地域と大学の関わりは、契約の件数として記録されている
大学が地域に関わっているという話は、イベントや授業の紹介として語られやすい。一方で、研究として引き受けた仕事は契約として残り、全国で集計されている。こちらを先に見ると規模の感覚がつかめる。
文部科学省が令和8年2月12日に公表し、同年7月10日に更新した大学等における産学連携等実施状況については、令和6年度の実績をまとめたものである。調査時点は令和7年3月31日、対象は国公私立大学と高等専門学校、大学共同利用機関の計1,077機関で、回答は1,051機関、回答率98パーセントだった。
共同研究と受託研究、治験等、知的財産を合わせた研究資金等受入額は約5,313億円で、前年度より約593億円、12.6パーセント増えている。このうち民間企業からの受入額が約1,504億円である。残りは国の資金や公的機関、地方公共団体などから入っていることになる。
同じ県の企業と自治体を相手にした件数が地方別に出ている
この調査には、地域社会との産学連携を数える項目がある。同一県内の企業および地方公共団体との共同研究と受託研究の実施件数を、地方ごとに上位10機関まで並べたものである。各地方の1位を抜き出すと、こうなる。
| 地方 | 1位の機関 | 件数 | 受入額 |
|---|---|---|---|
| 北海道・東北 | 東北大学 | 171件 | 544,274千円 |
| 関東(東京都を除く) | 茨城大学 | 89件 | 72,848千円 |
| 東京都 | 東京大学 | 1,263件 | 9,635,172千円 |
| 北陸・甲信越 | 信州大学 | 159件 | 262,875千円 |
| 東海 | 名古屋大学 | 273件 | 1,865,675千円 |
| 近畿 | 大阪大学 | 471件 | 4,027,346千円 |
| 中国・四国 | 広島大学 | 190件 | 574,233千円 |
| 九州 | 九州大学 | 153件 | 544,922千円 |
文部科学省の令和6年度実績より作成した。相手の企業は同一都道府県内に限られるが、地方公共団体については同一都道府県内とは限らないと注記がある。
上位10機関の顔ぶれを見ると、地方では国立大学が並ぶ一方、東北芸術工科大学36件、岡山理科大学53件、九州産業大学50件、金沢工業大学64件のように私立大学が入ってくる地方もある。公立では秋田県立大学31件、富山県立大学54件、福井県立大学30件、静岡県立大学30件、横浜市立大学36件が顔を出している。県が設置した大学が県内の相手と組むのは筋が通った形で、数字でも確認できる。
地方ごとの厚みの違いは、上位10機関の下の方を見ると分かる。東京都の10位は東京農工大学の182件だが、北海道・東北の10位は秋田県立大学の31件、関東で東京都を除いた区分の10位は千葉工業大学の20件である。近畿の10位は京都府立医科大学の35件、九州の10位は大分大学の37件だった。10番目に並ぶ機関の件数で、その地方にどれだけ相手がいるかがおおよそ見える。
件数が多いことと、金額が大きいことは一致しない
同じ表の件数と受入額を割ると、1件あたりの規模が出てくる。ここで地方と東京の差がはっきりする。
| 機関 | 件数 | 受入額 | 1件あたり |
|---|---|---|---|
| 東京大学 | 1,263件 | 9,635,172千円 | 約763万円 |
| 筑波大学 | 79件 | 426,924千円 | 約540万円 |
| 東北大学 | 171件 | 544,274千円 | 約318万円 |
| 岩手大学 | 60件 | 74,552千円 | 約124万円 |
| 弘前大学 | 57件 | 49,342千円 | 約87万円 |
| 帯広畜産大学 | 50件 | 23,152千円 | 約46万円 |
同じ資料の件数と受入額から計算した。1件あたりの額は四捨五入している。
帯広畜産大学と東京大学では、1件あたりで16倍を超える開きがある。金額が小さいことは質の問題ではなく、相手の違いである。県内の中小企業や町村が出せる研究費は数十万円から百万円台になりやすく、そこを数十件積む形が地方の産学連携の実像に近い。地方創生の文脈で大学に相談が持ち込まれるとき、動く金額はこの水準だと考えておくと話が噛み合う。
地域の企業と大学が接する場面の広がりは地方の中小企業と大学生の協働でも扱っている。研究契約として残るのは接点の一部で、授業や実習として動く分はこの集計には入っていない。
全国の共同研究の平均と比べると位置が分かる
地方の数十万円という水準は低いのか。比べる相手として、民間企業との共同研究の全国値がある。
令和6年度の民間企業との共同研究は32,093件で、前年度から907件、2.9パーセント増えた。研究費受入額は約1,065億円で約37億円、3.6パーセントの増である。1件あたりの受入額の平均は約3,319千円で、前年度から約23千円増えている。
この平均を押し上げているのは大口の契約である。1件あたり1,000万円以上の共同研究に係る受入額は約606億円で、民間企業との共同研究全体の約56.9パーセントを占める。件数では少数の契約が、金額では半分以上を持っていくという構造になる。
つまり平均の332万円は真ん中の姿ではない。地方の大学が県内の相手と結ぶ数十万円台の契約は、この分布の下側に厚く積まれている部分にあたる。全国の平均額だけを見て自分の地域の話を測ると、実態より大きく見積まってしまう。
学生が研究の側から地域に入るときの足場
ここまでは大学の実績の話である。では在学中の学生がこの回路に乗るとき、どこを見ればよいのか。
同じ調査には、研究の運営を支える人の配置状況が載っている。リサーチ・アドミニストレーターを配置している機関は212で前年度から6機関増え、配置人数は2,010人で189人増えた。企業と大学に同時に所属するクロスアポイントメント制度を導入した機関は270で13機関増えている。地域の相手との契約を実務で回しているのはこうした職の人たちで、研究室の教員だけで成り立っているわけではない。
起業の側の支援も数えられている。起業を目指す学生や研究者に向けて、研究成果の事業化を試すためのギャップファンドプログラムを実施した機関は90で13機関増え、アクセラレーションプログラムを実施した機関は71で10機関増えた。所属する大学がこの数に入っているかどうかは、学内の産学連携窓口の名称で検索すれば確かめられる。
授業として地域に入る形から始める道もある。単位の扱いや企業連携型との違いは大学の地域連携PBLとはに整理があり、大学が制度上どこまで地域を担っているかは大学は地域の何を担っているのかで三層に分けている。研究契約と授業のどちらから入るかで、関わる期間と責任の重さが変わる。学外のプロジェクトから探す場合はFLASPOのように若者向けの枠を集めている窓口もあわせて見ておきたい。
よくある質問
自治体と大学の共同研究は全国で何件あるのか。この調査は同一県内の企業と地方公共団体を合わせた件数を地方別の上位10機関まで示す形で、自治体分だけを切り出した全国の合計は公表されていない。自治体との件数を知りたい場合は、個々の大学が出す産学連携の年次報告を当たることになる。
研究費はどのくらいの規模なのか。地方の国立大学では1件あたり50万円から150万円程度に収まる例が多く、東京の大規模大学では700万円を超える。民間企業との共同研究の全国平均は約332万円だが、1,000万円以上の契約が金額の56.9パーセントを占めるため、平均は上に引っ張られている。
学部生でも関われるのか。共同研究の契約は大学と相手方で結ぶもので、学生が当事者になるわけではない。研究室がその契約を持っている場合に、調査や分析の担い手として入る形になる。研究室選びの段階で、地域の自治体や企業との契約があるかを聞いておくと確実である。
ゼミや研究室の活動は集計に入っているのか。この調査が数えているのは共同研究や受託研究などの契約であり、授業や実習として地域に入る分は含まれていない。大学と地域の接点の総量は、ここに出ている件数より多いと考えたほうがよい。
地域の課題を研究として持ち込むことはできるのか。大学側の受け皿は産学連携や地域連携の窓口で、受託研究や共同研究の相談として扱われる。費用の負担が前提になるため、無償の協力を期待して持ち込むと話が進まない。先に予算の有無を整理しておきたい。
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