福祉の役に立ちたいと思って検索すると、出てくるのは介護職の求人と資格講座の広告ばかりである。無資格で、週末だけ、知らない土地でも関われる入口はどこにあるのか。手がかりは求人サイトの側ではなく、窓口を法律で決められている団体の側にある。
「福祉」が指す範囲は条文に書いてある
介護の言い換えだと思われがちだが、法律の線引きはもっと広い。社会福祉法第4条第3項は、地域住民等が把握して解決にあたる課題を「地域生活課題」と呼び、福祉、介護、介護予防、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題と、地域社会からの孤立を並べて挙げている。買い物に出られない人の移動、子どもの放課後の居場所、入院した家族を抱えた世帯の家事。どれも同じ条文の射程に入る。
担い手の位置づけも同条にある。第2項は、地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者、そして社会福祉に関する活動を行う者をまとめて「地域住民等」と呼び、相互に協力して地域福祉の推進に努めなければならないと定める。無償で関わる人は三番目にあたる。制度の外側にある善意ではなく、条文があらかじめ想定している役割である。
そこで最初に決めるべきは、作業の中身ではなく向かう相手だ。高齢の人か、障害のある人か、子どもか、暮らしに困っている人か。対象がひとつ決まれば、窓口も受け入れ先も、任される仕事の形までほぼ自動的に絞れる。逆に「福祉全般」で探し続けると、検索結果は求人情報に戻ってしまう。
住民の参加を助けることは社協の法定事業である
受付の役を担うのは市区町村の社会福祉協議会だが、これは慣習ではない。同法第109条第1項は市町村社会福祉協議会が行う事業を四号に分けて列挙しており、第1号が社会福祉を目的とする事業の企画及び実施、第2号が社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助である。住民を現場につなぐこと自体が、法律に書かれた仕事になっている。
だから社協に置かれたボランティアセンターは、窓口の一つではなく本線にあたる。住んでいる市区町村の名前に社会福祉協議会を足して検索すると、センターの連絡先と募集一覧にたどり着く。登録票に希望の対象と曜日を書いて提出し、条件の合う依頼が来たら連絡をもらう形が多い。施設へ直接電話をかけるより、ここを通したほうが選べる幅は広い。
規模も公表されている。厚生労働省の福祉・介護ボランティア活動のページによると、令和5年4月現在の活動者は613万人、グループ数は18.9万グループである。ただしこれは都道府県・指定都市及び市区町村の社協のボランティアセンターが把握している人数とグループ数で、企業の社会貢献活動や大学のサークル、オンラインで完結する活動は含まれにくい。実数の下限として読むのが妥当だろう。登録から初回参加までの段取りはボランティアの始め方に時系列でまとめてある。
受け入れ先は7万8千か所あり、その半分は子ども向けである
社協に登録したあと紹介されるのは、多くの場合どこかの施設である。全国にいくつあるのかは厚生労働省の令和6年社会福祉施設等調査の概況で追える。令和6年10月1日現在の総数は78,079施設で、前年から276施設増えた。
| 施設の種類 | 施設数(令和6年10月1日) | 前年からの増減 | 無償の協力者に回りやすい役 |
|---|---|---|---|
| 児童福祉施設等(うち保育所等23,511) | 40,118施設 | 264施設減 | 読み聞かせ、園庭や花壇の手入れ、行事の設営 |
| その他の社会福祉施設等(うち有料老人ホーム18,460) | 26,820施設 | 684施設増 | 趣味の講座、茶話会の進行、館内の案内 |
| 老人福祉施設 | 5,069施設 | 57施設減 | 話し相手、レクリエーションの補助、外出の付き添い |
| 障害者支援施設等 | 5,371施設 | 86施設減 | 作業の手伝い、送迎の同行、イベントの受付 |
| 身体障害者社会参加支援施設 | 315施設 | 2施設増 | 点訳、音訳、手話による通訳の補助 |
| 保護施設 | 284施設 | 3施設減 | 学習支援、相談会の運営補助 |
| 母子・父子福祉施設 | 55施設 | 増減なし | 子どもの預かりの補助、調理の手伝い |
数の並びは意外に思えるかもしれない。福祉施設と聞いて浮かぶのは高齢者向けの建物だが、件数では児童福祉施設等が全体の半分を占め、その大半は保育所等である。高齢者の側は、公的な老人福祉施設5,069施設より有料老人ホーム18,460施設のほうが多い。つまり「高齢者と関わりたい」と言ったときに紹介される先は、民間の住まいである確率が高い。
施設の外にも受け皿はある。内閣府の特定非営利活動法人の活動分野別の統計では、2026年3月31日現在で保健、医療又は福祉の増進を図る活動を定款に掲げる法人が28,503法人あり、認証を受けた49,071法人の過半にのぼる。配食、移動支援、居場所づくりのように、建物を持たずに地域で動く団体もこの中にいる。
体に触れる仕事は、思っているより手前で止まる
現場に入って最初に戸惑うのは、やってよいことの範囲が狭く見える点だろう。背景には資格制度がある。厚生労働省は原則として医行為ではない行為として三本の通知を出しており、その前提として、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為を反復継続する意思をもって行うことが医業であり、免許のない者には禁じられていると説明している。
通知が原則として医行為でないと整理したのは、腋下や耳での体温測定、自動血圧測定器による血圧測定、異常のない爪の爪切り、重度の歯周病等がない場合の口腔内の清拭、耳垢塞栓を除く耳垢の除去といった行為である。令和7年12月26日の医政発1226第12号では、条件つきで湿布の貼付と、尿漏れを確認した際の蓄尿バッグの接続が加わった。注意したいのは、これが介護職員を念頭に置いた整理だということだ。専門的な管理が必要な状態なら同じ行為も医行為になりうるとも書かれている。
免許を持つ職員向けの線引きがここなのだから、研修を受けていない協力者に回るのはさらに手前の仕事になる。話を聞く、場を整える、移動に付き添う、記録を書く職員の手を空ける。物足りなく感じるかもしれないが、施設が最も人手を欲しがっているのはこの帯である。同じ通知は、事故が起きた場合の刑事上・民事上の責任は別途判断されるとも述べている。線を越えないことは自分を守ることでもある。
初回に確かめる四つで、続くかどうかが決まる
長く関わっている人と一度で辞めてしまう人の差は、熱意ではなく初日の確認事項にある。第一に保険である。社協のボランティアセンターはボランティア活動保険の加入窓口を兼ねていることが多く、年度ごとの掛金で自分のけがと相手への賠償の両方を扱う。加入の有無と、誰が手続きをするのかをその場で聞いておく。
第二に費用の扱い。交通費や昼食代が出るのか、実費精算か自己負担かで、半年続けたときの出費はまるで変わる。第三に頻度と連絡の形で、月に何回を期待されているのか、都合が悪くなったときは誰にいつまでに伝えるのかを決めておく。無断の欠席が一度あると、施設側は次の依頼を出しにくくなる。
第四に守秘義務の範囲である。福祉の現場では、利用者の病名や家族構成、経済状況を自然に見聞きする。写真の扱いや会話の持ち出しについては、入る前に書面で説明を受けるのが普通だと考えてよい。この四つを押さえておけば、残る不安は現場の慣れだけになる。学生や社会人が地域の活動に関わる道筋はFLASPOでも紹介していて、気持ちの準備の面は初めてのボランティアの心構えが参考になる。
よくある質問
資格がなくても受け入れてもらえるのか。受け入れ先の多くは無資格を前提に役を組み立てている。介護職員初任者研修などを持っていれば任される幅は広がるが、持っていないことが門前払いの理由になる場面はまずない。
高校生や大学生でも登録できるのか。年齢の下限は社協ごとに異なり、中学生から受け付けるところもある。未成年は保護者の同意欄があるのが一般的で、学校行事として団体で入る枠を別に持つ社協もある。
月に一度しか行けない場合はどうか。行事の設営や片づけ、季節の手仕事のように、単発で人数が必要な依頼は常にある。先に頻度を伝えておけば、それに合う依頼だけを回してもらえる。
福祉の仕事に就くつもりがなくても参加していいのか。構わない。施設側が求めているのは将来の職員ではなく、その日の人手と、利用者と話す相手である。結果として進路が変わる人もいるが、それは副産物にすぎない。
活動中に相手がけがをしたら誰が責任を負うのか。だからこそ保険の確認が最初に来る。施設の指示に従って動いていた範囲であれば、施設側の管理責任として扱われるのが通例だが、加入している保険の種類と補償の範囲は事前に書面で確かめておきたい。
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