関係人口のプロボノ事例|スキルで関わる437万人と16団体の検証

休みの日に地方の団体のウェブサイトを作り直す。決算書の整え方を教える。報酬は受け取らない。こうした関わり方をプロボノと呼ぶが、関係人口の話題でこの言葉が出るとき、たいてい語られるのは一つか二つの美談である。全国でどれくらいの規模があり、受け入れた地域に何が残ったのか。国の推計と、74地域を追いかけた検証報告書の数字から確かめていく。

現地で手を動かす層は437万人、訪問系の23パーセント

規模から押さえたい。国土交通省の関係人口の分類と推計値によれば、2023年時点で地域を訪れる関係人口は約1,884万人と推計されている。そのうち「地域の産業創出」「地域づくりのプロジェクトの企画・運営・協力」「マルシェへの出店」を内容とする直接寄与型は約23パーセント、人数にして約437万人である。

この分類は地域との結びつきの深さの順に並んでいて、直接寄与型は最も深い端に置かれる。隣が地元企業で働く就労型(現地就労)の約105万人で、こちらはさらに少ない。プロボノはこの二つのあいだに落ちる関わり方だと見ておけばよい。無償で手を貸すので就労ではなく、交流で終わらないので参加・交流型でもない。

ただし直接寄与型とプロボノが同じものだという保証はない。マルシェに出店する人も、祭りの実行委員を引き受ける人も同じ枠に入っている。職業上の技能を持ち込む形だけを取り出した公的な推計は、現時点では見当たらない。437万人は上限の目安として扱うのが正確である。

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国のモデル事業は、この形を「関係創出型」と名づけた

規模の次は中身である。総務省は平成30年度に30団体、令和元年度に44団体、合わせて74地域でモデル事業を実施した。関係人口創出・拡大事業 検証結果報告書はその全数を追いかけたもので、類型ごとの成否まで踏み込んでいる。

プロボノに最も近いのが、平成30年度のパターン2である。募集要項の言葉を借りれば「スキルや知見を有する都市部の人材等が、地域課題に関する講座を受講し、地域において地方公共団体と協働して実践活動等に取り組む」もので、9団体が採択された。令和元年度には関係創出型と名を改め、7団体が加わっている。

報告書はこの二つをまとめて関係創出型16団体として分析した。定義は「地域の課題やニーズと、関係人口となる者の想いやスキル・知見等をマッチングするための中間支援機能を形成」すること。つまり人を呼ぶ事業ではなく、課題と技能を突き合わせる仕組みを地域側に作る事業として設計されていた。

満足度は3つの類型で最も高く、7.4だった

報告書は各自治体に、関係人口施策を他者に薦める度合いを10点満点で尋ねている。結果は類型によってはっきり分かれた。

モデル事業の類型 団体数 推奨度の平均 対象となる相手
関係深化型 32団体 7.0 ゆかりのある人、ふるさと納税の寄附者
関係創出型 16団体 7.4 これから関わろうとする人
裾野拡大型 26団体 6.8 都市住民、企業、大学、訪日外国人

最も高い7.4を出したのが関係創出型だった。報告書はその理由を、性質上「関係人口としての意欲が高い人が集まりやすい」ことに求めている。講座を受けて実践まで進む設計なので、途中で意欲の低い人がふるい落とされるという見立てである。

成果の中身も他と違っていた。「交流の質が向上」「関わり方に自地域らしいバリエーションが得られる」を挙げた割合が他類型より多く、継続の形では「関係人口自身による自走した取組」が突出して多い。手を動かした人は、翌年も自分から動くということである。地域おこし協力隊など派遣制度を使った人材の参画割合が大きい点も、この類型の特徴として記されている。

提案が事業に変わった地域と、意欲だけが残った地域

個々の記録を見ると、成果の形が具体的に見えてくる。島根県益田市では、関係人口のメンバーが5つの交流事業の活性化プランを提案し、実際に事業として実施された。報告書には「どの取り組みも好評であった」とあり、提案したプランが継続的な事業につながったとも記されている。

富山県南砺市は入口の作り方で成果を出した。事前に地域課題を説明する学習の機会を設けたうえで、単なる交流にとどまらない活動機会を提供した結果、課題解決に資する人員の参加が実現したという。モデル事業の事例をきっかけに、新たな地域活動の相談と活動件数が増えたとも報告されている。

鳥取県の記述は、受け入れ側の変化を映している。地元の受入団体と熱意あるプロボノワーカーの協働で相乗効果が出たとしたうえで、ツールを作ることより活用してもらうことに重きを置いた提案に対し、受入団体から「これからもしっかり活用していくところを見守っていて欲しい」という声が出たと書かれている。作って渡して終わり、にならなかった例である。長野県根羽村のように、森林という地域資源を使った木育プロジェクトそのものが生まれた地域もある。

つまずきは送り手ではなく、受け入れ側の準備にある

成功例ばかりではない。三重県の担当者は、交流という色合いが強かった初年度を振り返り、イラストやプログラミングのボランティアのように「地域課題に力を貸す」面へ注力しようと考えていたと述べている。続く一文が重い。スキル活用のハードルは高く感じており、仮に実施したとしてもどこまでできたかは疑問である、というものだ。

報告書も同じ方向を指す。関係人口の意欲が継続または向上したとの回答は73団体中49団体、67.1パーセントで一定の成果と評価されつつ、「地域側に準備がなかったため、関係人口の意欲などを掻き立てることができなかった地域も見られる」と添えられている。技能を持つ人を呼ぶことより、その技能を受け止める課題を言語化しておくほうが難しい。

受け止める側の仕組みについて、報告書は3つの持ち方を挙げる。庁内にプロジェクトチームを置く形は予算が要らない反面、職員の負担が重い。NPOや一般社団法人が担う形は人事異動がなく動きも速いが、翌年以降の活動原資が確保できないと止まる。まちづくり協議会のような住民組織は、企画と調整に限れば担い手になりうる。どれを選ぶにせよ軌道に乗るまで時間がかかるため、数年の計画で考えるよう促している。

関係創出型の弱点も記録されている。個人を相手にするため規模が小さくなりやすく、「自地域の意欲向上」や「自地域らしい取組の全国への周知」は期待に届かなかった。少人数が深く関わる形は、地域全体を動かす力には直結しないということである。若い世代と地域の接点づくりに取り組むFLASPOのような外部の担い手と組む場合も、この限界は最初から織り込んでおきたい。

よくある質問

プロボノとボランティアはどう違うのか。職業上の技能や経験を使うかどうかが分かれ目になる。両者の線引きはプロボノとは?ボランティアとの3つの違いと参加5つのメリットで整理している。

自治体が始めるとして、何から手をつけるべきか。報告書の記述に従えば、人を募る前に課題を書き出す作業である。南砺市が事前の学習機会を用意したように、外から来た人が読める形にしておかないと、技能の持ち主が来ても使いどころが見つからない。

一度きりで終わらせないためには何が要るか。関係創出型で「関係人口自身による自走した取組」が多かった点が手がかりになる。成果物を納品して解散するのではなく、作ったものを使い続ける場面に送り手を巻き込めるかどうかが分岐点になる。鳥取県の記録はまさにそこを示していた。

他の関わり方と比べてどの位置にあるのか。訪問する形と訪問しない形を含めた全体像は関係人口の地域事例とは|2,263万人を5つの型に分けて読むに、分類そのものの考え方は関係人口の種類と分類|訪問系と非訪問系、5つのタイプで関わりを読むにまとめてある。

成果はどう測ればよいか。モデル事業では「3件以上の交流事業案の作成」のように、提案の本数を目標に置いた自治体があった。参加人数ではなく、地域に残った提案や事業の数で数えるほうが、この型の実態に合う。


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