流出は一度ではなく二度起きる
若者が地方から出ていく話は、しばしば一回の出来事として語られる。福井県の資料を読むと、そうではないことがわかる。出ていく機会は進学と就職の二度あり、それぞれ別の人数が抜けていく。福井県が2025年3月に改定した福井県の人口の動向と将来見通しには、この二段構えが数字で整理されている。
まず進学の段階だ。2024年の大学進学者3,720人のうち、県内の大学へ進んだのは34.0パーセント、県外へ出たのが66.0パーセントにあたる約2,500人である。ここで三分の二が県外へ移る。次に就職の段階がある。県外の大学へ進んだ約2,500人のうち、福井県内で就職するのは約3割、人数にして約750人にとどまる。残る約1,800人は県外で就職する。
進学で2,500人が出て、そのうち1,800人が戻らない。二度の分岐を通り抜けたあとに残る数字がこれだ。県の資料が社会減全体の6割以上を15歳から24歳の転出が占めると書いているのは、この二段階がどちらもこの年齢帯に収まっているからである。
県内に進学した人は8割が残る
同じ資料には対照的な数字も載っている。県内の大学へ進学した約1,200人のうち、福井県内で就職するのは約8割、およそ960人だ。県外へ就職するのは2割、約240人にとどまる。県外進学組の県内就職率が約3割であることと並べると、進学先がどこかという一点で、その後の定着率が2倍以上変わっている。
| 進学先 | 人数(2024年進学) | 県内就職 | 県外就職 |
|---|---|---|---|
| 県内の大学 | 約1,200人(34.0%) | 約8割・約960人 | 約2割・約240人 |
| 県外の大学 | 約2,500人(66.0%) | 約3割・約750人 | 約7割・約1,800人 |
この差をどう読むかで、打つ手が変わる。県外の学生に戻ってきてもらう活動は、すでに離れた相手を呼び戻す働きかけになる。一方で県内進学の枠を広げる方向は、二度目の分岐に進む人数そのものを減らす。福井県内の大学の入学定員は2024年で2,330人であり、県出身の大学進学者3,720人を収容できる規模ではない。構造として、一定数は外へ出るほかない。
新卒学生のUターン就職率は2024年の就職で27.9パーセントだった。県の資料は、都市圏の大企業による採用拡大の影響で2019年度に落ち込み、その後はやや増加傾向にあると説明している。数字自体は低いが、方向は上向いている。
高校の段階で差はついている
分岐はさらに手前にもある。県の進路実態調査による2024年4月の進学状況を見ると、大学と短大へ進んだ3,992人のうち県内が1,357人、県外が2,635人だった。専修学校では県内517人に対し県外580人で、こちらは半々に近い。合計すると県内進学1,874人、県外進学3,215人となり、県外が63.2パーセントを占める。
地域によっても違う。嶺北地域では県外進学が60.5パーセントであるのに対し、嶺南地域では78.4パーセントに達する。嶺南では約8割が県外へ出ていく計算だ。転出先の傾向も一様ではなく、福井坂井からは東京圏、奥越と丹南からは名古屋圏、嶺南からは大阪圏への転出超過が大きいと県の資料は整理している。同じ県内でも、どの都市圏に引かれるかが地域ごとに違う。
時期の偏りもはっきりしている。直近5年間の県外移動を月別に見ると、3月の転出超過が最も大きい。進学と就職という制度上の区切りに、人の移動が集中していることの裏返しである。
抜けているのは女性のほうが多い
性別で分けると、流出の重心がはっきりする。2020年から2024年までの5年間の転出超過数では、女性が全体の56.7パーセントを占めた。最も転出超過が多い20歳から24歳の階級では、女性が約6割にのぼる。
内訳の読み方には注意が要る。15歳から29歳では、転入も転出も実数では男性のほうが多い。それでも転出超過で女性が上回るのは、女性の転入数が少ないためだ。20歳から24歳について見ると、転出の約5割を女性が占める一方、転入で女性が占める割合は4割を切る。出ていく人数は同程度でも、戻ってくる人数に差がある。
行き先にも違いが出る。男女別に地域ブロックを見ると、男性は東京圏に対する転出超過が最も大きく、女性は大阪圏に対する転出超過が最も大きい。県全体では東京圏への転出超過が高水準を維持しており、三大都市圏への転出が転出超過の大部分を占める。女性の流出に手を打つなら、東京を向いた施策だけでは届かない相手がいることになる。
学生が数字から読み取れること
これらを進学を控えた立場から眺めると、いくつか実際的な示唆がある。県外へ出た人の約3割が福井で就職しているという事実は、裏を返せば県外進学が片道切符ではないことを示している。Uターン就職率27.9パーセントという水準は低く見えるが、県外進学者の約4人に1人以上は戻る計算になる。
福井県は2024年に転出超過が大幅に改善したとされる。コロナ禍の収束後にいったん再拡大した流れが、ここで折り返した形だ。地域に関わりたい学生にとって意味があるのは、戻るか戻らないかの二択ではなく、その間にある関わり方のほうかもしれない。Uターン就職とは?メリット・タイミング・仕事の探し方を徹底解説は就職の段階を、関係人口の成功事例16選|若者・大学生とつながる自治体の取り組みは在学中から続けられる関わりを扱っている。学生のうちに受け入れ先を探すならFLASPOのような窓口から当たると、実際に動いている取り組みに絞って調べられる。
県の資料にある新規学卒者への調査では、良い企業の条件として挙がる上位5項目は男女でほぼ同じだが、男性は経営の安定性を、女性は福利厚生をより重視する傾向が示されている。戻る先を探すときに何を見るかという話でもあり、受け入れる企業が何を整えるべきかという話でもある。
よくある質問
「福井県から出ていく若者は年に何人か」。学年単位で追うほうが実像に近い。2024年の大学進学者3,720人のうち66.0パーセントが県外へ進み、そのうち約7割の約1,800人が県外で就職する。県の資料は社会減全体の6割以上を15歳から24歳の転出が占めると整理しており、流出のほとんどがこの年齢帯で起きている。
「県内の大学に進むと定着率は変わるのか」。大きく変わる。県内の大学へ進学した約1,200人のうち約8割にあたる約960人が県内で就職する。県外の大学へ進んだ場合は約3割にとどまるため、2倍以上の差がある。ただし県内大学の入学定員は2024年で2,330人であり、県出身の進学者全員を受け止められる規模ではない。
「Uターン就職率はどのくらいか」。2024年の就職で27.9パーセントだった。県の資料は、都市圏の大企業の採用拡大を受けて2019年度に落ち込み、その後はやや増加傾向にあると説明している。率としては高くないが、県外へ出た学生の4人に1人以上が戻っている水準でもある。
「なぜ女性の流出が問題にされるのか」。2020年から2024年の転出超過数で女性が56.7パーセントを占め、最多の20歳から24歳では約6割に達するためだ。転出の人数そのものは男性のほうが多いものの、女性の転入が少ないために差し引きで女性が上回る。行き先も男性は東京圏、女性は大阪圏が最大で、対策の向け先が変わってくる。
「地域によって流出の度合いは違うのか」。違う。2024年4月の進学状況では、県外進学の割合が嶺北地域で60.5パーセント、嶺南地域で78.4パーセントだった。転出先も福井坂井からは東京圏、奥越と丹南からは名古屋圏、嶺南からは大阪圏へと分かれる。県単位の平均だけを見ると、この地域差が消えてしまう。
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