、関わりの証と情報が中心だと言えます。

自治体が最も困っているのは予算ですか。順位では人員が先に来ます。人員不足が1,176団体、予算不足が771団体で、400団体以上の差があります。予算の出どころは単独予算が1,272団体と最も多く、交付金に頼りきりではない点も押さえておくとよいでしょう。

オンラインだけの関わりは関係人口に数えられますか。数えられます。国土交通省が令和7年6月27日に公表した地域との関わりについてのアンケートでは、18歳以上の約2,263万人が関係人口と推計され、そのうち訪問を伴わない非訪問系が約379万人(約4パーセント)を占めています。自治体の登録制度は、この層に届く経路でもあります。


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