道の駅の赤字は誰の赤字か|公表された収支は13駅分しかない

1,234駅あって、収支が見えるのは13駅分

道の駅の経営が厳しいという話は、地方創生の失敗例としてよく引かれる。では全国で何割が赤字なのか。この問いを公的な資料で確かめようとすると、最初の段階で行き止まりになる。全国の道の駅の収支を集めて公表した統計が見つからないのである。

駅の数そのものは分かる。国土交通省は2026年9月4日の第65回登録で3駅を新たに登録し、全国の道の駅は1,234駅になったと発表した。登録は国が要綱に基づいて行うため、数と所在地は公表資料で追える。追えないのは、その1,234駅がそれぞれいくら売り上げ、いくら足りていないのかという側である。

収支に踏み込んだ公的資料は、総務省の管区行政評価局が地域と駅数を限って行った実地調査にある。北海道管区行政評価局が道内13駅を回った調査と、中国四国管区行政評価局が中国地方30駅を調べた調査の2本である。いずれも全国を代表する標本として抽出されたものではない。

つまり「全国の何割が赤字か」には、現時点の公的資料では答えが出ない。答えが出るのは「抽出された駅ではどうだったか」と「赤字という言葉が誰の帳簿を指しているのか」までである。この2つだけでも、失敗例として語られてきた中身はかなり変わる。

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13駅を回った調査が見つけた反転

北海道管区行政評価局は平成31年3月22日、調査結果に基づく改善通知を出している。道内の13駅を抽出して現地調査を行ったもので、見出しには「収支を確認できた10駅のうち、交付額を除いても黒字となるのは1駅のみ」と書かれている。

内訳はこうである。収支を確認できたのは13駅のうち10駅で、運営・管理者等の数では11者。直売所の管理者2者を含む数え方になっている。この時点での黒字は6駅、赤字は5駅であり、ここだけを見れば半々に近い。

反転するのはここからである。黒字額から市町村が交付した管理費用を差し引くと、黒字として残るのは1駅だけになる。しかもそれは直売所の管理者であって、休憩施設を含む駅全体の運営者ではない。調査は、市町村から管理費用の交付を受けなければ経営が困難な道の駅があると指摘している。

数字の時点も確かめておきたい。11者の収支は平成29年度のものを基本に整理され、平成25年度に販売施設を休業した1駅については直前の24年度の収支が使われている。10年前の北海道の13駅という範囲の話であり、ここから全国の傾向を引き出すことはできない。それでも「管理費用を数に入れるかどうかで黒字と赤字が入れ替わる」という構造は、地域や年度を越えて効いてくる。

帳簿が3つに分かれている

なぜ管理費用でそこまで変わるのか。道の駅の作りと持ち主を分けて見ると理由が分かる。中国四国管区行政評価局が平成29年1月にまとめた道の駅の機能向上に関する調査は、中国地方の101駅のうち主要幹線道路沿いにあるもの等30駅を抽出し、設置者と管理者の関係を整理している。

30駅の設置者は、29駅が市町で、残る1駅はその他として第三セクターが挙げられている。登録要綱では、案内・サービス施設の設置者は市町村またはこれに代わり得る公的な団体とされており、民間企業が自分の判断で道の駅を名乗れる仕組みにはなっていない。

区分 内訳 駅数
設置者 市町 29
設置者 その他(第三セクター) 1
整備方式 一体型(うち21は国が駐車場・便所等を整備) 24
整備方式 単独型 6
管理者 指定管理者 29
管理者 設置者自身 1

中国四国管区行政評価局「道の駅の機能向上に関する調査」の調査対象30駅の概況より作成した。

この表が示しているのは、1つの道の駅に帳簿が3つ並んでいるという事情である。駐車場やトイレは国が整備した部分があり、建物と土地は市町が持ち、売店や食堂の営業は指定管理者である別の法人が担う。市町は指定管理者に管理費用を払い、指定管理者はそれを収入に入れて決算を組む。

だから「この道の駅は赤字だ」という一文は、指定管理者の損益を指すことも、市町が払っている管理費用を指すことも、施設全体で見た採算を指すこともある。言葉は同じでも対象が違う。地方創生の失敗例として並べられた事例を読むときは、どの帳簿の話なのかを先に確かめたい。収支の主体がずれると、同じ駅が黒字にも赤字にもなる。

売上の規模はどのくらいか

赤字かどうかの前に、道の駅がどのくらいの商いをしている場所なのかを押さえておきたい。中国地方の30駅について、調査は平成27年度の利用者数と売上高の分布を示している。

利用者数は、10万人以上50万人未満が21駅で全体の70パーセントを占めた。50万人以上100万人未満が5駅で16.7パーセント、100万人以上は1駅で3.3パーセントである。売上高は、1億円以上5億円未満が15駅で50パーセント、5億円以上10億円未満が6駅で20パーセント、10億円以上が1駅で3.3パーセントとなっている。

同じ調査は、全国の年間利用者数が2億人を超え、売上げが2,100億円に達していると書いている。ただしこれは平成24年の数字で、設置数も平成28年12月末現在の1,107駅として記されている。いまの1,234駅とは100駅以上違う。規模感の目安として使うのはよいが、現在の数字として引くと時点が合わなくなる。

こうして並べると、道の駅の多くは年商1億円から5億円の小売・飲食の現場だということになる。従業員を数十人抱える規模ではない事業所が、休憩施設と情報発信と防災の役割まで背負っている。観光の収益見通しが外れる構造については、観光で稼ぐ計画はなぜ外れるのかでも別の角度から触れている。

収支に出てこない仕事がある

北海道の調査には、収支の話とは別に災害時の役割が記録されている。調査対象13駅のうち8駅が指定避難所または指定緊急避難場所に指定されており、協定を締結済みの駅は5駅だった。調査は、災害を想定した訓練の実施などを課題として挙げている。

この部分は売上にも利益にも計上されない。駐車場を24時間無料で開け、トイレを清潔に保ち、災害のときに人を受け入れる準備をしておくことは、損益計算書の上では費用の側にしか現れない。採算だけで評価すると、担っている仕事の一部が最初から見えない状態になる。

学生がこのテーマを調べるなら、順番を決めてから資料に入るのが早い。まず国土交通省の登録に関する報道発表で駅数と要件を押さえ、次に総務省の管区行政評価局の調査で現場の実態を読み、最後に対象の市町村の予算書や決算書、議会の資料で指定管理料の実額を当たる。管理費用は自治体の支出なので、民間企業の決算と違って公開されている。地域の課題を数字で扱う練習としては、資料の出どころがはっきりしている分だけ扱いやすいテーマである。こうした調べ方を実際の地域課題に当てる場は、FLASPOが扱う若者向けのプロジェクトにも用意されている。

道の駅と直売所の線引きが曖昧になりやすい点は、特産品の直売所ガイドで整理している。産品が地域に残すお金の流れをたどるなら、特産品と地方創生もあわせて読んでおきたい。

よくある質問

全国の道の駅のうち何割が赤字なのか。公的な統計としては見つからない。確かめられるのは、北海道管区行政評価局が道内13駅を抽出した調査で、収支を確認できた10駅の11運営・管理者等のうち黒字が6駅、赤字が5駅だったという範囲である。これを全国の割合として読み替えることはできない。

赤字の道の駅はどうやって営業を続けているのか。市町村が指定管理者に管理費用を交付している場合がある。北海道の調査では、黒字額からこの交付額を差し引くと黒字が1駅だけになった。営業が続いていることと、営業だけで費用を回収できていることは別の話である。

道の駅は民間でも作れるのか。登録要綱では、案内・サービス施設の設置者は市町村またはこれに代わり得る公的な団体とされている。中国地方の30駅を見ると、設置者は29駅が市町で、1駅が第三セクターだった。民間企業は指定管理者として運営に入る形が多い。

なぜ全国の収支が集まらないのか。登録の制度は国が持っているが、施設の設置と管理は市町村の仕事であり、運営は指定管理者の決算に入る。制度の設計上、収支の情報が国に集まる仕組みになっていない。一つの駅を調べるときは、国の資料から下りていくのではなく、その市町村の公開資料から入るほうが早い。


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