関係人口のうち移住へ向かうのは2割|直接寄与型36%との差

関わっている人のうち、移住を考えているのは何割か

地域に通い始めた人が、そのまま住む側へ移っていく。移住施策の説明ではよく語られる流れだが、実際にどれくらいの割合でそれが起きているのかは、長いあいだ数字で示されてこなかった。国土交通省が令和7年6月に公表した「地域との関わりについてのアンケート」は、この問いに正面から答えている。

調査は令和5年9月から10月に行われ、有効回答は118,963人。18歳以上の居住者およそ10,275万人のうち、特定の地域と継続的に関わっている人は約2,263万人、2割強と推計された。訪問をともなう関わりが約1,884万人で約18%、訪問しない関わりが約379万人で約4%である。この母数の作り方は関係人口の現状を数字で確かめる|2,263万人とふるさと住民登録制度でも扱っている。

そして訪問先の地域へ移住したいかを尋ねた結果は、「近い未来に移住したい」が6.1%、「いつかは移住したい」が14.4%だった。合わせて約2割。残りのうち25.3%は「気持ちはあるが現実的ではない」と答え、54.2%は移住したいとは考えていないと答えている。関わりが移住の前段階になっている人は、少数派である。

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関わり方の型によって、3倍近い差がつく

全体の2割という数字は、関わり方を分けると一気に散らばる。地域の課題解決や地域づくりに直接関わる「直接寄与型」では、移住したいと答えた人が約36%に達した。一方で、買い物や趣味で通う「趣味・消費型」は13.5%にとどまる。同じ「関係人口」という言葉でくくられていても、移住との距離はまったく違う。

関わり方の型 近い未来に移住したい いつかは移住したい 合計
直接寄与型 11.6% 24.1% 35.7%
就労型(現地就労) 9.8% 19.1% 28.9%
参加・交流型 5.6% 14.3% 19.9%
就労型(テレワーク) 5.0% 11.2% 16.2%
趣味・消費型 3.5% 10.0% 13.5%

もう一つ押さえておきたいのは、この移住意向が訪問をともなう関わりの人に対して聞かれているということだ。寄附や物産の購入のように現地へ行かない形で関わる約379万人は、この設問の対象に入っていない。関わりの総数と、移住の手前まで来ている人数を同じ土俵で語れないのは、こうした調査の作り方にも理由がある。

注意したいのは、訪問系で最も人数が多いのは趣味・消費型だという点である。母集団の大きい型ほど移住意向の割合は低い。自治体が関係人口の数を増やしても、移住者の数が同じ比率で増えるわけではないのは、この構造から来ている。関わり方の分類そのものは関係人口の種類と分類|訪問系と非訪問系、5つのタイプで関わりを読むに詳しい。

1年に何日行っているか、という現実

意向の差は、実際にその地域で過ごしている時間の差とほぼ重なる。訪問系の年間訪問日数は、「1日以下」が約20%、「2日から7日」が約49%、「8日以上」が約31%だった。半数近くが年に1週間以下しか現地にいない。これでは暮らしの手触りまでは分からないし、仕事や住まいの具体的な見通しも立たない。

例外は就労型である。現地就労とテレワークのどちらも、年間8日以上の人が約半数を占める。仕事という理由が付くと滞在日数が伸び、滞在日数が伸びると移住意向も上がる。順番として、気持ちが先に動いて日数が増えるのではなく、通う理由が先にあって日数が増え、その結果として移住が選択肢に入る、という読み方ができる。

移動の手段も日数を左右する。訪問先までの主な交通手段は自家用車が約58%で最も多い。ただし鉄道や新幹線、飛行機、高速バス、路線バス、フェリーといった公共交通を合わせると自家用車を上回る。車を持たない学生や若い世代にとって、公共交通で行ける地域かどうかは関わりを続けられるかの分かれ目になる。

流動の向きも面白い。訪問系の人の流れで最も多いのは「三大都市圏以外の地域から三大都市圏以外の地域へ」の約763万人で、次が「首都圏都市部からその他地域へ」の約293万人だった。地方から地方への関わりが、都市から地方への関わりより大きいということになる。移住先を考える段階の整理は移住先の選び方|後悔しない地域選定の5つの判断軸と調べ方が参考になる。

移住したい理由は、地域の魅力より先に住環境

移住したいと答えた人に理由を尋ねると、最も多いのは「住環境に魅力を感じる」で30.6%、次が「自然環境が豊かである」の28.8%、3番目が「親族の近くに住むのが便利である」の25.1%だった。地域の人や文化への愛着が先に来るわけではない。住まいと環境と家族の距離という、暮らしの土台にあたる項目が上位を占めている。

型ごとに見ると色が出る。直接寄与型では「地域コミュニティやつながりに魅力を感じる」が高く、関わるほど人との関係が移住の理由になっていく。就労型のテレワークでは「都市機能が充実している」「通勤・通学に便利、進学・転職・起業に有利である」が高い。同じ移住という言葉でも、片方は地域に入りたい動機、もう片方は条件のよい場所を選ぶ動機で、求めるものが逆向きである。

受け入れる側がこの差を取り違えると、施策が空振りする。交流イベントを増やしても、住環境の情報が出てこなければ直接寄与型以外には届かない。逆に家賃補助だけを並べても、つながりを求めて通っている人の背中は押せない。

足りないのは気持ちではなく、時間と移動費だった

地域と関わりたいと思っているのに関われていない人に、何が改善されれば関われるかを尋ねた項目がある。答えは「仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保」が27.4%、「移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減」が26.7%、「地域に行くための交通の利便性の改善」が26.4%で並んだ。意欲の問題ではなく、時間と費用と足の問題である。

学生にとっては、この3つのうち時間だけは比較的持っている。長期休暇は社会人より長く、平日の予定も自分で動かせる。一方で費用の制約は大きい。だから学生が地域と関わるときは、交通費や滞在費が出る仕組みを先に探すほうが続きやすい。FLASPOのような受け入れ先と学生をつなぐ取り組みも、この費用と段取りの壁を下げる役割を持っている。

なお前回の調査では、訪問をともなう関係人口は約1,827万人と推計されていた。定義の範囲も調査時期も違うので単純な比較はできないが、関わる人の規模そのものは小さくなっていない。細ったのは関わりの量ではなく、関わりが移住に変わる割合をどう見るか、という前提のほうである。

よくある質問

関係人口は移住の予備軍と考えてよいのか。調査の結果では、移住したいと答えたのは全体の約2割で、半数以上が移住を考えていない。予備軍とみなすより、関わり続ける層としてそのまま数えるほうが実態に近い。

移住に近いのはどの関わり方か。直接寄与型が約36%で最も高く、就労型の現地就労が28.9%で続く。地域の中で役割を持つ関わり方ほど、移住が選択肢に入りやすい。

年に何日行けば関わりとして数えられるのか。調査は日数で線を引いていない。関係人口の定義は日常生活圏や通勤圏以外の特定の地域と継続的かつ多様な関わりを持つことで、年1日以下の人も約20%含まれている。言葉の由来や定義の幅は関係人口とは?総務省・国交省の定義の違いと5つの分類で確かめられる。

この調査はどこで読めるのか。国土交通省の報道発表に概要があり、類型別の集計は資料2に載っている。移住意向は57ページ、移住したい理由は58ページである。

誰に聞いた調査なのか。対象は18歳以上の全国の居住者で、方法はインターネットアンケート、有効回答は118,963人である。母数の推計には令和2年国勢調査の人口が使われている。

出典:国土交通省「地域との関わりについてのアンケート」(令和7年6月27日 報道発表/資料2)


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