二地域居住と税金|1月1日の住所で決まるものと決まらないもの

年の半分近くを過ごし、消防団の行事にも顔を出し、商店の常連にもなった。それでも税金は一円も入っていない。二拠点で暮らす人が地域の人から「税金はどっちに払ってるの」と聞かれて言葉に詰まるのは、暮らしの実感と課税の仕組みがずれているからである。このずれは偶然ではなく、個人住民税という税の性格から導かれた結果である。

住民税が見ているのは1月1日だけ

総務省は個人住民税を、地域社会の費用の負担を住民が広く分かち合う「地域社会の会費」的な性格を持つ税と説明している。そして課税の仕組みは単純で、1月1日に住所を有する者に対し、当該住所地団体が課税する。年の途中で引っ越しても、その年度の住民税は1月1日時点の自治体に納める。滞在日数が何日あっても、住所がそこになければ所得割は動かない。

税率は全国でほぼそろっている。均等割の標準税率は市町村民税3,000円と道府県民税1,000円の合計4,000円で、令和6年度からはこれに国税である森林環境税1,000円が併せて徴収されている。所得割は一律10%で、内訳は市町村民税6%と道府県民税4%。政令指定都市に住所がある場合だけ、道府県民税2%と市民税8%という配分に変わる。前年1月から12月までの所得が計算の基礎になるため、収入が落ちた年の負担が重く感じられるのもこの仕組みによる。

税目 納める先 判定の基準 標準の税率
個人住民税(所得割) 1月1日の住所地 1月1日の住所 10%(市6%・県4%)
個人住民税(均等割) 1月1日の住所地 1月1日の住所 年4,000円(市3,000円・県1,000円)
均等割(家屋敷課税) 家屋敷のある市町村 住所はなく家屋敷がある 均等割のみ
固定資産税 資産のある市町村 1月1日の所有者 1.4%
森林環境税 国(住民税と併せて徴収) 住民税の均等割と併せて賦課徴収 年1,000円
総務省「個人住民税」「固定資産税の概要」および自治税務局市町村税課の資料をもとに整理。実際の税率は条例で定められる。

均等割にも所得割にも非課税限度額の制度が置かれており、所得が低い人には負担が生じない。徴収の方法も二通りある。勤め先がある人は給与から差し引かれる特別徴収、事業所得が中心の人は自分で納める普通徴収で、後者は6月、8月、10月、翌年1月の四期に分かれるのが一般的である。往復の予定を組むとき、この納期と移動の繁忙が重ならないかを見ておくと資金繰りが読みやすくなる。

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住所がなくても課される均等割がある

ここで見落とされやすい制度がある。総務省自治税務局市町村税課の資料は、市町村内に家屋敷を有する個人で、当該市町村に住所を有しない者には均等割が課税されると明記している。いわゆる家屋敷課税である。滞在用に一戸建てや部屋を自分の持ち物として確保していれば、住民票がなくても均等割の納税義務者になりうる。

所得割はかからないため負担は大きくないが、標準税率でいえば年4,000円が二つの自治体に生じる形になる。実際の運用や非課税の扱いは条例に委ねられている部分があるので、物件を買う前に所在地の市町村に確認しておくのが確実である。賃貸で借りているだけなら対象外とされることが多いものの、ここも自治体の判断が入る。購入か賃借かで年間の負担が変わる点は、費用を実額で積み上げた記事の計算にも影響してくる。

税を二つに割る案が採られなかった理由

週末を過ごす自治体に住民税の一部を納めたい、という発想は古くからある。経済財政諮問会議でも、居住実態を登録・把握して、それに合った地方納税を可能にできないかという提起がなされてきた。だが総務省は、平成19年度の研究会での検討結果として、住所地以外の地方団体に個人住民税の課税権を法的に根拠付けることはできないと結論付けられた経緯を示している。

理由は四つに整理されている。住所地以外の団体との間で受益と負担の関係を説明できないこと、現時点で何ら関わりのない者に条例の効力を及ぼして課税することはできないと考えられること、納付先を納税者の意思で選べる仕組みは強制性を本質とする税と相容れないこと、そして全額を住所地に納めた人との間で公平性が論点になること。実務面でも、居住実態をどう正確に把握するのか、特別徴収を行う企業の負担が増えるといった課題が挙げられている。複数の住所を認めれば、住民票や選挙など他の制度にも波及する。

滞在先にお金を回す現実的な道

税の分割が難しいという結論から、寄附金税制を応用する形で生まれたのがふるさと納税である。自分の選んだ自治体へ寄附すると、寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される。上限があるため無制限ではないが、実質的には住民税の一部を滞在先の団体へ移転させる働きをする。

控除は住民税の基本分と特例分、それに所得税からの控除という三つの経路に分かれて効く。手続きは原則として確定申告だが、寄附先が5団体以内の給与所得者であれば、ワンストップ特例制度により申告を省略できる。使途を指定できる自治体も増えており、熊本県天草市のようにまちづくり協議会を使途に選べる運用もある。滞在先の地域活動に資金を回したい人には、現在の制度のなかで最も直接的な手段といえる。地域ごとの受け入れ体制や住まいの条件を見比べる段階では、FLASPOのような情報源を併せて使うと判断しやすい。

家屋を持つと動き出す固定資産税

滞在先を買う判断をすると、毎年の負担に固定資産税が加わる。土地・家屋・償却資産の所有者に、その資産価値に応じて課される市町村税で、標準税率は1.4%である。計算は評価額に直接税率を掛けるのではなく、評価額から求めた課税標準額に税率を掛ける。土地と家屋は3年ごとに評価替えが行われ、それ以外の年度は原則として据え置かれる。

免税点も押さえておきたい。課税標準額が土地30万円、家屋20万円、償却資産150万円に満たない場合は課されない。この免税点は令和9年度以後の年度分について、土地30万円、家屋30万円、償却資産180万円に改められる予定とされている。地方の安価な中古住宅であれば、改正後は家屋の課税標準が30万円を下回って対象外になる例も出てくる。放置の代償も大きい。住宅用地には課税標準を200平方メートル以下の部分で6分の1、それを超える部分で3分の1に抑える特例があるが、市区町村長から特定空家等として勧告を受けた敷地はこの特例の対象から外れる。2023年の法改正で新設された管理不全空家等も、指導をしても改善されないまま勧告に至れば同じ扱いになる。年の大半を留守にする拠点では、草刈りや通風といった管理が税負担に直結する。住民票を動かすかどうかの整理は、若い世代の設計を扱った記事のほうが詳しい。

よくある質問

住民票を滞在先に移したほうが得になるのか。税額そのものは所得割10%と均等割4,000円という全国共通の水準で動くため、移しても大きくは変わらない。影響が出るのは国民健康保険料の算定や各種の行政サービス、選挙の投票先であって、税の節約を目的に動かす意味は薄い。

二つの自治体から住民税を請求されることはあるのか。所得割が二重にかかることはない。ただし自分の持ち家がある市町村からは家屋敷課税として均等割の通知が届く場合があり、これは二重課税ではなく別の納税義務である。

滞在先の自治体に税金で貢献する方法は本当にないのか。住民税の分割という形では制度化されていないが、ふるさと納税であれば実質的に回せる。全国二地域居住等促進協議会には令和4年6月1日時点で42道府県と664市町村が参加しており、受け入れ側の体制も年々広がっている。

年末に引っ越す予定があるときは何に気をつけるか。1月1日をどちらで迎えるかで、その年度の住民税を納める先が変わる。転入届の日付が年をまたぐかどうかだけで課税団体が入れ替わるため、転居の日取りは年末年始を避けておくほうが事務が簡単である。

出典


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