新卒就活と通年採用|秋・冬採用を実施する企業32.2%の現在地

新卒就活と通年採用|秋・冬採用を実施する企業32.2%の現在地

三月に広報が始まり六月に選考が始まる、という組み立ては、同じ学年を同じ時期にまとめて採ることを前提にしている。そこから外れた時期にも窓口を開いておく運用が通年採用と呼ばれる。言葉としてはよく聞くようになったが、どの企業がどこまで実施しているのかは、調査の数字を見ないと見当がつかない。企業側と学生側の二つの調査から現在地を確かめる。

通年採用は制度ではなく企業ごとの運用である

まず整理しておきたいのは、通年採用には政府が決めた定義がないという点である。就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議が決めているのは広報活動と採用選考活動の開始時期、そして正式な内定日という三つの線だけで、採用を年のどこで何回行うかは各社の判断に委ねられている。

そのため実務では、卒業・修了年度の秋や冬に行う採用、年に複数回の機会を設ける採用、職種を限定した採用などが、おおむね同じ方向の取り組みとしてまとめて語られる。調査で設問として立てられているのも「秋・冬採用の実施状況」や「通年での採用活動の実施」といった行動の単位であり、名前の定義ではない。

この前提を踏まえると、通年採用が広がったかどうかは、春の一括した枠から外れた機会がどれだけ用意され、それが学生に届いているかという二つの問いに分けて見ることになる。

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実施済みは三二・二%、予定を含めると半数を超える

文部科学省が就職問題懇談会と協力して実施した令和七年度 就職・採用活動に関する調査結果・速報(企業)は、全国の企業五五四六社に回答を依頼し、一三五六社から有効回答を得た。大企業が四八四社、中小企業が八七二社という構成である。この調査で卒業・修了年度における秋・冬採用の実施状況を聞いた結果が、企業側の現在地を示している。

回答 企業全体の割合
すでに実施している 三二・二%
現時点では実施していないが今後実施予定 二四・五%
実施しておらず今後も未定 四三・三%

実施済みと実施予定を合わせると五六・七%で、半数を超える。一方で四三・三%は未定のままである。三社に一社は春の枠の外に窓口を開いており、四割強はまだ開いていない、という分かれ方になる。志望先が前者か後者かは、採用ページの募集時期の書き方や、秋以降にエントリーを受け付けているかどうかで判断できる。

学生の実感は五七・三%まで上がった

機会が用意されていても、学生に伝わらなければ選択肢にならない。内閣府の学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査は、令和七年度に大学四年生三一五七名と大学院二年生一二五八名の計四四一五名から有効回答を得ている。秋・冬採用や通年採用といった機会の提供や情報発信が企業からされていたかを尋ねた結果は、次のように動いた。

調査年度 そう思う どちらかといえばそう思う そう思う計
二〇二三年度 一九・七% 三〇・〇% 四九・七%
二〇二四年度 二〇・五% 二九・二% 四九・七%
令和七年度 二三・八% 三三・五% 五七・三%

二年続けて四九・七%で止まっていた合計が、今回の調査で五七・三%まで上がった。はっきりと「そう思う」と答えた層も一九・七%から二三・八%へ増えており、報告書は増加傾向にあると記している。企業側の実施率とおおむね整合する水準であり、情報発信の側が先に動いた印象を与える数字でもある。

学生が増やしてほしいのは日程の公開だった

同じ調査は、これからの就職・採用活動のあり方としてもっと増やすべきだと考えるものも聞いている。最も回答が多かったのは「企業が主な採用スケジュールを公開すること」で約五割だった。次に「オンラインでの企業説明会」「秋採用・冬採用など、複数の機会・期間での採用活動の実施」「通年での採用活動の実施」が続き、いずれも約三割である。過年度の調査と比べると、オンラインでの企業説明会は減少傾向にある。

順位の付き方には意味がある。学生が最初に求めているのは機会の数を増やすことではなく、いつ何が行われるのかを事前に知ることだった。通年採用が望まれているのも、年中選考を受けたいからではなく、春の一度きりに全てを賭けなくてよい状態を求めているからだと読める。

この点は準備の仕方にも跳ね返る。日程が公開されていない企業を志望先に含めるなら、他社の選考と重なったときの優先順位を先に決めておくほうが安全である。月ごとの流れは新卒就活のスケジュール|政府日程と内定率から引く月別の予定表に、選考に直結しやすい接点の実態はインターンの選考|実質的な選考58.6%という前提にまとめている。

広がる余地は採り切れていない側にある

秋以降に窓口が開く理由は、学生への配慮だけではない。連絡会議の二〇二七年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方は、採用予定数を充足できたとする企業の割合が近年減少し、二〇二五年卒では三割台にとどまったと記している。理由として挙がったのは「選考応募者が予定より少ない」「内定辞退が予定より多かった」である。経済界からは、中小企業では内定が本来出るべき十月一日の時点で必要な内定者数を確保できていない状況も指摘された。

負担の側も軽くない。文部科学省の企業調査では、採用コストや事務負担について「とても増えた」が四六・〇%、「少し増えた」が三四・八%で、合わせて八〇・八%の企業が増加したと答えている。日程ルールに伴う課題としては「就職・採用活動日程を遵守せず、早期に採用活動を開始する企業があった」という回答が最も多く、五六二件を集めた。採り切れないから機会を増やし、増やすほど負担が重くなるという循環が起きている。

機会を増やした分は、休日の対応という形でも表れている。同じ企業調査では、土曜日や日曜日、祝日に広報活動や採用選考活動を実施した企業が半数を超えた。内訳は対面が一七・一%、オンラインが八・一%、対面とオンラインの併用が二五・三%である。実施しなかったと答えたのは企業全体で四九・六%だが、大企業では三六・三%、中小企業では五八・六%と差があった。面接を予定していた学生が連絡なしに欠席することについても、「あった」と答えた企業が半数を超えている。

連絡会議は、二〇二八年度(二〇二九年三月)以降の卒業・修了予定者の就職・採用活動について、経済界や大学側と十分に議論を行い、実効性ある合意点を探りながら見直しの検討を進めるとした。大学等の代表で構成される就職問題懇談会は、採用選考活動を学期期間中には行わず、卒業・修了前年度の春休み以降の長期休業期間に行うべきだという考え方を示している。春の一括した枠の外側で企業と出会う方法は増えており、学生がコンテストや課題を通じて企業と接点を持つFLASPOのような取り組みも、その一つとして使える。

よくある疑問

秋採用は春に決まらなかった人の受け皿なのか。そう限ったものではない。留学や公務員試験、大学院入試から切り替えた人、部活動や研究の都合で春に動けなかった人が対象に含まれる。企業側も充足できなかった枠を埋める目的で開くため、春と同じ基準で選考が行われる例は少なくない。

通年採用を行う企業は既卒者も受け付けているのか。企業ごとに異なるため、募集要項の応募資格を個別に確認する必要がある。卒業年次の指定があるかどうか、卒業後の経過年数に上限があるかどうかが分かれ目になる。

春に決まらないと不利になるのか。企業全体で三二・二%が秋・冬採用をすでに実施し、二四・五%が今後実施する予定だと答えている。選択肢が消えるわけではないが、未定の四三・三%に当たる企業では窓口が開かない。志望先の分布によって状況が変わるため、早い段階で各社の募集時期を調べておきたい。

日程が公開されていない企業はどう扱えばよいのか。採用ページや新卒向けの募集要項に加え、前年度の募集時期を調べると見当がつく。それでも分からない場合は、説明会や問い合わせ窓口で次の募集の予定時期を聞くのが早い。学生が日程の公開をいちばん求めているという調査結果は、聞かれる前提で準備している企業が増えていることも意味している。


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