同じ清掃活動でも、片方だけが数に入る
大学の近所の河川敷でゴミを拾う。長期休みに片道四時間かけて通っている町で、同じようにゴミを拾う。活動の内容は変わらないのに、国の統計で関係人口として数えられるのは後者だけである。
国土交通省の報告は関係人口を「移住や観光でもなく、単なる帰省でもない、日常生活圏や通勤圏以外の特定の地域と継続的かつ多様な形で関わり、地域の課題の解決に資する人など」と定義している。条件は三つに分解できる。日常生活圏と通勤圏の外であること、継続的であること、地域の課題の解決に資すること。帰省や法事のための訪問は地縁・血縁的な訪問者として別に数えられ、関係人口からは外れる。
この線引きは意地悪ではない。地域の側が知りたいのは、住んでいないのに関わり続けてくれる人がどれだけいるかだからだ。地元の住民が地元を掃除するのは、統計の目的からすれば別の話になる。学生がボランティア経験を地域との関わりとして語るときは、まずこの境目のどちら側にいるかを自分で確かめておいたほうがいい。
もう一点押さえておきたいのは、関係人口という言葉が自治体の施策名にも使われている点だ。地域の側は関係人口を増やすことを目標に掲げて予算を組んでおり、受け入れの窓口や補助の対象も関係人口という括りで設計されている。自分の活動がその括りに入るかどうかで、使える制度と相談できる窓口が変わってくる。
ボランティアは分類名の中に名前で書き込まれている
では関係人口のどこにボランティアが入るのか。国交省の報告は訪問系を五つに大分類し、地域との結びつきが最も強い型を直接寄与型と呼んでいる。その定義に並ぶ活動は、産業の創出、商店街の空き店舗有効活用の活動、朝市・マルシェへの出店活動、ボランティア、地域資源・まちなみの保全活動、まちおこしやむらおこしにつながるプロジェクトの企画・運営、または協力・支援である。
残る四つは、就労型(現地就労)が地元企業での労働や農林漁業への就業と援農、就労型(テレワーク)が本業や訪問地域外の仕事をその土地で行うもの、参加・交流型が地域の人との交流やイベント、体験プログラムへの参加、趣味・消費型が地縁や血縁のない土地での飲食や趣味活動だけを行うものとなっている。訪問を伴わない非訪問系は、ふるさと納税、クラウドファンディング、地場産品等の購入、特定の地域の仕事の請け負い、情報発信、オンライン活用で構成される。
五つの並びを見れば、ボランティアが置かれた位置の意味が分かる。消費や交流より一段深く、就労と同じ列に置かれている。報酬が発生しない活動が、現地就労と並んで最も結びつきの強い型に入っているのは、支払いの有無ではなく地域の課題に手が届いているかで分類されているからだ。
数えてみると、関わりの濃い側がいちばん小さい
分類の次は規模である。推計は居住地を二つに分けて行われた。三大都市圏の18歳以上の居住者は約4,678万人で、そのうち約18パーセント、約861万人が訪問系の関係人口にあたる。その他地域の18歳以上の居住者は約5,937万人で、約16パーセント、約966万人である。合わせて全国の訪問系関係人口は約1,827万人と推計されている。
| 類型 | 三大都市圏 | その他地域 |
|---|---|---|
| 直接寄与型(ボランティアを含む) | 約301万人・約6.4% | 約327万人・約5.5% |
| 就労型(現地就労) | 約49万人・約1.0% | 約60万人・約1.0% |
| 就労型(テレワーク) | 約88万人・約1.9% | - |
| 参加・交流型 | 約189万人・約4.0% | 約217万人・約3.7% |
| 趣味・消費型 | 約233万人・約5.0% | 約267万人・約4.5% |
| 非訪問系 | 約123万人・約2.6% | 約128万人・約2.2% |
| 関係人口でない | 約3,409万人・約72.9% | 約4,556万人・約76.7% |
直接寄与型は三大都市圏で約6.4パーセント、その他地域で約5.5パーセントと、どちらも二十人に一人程度にとどまる。就労型(現地就労)は約1.0パーセントしかない。関わりが濃くなるほど人数が落ちる形は両方の圏で共通しており、都市に住んでいるか地方に住んでいるかで大きく変わらない。地域の担い手が足りないという話の実体は、この落ち方そのものである。
推計の出どころは国土交通省の報道発表資料と、分類の定義を載せた報告書本体である。
継続と定期という二語が、単発の参加をふるい落とす
一度だけ災害ボランティアに行った経験は、関係人口に数えられるのか。調査の定義は訪問系を「定期的・継続的に関わりがある地域があり、かつ、訪問している人」としているため、一回で終わった訪問はここには入らない。災害時の一回が二年後の祭りの手伝いにつながり、年に数回通うようになったところで線を越える。
調査の設計も確かめておきたい。三大都市圏に住む人を対象にしたインターネットアンケートの有効回答は74,579人、その他地域では74,252人で、合わせて148,831人の回答から母集団に拡大推計している。実施は令和2年9月で、報告書は新型コロナウイルス感染症の拡大直前の状態を捉えたものとして数字を示している。
十五万人規模の回答に基づく推計である一方、時点は固定されている。この数字を引くときは「令和2年の調査で」と添えるのが正確で、現在の人数がこのままだとは言えない。学生がレポートや面接で使う場合も、調査名と時点をそろえて言えるかどうかで扱いが変わる。
そして定義のうえで重要なのは、継続の判定が本人の回答に委ねられている点だ。何回以上なら継続かという閾値が外から与えられているわけではない。自分の関わりを説明するときは、回数と年数を具体的に言えるようにしておくと、どの型に当たるかの判断が相手に渡せる。
学生が境目を越えるときに起きること
日常生活圏の外で継続的に関わる、という条件は、学生にとって実は越えやすい。授業期間は動けなくても長期休みがまとまって取れるからだ。問題は二回目以降をどうつなぐかにある。
続いている例に共通するのは、次の約束が帰る前に決まっていることである。次の行事の日程、担当する持ち場、連絡を取る相手の名前。この三つが決まっていれば、半年空いても関わりは切れない。逆に「また来ます」で別れた関係は、ほとんど一回で終わる。
訪問が難しい時期の受け皿になるのが非訪問系だ。ふるさと納税や地場産品の購入、情報発信、オンラインでの手伝い、特定の地域の仕事の請け負いがここに入る。現地に行けない期間をこの形でつなぎ、休みに訪問へ戻る往復ができると、関わりは年単位で持続する。学生と地域をつなぐ事業者が間に入る形もあり、FLASPOのような仲介を使う選択肢も含めて、自分の時間割に合う入口を選べばいい。
関係人口そのものの定義の違いは関係人口とはに、分類の全体像は関係人口の種類と分類に整理してある。活動先の探し方は学生ボランティアの探し方が扱っている。
もうひとつ現実的な論点がある。三大都市圏に住む学生のほうが直接寄与型の割合が高い点だ。約6.4パーセントと約5.5パーセントで、都市に住む側がわずかに上回っている。遠い土地に関わる人のほうが、地域の課題に手を入れる形で関わりやすいという逆転がここに出ている。距離があるほど目的を持って動くからだろう。近くに関わり先がないことは、不利とは限らない。
よくある質問
住んでいる市内でのボランティアは関係人口になりませんか。日常生活圏や通勤圏の中での活動は、国交省の定義からは外れる。活動の価値が下がるわけではなく、数え方の目的が違うだけである。
帰省先での手伝いはどう扱われますか。地縁や血縁のある場所への訪問は地縁・血縁的な訪問者として別に数えられ、関係人口の集計からは除かれている。祖父母の家の近所の祭りを手伝う場合も同じ扱いになる。
直接寄与型と参加・交流型は何が違いますか。イベントや体験プログラムに参加する側であれば参加・交流型、企画や運営の側に回るか保全活動のように地域の課題へ直接手を入れていれば直接寄与型にあたる。同じ祭りでも、来場者と実行側で型が変わる。
オンラインだけの関わりでも数えられますか。非訪問系として別に集計されている。三大都市圏で約123万人、その他地域で約128万人で、訪問系より人数は少ない。
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