仕事を持ったまま地方へ移れるなら、住む場所の選択肢は一気に広がる。ただしその前提が崩れると、移った先で仕事を探し直すことになる。国土交通省の調査を見ると、テレワークをしている人の割合は地域によって3倍近く開いており、地方で働く人のほうが圧倒的に少ない。回線の整備率も、県単位の数字と自分の家に引ける回線は別の話である。移住先を絞る前に、確かめておきたい数字を順に見ていく。
テレワークを実際にしている人は、就業者の6人に1人である
テレワークは当たり前になったという感覚と、統計の数字は食い違う。国土交通省が2026年3月に公表した令和7年度テレワーク人口実態調査では、雇用型就業者のうちテレワークをしたことがある人の割合は全国で25.2パーセント、前年度から0.6ポイントの増加だった。
一方、直近1年間に実際にテレワークを実施していた人の割合は16.8パーセントで、前年度から1.2ポイント増えている。この2つの数字の差が8ポイント以上ある点が大事で、経験者を数えると4人に1人だが、今も続けている人に絞ると6人に1人にとどまる。新型コロナの流行後は両方の指標が下がり続けていたが、令和7年度の調査で増加に転じ、安定基調に入ったと国交省は評価している。調査は2025年10月に就業者を対象としたウェブ調査で行われ、有効サンプルは4万人である。移住の相談で「テレワークで移る人が増えている」と言われたときは、経験者の割合と継続者の割合のどちらを指しているのかを確かめたい。
首都圏と地方都市圏では、実施率が3倍近く開いている
同じ調査を居住地域別に割ると、地方へ移ることの意味が変わってくる。直近1年間のテレワーク実施率は、首都圏が28.1パーセント、全国が16.8パーセント、地方都市圏が9.8パーセントだった。地方都市圏で働く人のうち、9割は1年間テレワークをしていない。
ここでの区分は、首都圏が東京・埼玉・千葉・神奈川の4都県、中京圏が愛知・岐阜・三重、近畿圏が京都・大阪・兵庫・奈良で、それ以外の道県がすべて地方都市圏にまとめられている。雇用型就業者でテレワークをしたことがある人の割合でも、首都圏は令和2年度以降3割を超える水準を保っている。この開きが示しているのは、地方に行けばテレワークができなくなるということではなく、地方の労働市場にはテレワーク可能な求人がそもそも少ないという事実である。したがって移住後も在宅で働き続けたいなら、今の勤め先の制度を持っていく形が本筋になる。移住先で転職する前提を置いた瞬間に、9.8パーセントの側の求人を探すことになる。地方創生テレワークを扱った記事も、受け入れ側の整備状況を知る手がかりになる。
続けられるかどうかは、職種ではなく業種で分かれる
自分の仕事がテレワークに向いているかは、感覚ではなく業種別の実績で当たりがつく。同じ調査の業種別集計には、はっきりした差が出ている。
| 業種 | 雇用型のテレワーカー割合 | 自営型のテレワーカー割合 |
|---|---|---|
| 情報通信業 | 74.1% | 73.5% |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 54.0% | 56.3% |
| 宿泊業・飲食業 | 6.0% | 9.3% |
| 医療・福祉 | 6.4% | - |
| 農林水産・鉱業 | - | 6.6% |
情報通信業では7割を超える人がテレワークを経験しており、学術研究や専門・技術サービス業が5割台で続く。対して宿泊業と飲食業は6.0パーセント、医療・福祉は6.4パーセントで、1割に届かない。雇用でも自営でも順番はほとんど同じで、上位と下位の顔ぶれは入れ替わらない。電気・ガス業は一昨年度と比べて約4ポイント上がっており、業種によってはこれから広がる余地もある。自分の業種が下位にある場合、移住先でその仕事を続ける形は選びにくい。その場合は移住のタイミングで職種を変える判断が必要になるので、支援金の要件や住居の確保よりも先に、そこを決めておきたい。
回線は全国でほぼ揃ったが、残りの数パーセントに当たることがある
通信環境は候補地を外から比べにくい項目である。県単位の整備率はどこも高く、数字だけ見れば差はないように見えてしまう。総務省の令和8年版情報通信白書によると、光ファイバの整備率は世帯カバー率で97.09パーセント、2023年度末の値である。5Gの人口カバー率は2024年度末で98.4パーセントで、すべての都道府県が85パーセントを超えている。
さらに新しい数字もある。総務省が公表した5Gの整備状況では、2025年度末の全国の5G人口カバー率は98.6パーセントで、都道府県別には最も低いところが89.2パーセント、最も高いところが99.9パーセントだった。国は2030年度末までに全国と各都道府県の双方で99パーセントにする目標を掲げている。つまり残りは1割から数パーセントの話になるが、移住先を1軒に決める段になると、その数パーセントに当たるかどうかが生活を左右する。整備率はあくまで県や全国をまとめた値で、山あいの集落や離島では空白が残る。内見の段階で、通信事業者の提供エリア検索でその住所を確認し、可能なら現地で速度を測り、固定回線が引けない場合の代替まで押さえておきたい。業務で動画会議を使うなら、上りの速度が足りるかも見ておく必要がある。
国の移住支援金は、テレワークを続ける人も対象になる
制度の面では追い風がある。内閣府の移住支援金の案内によると、地方創生移住支援事業は当初は移住先での就業か起業を条件にしていたが、2021年度から移住前の仕事を移住先でテレワークとして続ける人も対象に加えられた。
支給の上限は世帯での移住が100万円、単身での移住が60万円で、18歳未満の子どもを連れて移る場合は子ども1人あたり最大100万円が加算される。社会的事業の起業であれば200万円となる。対象になるのは一定期間以上東京23区に住んでいた人、または東京圏から23区へ通勤していた人で、移住先はその自治体が事業を実施している東京圏外に限られる。財源は国が2分の1、都道府県と市町村が4分の1ずつを負担するため、実施していない自治体もある点に注意したい。実際の需要も見えている。ふるさと回帰支援センターの2024年の移住相談の傾向では、窓口相談の1位となった群馬県について、首都圏へのアクセスの良さや自然環境を理由にしたテレワーク移住の相談が寄せられたと報告されている。地域とのつながりを先に作りたいなら、FLASPOのような地域と関わる入口から現地を知るところから始めてもよい。
よくある質問
全国の数字が増加に転じたなら、地方でも働き方は変わってきたのか。方向としては変わっている。令和7年度の調査では全地域で実施率が上がり、減少が続いていた流れが止まった。ただし水準の差は残ったままで、地方都市圏の9.8パーセントが首都圏の28.1パーセントに近づいたわけではない。向きと水準は分けて読む必要がある。
勤め先にテレワークの制度がない場合はどうなるか。支援金のテレワークの類型は、移住前の仕事を続けることを前提にしている。制度がなければこの類型は使えず、移住先で就業するか起業する道に切り替わる。先に会社の規定と、転居後も同じ条件で働けるかを人事に確認しておくほうが、物件を探すより順番としては早い。
通信環境は契約前にどこまで調べられるのか。携帯の5Gは人口カバー率として都道府県単位で公表され、光ファイバは世帯カバー率で示される。どちらも住所単位の可否は示さないので、事業者の提供エリア検索と現地での実測が必要になる。集合住宅では建物に引き込まれている回線の種類も確認したい。
いきなり移らずに試す方法はあるか。滞在しながら働く形から入る手がある。拠点を2つ持つ暮らし方の収入の組み方は二地域居住の仕事を扱った記事に、滞在先に求める条件はワーケーションの場所選びの記事にまとめてある。通信と作業環境を自分の目で確かめてから決めると、移った後の修正が少なくなる。
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