「聞かせてほしい」と言う側が、相手を探している
ゼミや学生団体で地域の話を扱っていると、自治体は学生の声など求めていないだろうという前提が会話に混じる。公表されている数字は反対を向いている。こども家庭庁が令和6年1月1日から12月31日までを対象に行った調査では、こども・若者から直接意見を聴く取組を実施していた自治体は1,158団体だった。内訳は47都道府県と1,111市区町村である。調査対象は47都道府県と1,747市区町村で、回答率は都道府県が100パーセント、市区町村が98パーセント(1,714団体)だった。回答した市区町村の6割強が、年に一度は若い世代から意見を聴く場を持っていたことになる。
同じ調査は、取組を進めるうえでの課題も複数回答で尋ねている。最多は「担当部局の職員の知識・経験」の1,310団体だが、その次に並ぶのが「意見聴取をする参加者の確保」で1,168団体にのぼる。以下は職員の人数が1,105団体、進行役となるファシリテーターの確保が1,055団体と続く。最も重い課題を一つだけ選ばせた問いでも、知識・経験が360団体、参加者の確保が327団体、職員の人数が321団体と差は小さい。席を用意した側が、座る人を見つけられずにいる。地域参画を「狭き門」と見る前に、この順番を知っておくと動き方が変わる。
聴き方は単発のアンケートに寄っている
では、その1,158団体はどういう形で意見を集めているのか。調査は取組を四つの型に分けて数えている。文字ベースはインターネットのアンケートやチャット、会話ベースは対面で直接聴く形式を指す。都道府県では不定期の文字ベースが43団体、不定期の会話ベースが40団体で並び、定期的に複数回行うものは会話ベースが22団体、文字ベースが10団体まで落ちる。市区町村では不定期の文字ベースが901団体と突き抜けて多く、不定期の会話ベースが535団体、定期的な会話ベースが281団体、定期的な文字ベースが100団体である。
聴き方
都道府県
市区町村
不定期・文字ベース
43団体
901団体
不定期・会話ベース
40団体
535団体
定期・会話ベース
22団体
281団体
定期・文字ベース
10団体
100団体
回答した1,714市区町村のうち、継続して顔を合わせて話す場があるのは281団体しかない。割合にすれば6分の1ほどだ。一度のアンケートに答える機会は広がったが、関係が続く場は限られている。長く関わりたい学生にとっては、この281団体のような仕組みがどこにあるのかを探すほうが実りがある。逆に言えば、続ける形をつくれる人材は、自治体の側で足りていない。
集めた意見は、どこへ行くのか
意見を出す前に確かめたいのは、それがどの文書に効くのかである。調査では、聴いた意見を反映した、あるいは反映予定と答えた主な対象が挙がっている。最も多いのは自治体こども計画やこども・子育てに関する計画で714団体、次に学校や児童館といった身近な施設の運営方針が41団体、教育に関する計画が15団体だった。公園の整備や居場所づくりといったまちづくりの政策に反映したという回答もある。計画への反映が圧倒的に多いという形は、裏を返せば計画を書く時期に意見を出せば届きやすいという意味になる。
一方で、返ってくる扱いには幅がある。反映の結果をホームページで公表している例が挙げられている一方、成果物を公表するだけの例や、そもそもフィードバックを実施していない自治体も一定数あったと報告されている。意見を言ったのに何も返ってこなかったという経験は、この構造から生まれる。参加する側としては、募集の文書に結果の扱いが書かれているかどうかを先に見ておきたい。なお、声をあげにくいこども・若者への聴取を実施したと答えたのは341団体で、届きにくい層をどう呼ぶかは残った課題である。
動かしている人数と予算を見ると、細さがわかる
同じ調査には、この取組を誰が担っているかという項目もある。都道府県では課長補佐級以下の職員2から3名、併任を含む体制で取り組む自治体が約74.4パーセント、市区町村では1から2名が約61.0パーセントだった。自治体の規模にかかわらず、実際に動かしているのは数人である。予算も大きくない。令和6年度に意見反映や社会参画の推進に関する予算を確保していたのは34都道府県で、予算額の中央値は380万円だった。
市区町村はさらに分かれる。人口5万人未満では予算を確保していたのが1,207団体中295団体で、中央値は312.1万円。人口10万人から30万人未満では192団体中95団体で318万円、人口5万人から10万人未満では231団体中92団体で376万円である。人口100万人以上の11団体でも予算を持つのは7団体、中央値350万円にとどまる。規模が大きいほど潤沢というわけではない。若者参画の成功事例|予算1,000万円を16歳から動かす仕組みで扱われているような予算提案権まで渡す例は、この分布の中では例外に近いと読める。
学生の側から、どの席に座るか
数字を踏まえると、入口は三つに整理できる。第一に計画をつくる時期を狙うこと。自治体こども計画の策定や改定にあわせた意見募集は、714団体が反映先に挙げた最も太い経路である。広報紙や公式サイトの募集要項に応募期間が出る。第二に、委員や公募メンバーとして名簿に載る形を選ぶこと。審議会や協議会の委員は任期と名簿が公表されるため、関わった事実が記録として残る。第三に、国の仕組みを使うこと。こども家庭庁は小学1年生から20代までが登録できる意見聴取の場を運営しており、自治体の枠を越えて参加できる。
注意点もある。地域の側が若い世代と付き合う経験そのものが薄いことは、別の調査にも表れている。地域コミュニティと若者|18〜29歳の7割が「付き合っていない」が示すとおり、日常の接点は細い。受け皿となる組織の有無も地域で差がある点は住民不在の地方創生はどこで起きるのか|参加の受け皿を数字で確かめるで整理されている。だからこそ、最初の一回で評価されようとせず、続けられる形を選んだほうがよい。各地の自治体と学生をつなぐ企画を探すならFLASPOのような窓口から入る手もある。席は空いているが、座り方は自分で決める必要がある。
よくある質問
大学生は「こども」として対象に入るのですか
こども基本法は年齢で線を引いていない。こども家庭庁の調査も「こども・若者」をまとめて扱っており、国が運営する意見聴取の場は20代までを登録の範囲としている。自治体が独自に行う募集では18歳から29歳までのように年齢を切ることがあるため、募集要項の対象欄を確かめるのが確実である。
参加したい自治体の募集は、どこを見つければいいですか
自治体こども計画の担当課が入口になる。計画の策定や改定の年度に意見募集が立つため、公式サイトの該当ページと広報紙を追うと拾いやすい。審議会の委員公募は総務や企画の部署から出ることもあるので、部署名で固定せずに公募情報の一覧を見るほうが取りこぼしが少ない。
意見を出しても形にならないのではないですか
そこは自治体によって本当に違う。反映結果を公表している例がある一方、成果物の公表だけで終わる例や、フィードバックをしていない例も報告されている。応募の段階で、結果をどう知らせるのかが書かれているかを見ておくと期待の持ち方を間違えずに済む。
学生団体として関わることはできますか
できる。自治体が困っているのは参加者の確保と進行役の確保で、人を集めて場を回せる団体はその両方に関わる。ただし担当者は数人で動いているため、こちらの都合だけで日程を決めると進まない。計画の年度と議会の日程を先に聞いておくと、話が具体化しやすい。
この分野の一次情報はどこですか
取組状況の調査結果はこども家庭庁の地方公共団体向けページに概要と集計が置かれている。本文の数値は同調査の概要(PDF)から取れる。社会参画と意見反映の施策全体はこども・若者の社会参画及び意見反映のページにまとまっている。
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