ファッションとは何か|衣服・服装との違いと流行が生まれる仕組み

ファッションとは何か|衣服・服装との違いと流行が生まれる仕組み

「流行」と訳すと、半分が抜け落ちる

ファッションという言葉を日本語に置き換えるとき、多くの場合は流行が選ばれる。ところがこの訳だと、毎朝クローゼットの前で何を着るか決めている行為が含まれなくなる。流行は結果の側だけを指しており、選ぶ人の判断がどこにも入っていない。

もともとこの語は、作り方や様式を意味するラテン語を語源に持ち、英語では「やり方」「型」に近い意味で使われてきた。服に限った言葉でもない。建築や音楽、話し方にも使う。つまり、ある時期に多くの人が共有する「型」とその移り変わりを指す言葉だと考えると、服装の話と社会の話がつながる。

型は自然に湧いてくるものではなく、作る側と選ぶ側の両方から押し上げられて生まれる。供給の仕組みが変われば型の寿命も変わり、価格が変われば持つ枚数も変わる。

ここでは、衣服と服装との線引き、流行が立ち上がる仕組み、枚数と価格の30年、そして手放し方まで含めた考え方という順に整理していく。

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衣服、服装、ファッションは指している範囲が違う

三つの語は日常では混ぜて使われるが、指す対象の大きさが違う。どの層の話をしているのかを区別すると、議論がかみ合うようになる。

語 指している対象 変わる速さ 例
衣服 身につける物そのもの 物として残る シャツ、コート、靴
服装 ある場面での組み合わせと着方 その日ごとに決める 面接の服装、式の服装
ファッション 社会で共有される様式とその移り変わり 数年単位で動く 丈の長さ、肩の形、素材の好み

服装は、場面の側に正解がある。誰に会うのか、どこへ行くのかで求められる形が決まるので、判断の基準は外側にある。実際の場面ごとの選び方は面接のマナー|入室から退室までの基本と服装の判断基準やプレゼンの服装はどう選ぶ?場面別コーディネートと清潔感の鉄則のように、場面から逆算する形で整理できる。

これに対してファッションは、正解がどこにも固定されていない。昨年まで古く見えた形が今年は新しく見える、という反転が起きる。同じ一着でも、物としての価値は変わらないのに、社会の側の型が動いたせいで見え方が変わる。この反転こそが、流行と呼ばれている現象の中身である。

型が動く速さは、供給の側から決まっている

新しい形が広まるかどうかは、作り手の感性だけでは決まらない。何着作られ、どこで作られ、いくらで売られるのかという条件が、型の寿命を直接左右する。ここは数字で確かめられる。

経済産業省の繊維産業の現状と政策について(2024年9月)によると、国内におけるアパレルの供給点数は1990年には約20億点だったが、2022年には37.3億点まで増えている。1.8倍以上である。一方で2022年の輸入浸透率は数量ベースで98.5%に達し、国内で売られる衣料品のほぼすべてが海外で作られたものになっている。

同じ資料では、繊維産業の事業所数は約1.3万、従業者数は約23.1万人、出荷額は約3.7兆円(いずれも2021年)とされている。作る場所が国外に移り、点数が倍近くに増えた。この二つが同時に起きると、企画から店頭までの期間が短くなり、型の入れ替えが速くなる。

結果として、流行は「少数の発信者が決めて下に降りてくる」という単純な形では動かなくなった。短い周期で大量の候補が市場に投入され、売れたものが事後的に流行と呼ばれる。選ぶ側の反応が、以前よりも早く型に反映されるようになったということでもある。

支出はほとんど増えていないのに、枚数は増えている

供給点数が1.8倍になったのだから、買う側も倍近く使っているのだろうと考えたくなる。実際の家計の数字はそうなっていない。

総務省統計局の家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均では、被服及び履物の1か月平均は総世帯で8,172円、二人以上の世帯で9,985円、単身世帯で5,175円だった。前年からの実質増減率は総世帯で2.1%の増加である。単身世帯の消費支出は1か月169,547円なので、衣服と靴に使われているのは3.1%ほどにすぎない。

つまり、同じくらいの金額で以前より多くの枚数を手にしている。1着あたりの価格が下がったぶんが、枚数に置き換わった形である。そしてその枚数は、着られているとは限らない。

環境省のサステナブルファッションのページでは、1年間に一度も着られていない服が1人あたり約24着あり、持っている服の45%が使われずにしまい込まれていると示されている(しまい込みの推計対象年は2023年)。買う量ではなく、持っている量が問題になりつつある。

枚数が増えると、一着にかける手入れの時間は反比例して減る。洗い方を覚える前に次の一着が来るので、傷んだら買い替えるという循環になりやすい。価格が下がったことの代償は、金額ではなく付き合いの短さの側に出ている。

手放し方までを含めて考えると、選び方が変わる

一着を選ぶとき、ふつうは買う瞬間のことだけを考える。出口の側を先に見ておくと、入口の判断が変わる。

環境省の同じページによると、家庭から手放された服のうちリユースやリサイクルで再活用される割合は約42%で、残りは焼却や埋め立てに回る。その量は年間で約46万トンにあたり、大型トラック約130台分を毎日処分している計算になる。政府は家庭から廃棄される衣類の量を、2030年までに2020年度比で25%削減する目標を掲げている。

サステナブルファッションという言葉そのものは、約6割の人に認知されている。知られていないわけではなく、出口の設計が生活の側に組み込まれていないのが実情である。環境配慮をものづくりの前提として扱う考え方はデザインとサステナビリティ|環境配慮の考え方を解説でも触れている。

実務的に効くのは、三つの軸を自分の中に持つことだ。場面に合うか、手持ちの何と組めるか、傷んだときに直せるか。三つめを入れると、同じ価格帯でも選ぶ物が変わる。地域の作り手や素材から服を考えたい人は、FLASPOのように地域とつながる場を入口にすると、産地や工程の話から判断の材料が増える。

よくある質問

ファッションと流行は同じ意味ですか。流行はファッションの一部分です。社会で共有される様式とその移り変わりを指すのが元の意味で、流行はその移り変わりの側だけを言い表しています。毎日の服選びという行為は、流行という訳語には含まれません。

ファッションと服装の違いはどこにありますか。服装は場面ごとの組み合わせを指し、判断の基準が外側にあります。式や面接なら求められる形が決まっているため、正解に近づける作業になります。一方で様式そのものは固定されておらず、数年単位で動きます。

流行は誰が決めているのですか。特定の誰かが一方的に決める構図ではなくなっています。国内のアパレル供給点数は1990年の約20億点から2022年の37.3億点へ増え、短い周期で大量の候補が市場に出ます。そのなかで選ばれたものが、結果として流行と呼ばれます。

服にお金をかけないと流行は追えませんか。家計調査では被服及び履物の支出は総世帯で月8,172円でした。金額が小さくても枚数は増えており、追う手段が購入だけに限られるわけではありません。手持ちの組み合わせを変えるだけでも見え方は動きます。

服を減らすところから始めてもよいのでしょうか。1人あたり約24着が1年間一度も着られておらず、持っている服の45%がしまい込まれているという推計があります。何を持っているかを把握するほうが、買い足すより先に効きます。手放す先を決めてから片づけると、処分以外の道が選べます。

サステナブルファッションとは何を指すのですか。素材の調達から製造、流通、着用、手放す段階までを通して環境と社会への負荷を抑える考え方を指します。約6割の人がこの言葉を認知しており、家庭から出る衣類の廃棄量を2030年までに2020年度比で25%削減する目標も掲げられています。

語源まで含めると意味はどう変わりますか。作り方や様式を意味するラテン語に遡る言葉で、服だけを指すものではありません。建築や音楽、話し方にも同じ語が使われます。ある時期に多くの人が共有する型とその移り変わり、という広い意味で捉えると、服装の変化と社会の変化が同じ線の上に並びます。


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