住民不在の地方創生はどこで起きるのか|参加の受け皿を数字で確かめる

住民不在の地方創生はどこで起きるのか|参加の受け皿を数字で確かめる

住民説明会は三回開いた。パブリックコメントも募った。それでも完成した施設を前に「そんな話は聞いていない」という声が上がる。地方創生の失敗談で挙がる「住民不在」は、手続きを省いたから起きるとは限らない。総務省の調査を開くと、声を受けとめる側の受け皿が、地域によって最初から存在していないことが見えてくる。

意見を聞く相手が、そもそも組織として存在していない

総務省は、小学校区のような範囲で住民が自ら地域の課題に取り組む組織を「地域運営組織」と呼び、毎年その数を数えている。令和5年3月に公表された調査結果では、令和4年度に全国で7,207団体が確認された。前年度の6,064団体から1,143団体、18.8パーセント増え、平成28年度の3,071団体に比べると2倍以上になっている。

ところが数が伸びているのは団体の側で、地域の側ではない。地域運営組織が形成されている市区町村は853で、前年度の814から39増えただけだ。回答した1,730市区町村のうち「ない」と答えたのは877、割合にして50.7パーセントにのぼる。半分の自治体では、行政が住民の意向を聞こうとしても、相手になる地域単位の協議組織が存在しない。説明会で手が挙がらないのは関心が低いからだと片づけられがちだが、受け皿のないところで手が挙がらないのは当然である。

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受け皿の有無は、人口規模できれいに分かれる

どの地域に受け皿がないのかは、調査結果の内訳が示している。人口規模別に地域運営組織がある市区町村の割合を並べると、傾向は一方向ではない。

人口規模 地域運営組織がある割合 回答団体数
5,000人未満 27.4% 274
5,000人以上1万人未満 28.8% 243
1万人以上3万人未満 48.4% 448
3万人以上5万人未満 59.5% 232
5万人以上10万人未満 64.0% 250
10万人以上30万人未満 70.4% 199
30万人以上50万人未満 74.0% 50
50万人以上 47.1% 34
総務省地域力創造グループ地域振興室「地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業報告書【実態把握調査結果の概要】」(令和5年3月)から作成。令和4年度調査、回答1,730市区町村

人口5,000人に満たない自治体では3割を下回り、1万人未満まで広げても3割に届かない。都市分類で見ると町村は33.9パーセントで、中核市の85.5パーセントとは開きが大きい。人手が最も細っている小さな自治体ほど、住民の側に話し合いの単位がない。統計上「住民不在」が起きやすいのは、まさにこの層である。過疎化と少子高齢化が重なる地域の人口構造と並べて読むと、同じ場所が二重に不利を負っていることが分かる。

受け皿がある地域でも、組織は自前の財布を持たない

では組織がある地域なら住民の意向が通るのか。ここも内訳が答えを濁す。7,207団体の法人格を見ると、任意団体が90.9パーセントを占め、NPO法人は3.9パーセント、認可地縁団体は2.3パーセントにとどまる。母体となった既存組織は自治会・町内会が47.3パーセント、その連合組織が35.6パーセントで、構成団体としても自治会・町内会が78.2パーセントと最も多い。

収入の構成はさらに踏み込んだ事情を映す。主な収入源を上位5つまで複数回答で尋ねた結果、市区町村からの助成金・交付金等が84.0パーセントで最多だった。構成員からの会費は40.4パーセント。会費や補助金以外の自主事業収入の確保に取り組む団体は44.2パーセントで、半分に届かない。活動拠点を持つ団体は95.3パーセントあるが、そのうち66.5パーセントは公共施設を使っている。資金も場所も行政から来る相手に対して、行政の計画へ異を唱えるのは構造的に難しい。形式は住民組織でも、立場は下請けに近づく。

担い手不足と住民の無関心は、同じ問題ではない

継続的に活動していくうえでの課題を複数回答で聞くと、上位は人に関するものが並ぶ。活動の担い手となる人材の不足が76.1パーセント、団体の役員・スタッフの高齢化が56.7パーセント、次のリーダーとなる人材の不足が56.2パーセント、リーダーとなる人材の不足が51.5パーセントだった。支援を期待するものとしては、活動資金の不足が31.2パーセント、担い手不足が30.5パーセント、事務局運営を担う人材の不足が20.9パーセントが挙がっている。

注目したいのは、課題として挙がる人材不足の数字と、支援を期待する先の数字が大きくずれている点だ。困りごととしては76.1パーセントが人手を挙げるのに、支援してほしい相手として挙げるのは30.5パーセントにとどまる。行政に人を補ってもらうものだとは考えていない、という読み方ができる。関係人口や二地域居住のような外からの関わりが期待を集める背景にもこの事情があり、人の流れの全体像は関係人口の現状にまとめられている。地域の外にいる個人が関わりの入口を探すときは、FLASPOのような接点から始めるほうが、いきなり移住を検討するより歩幅が合う。

参加の仕組みを用意した事業は、結果も違っている

住民参加が成果に効くのかどうかは、別の統計が示している。内閣府がデジタル田園都市国家構想交付金(旧地方創生拠点整備交付金)の事業について集計した効果検証の報告書では、ガイドラインの「取り組むべきこと」21項目の実施率が公表されている。地域住民や利害関係者との話し合いを通じて課題やニーズを明確化したと答えた事業は89パーセント。一方、地域住民・事業者や利害関係者が事業の推進や改善に参加できる仕組みをつくったと答えた事業は74パーセント、事業の目的や効果について情報発信して納得感を醸成したという事業は75パーセント。

同じ報告書は、21項目中19項目について、実施した事業のほうがKPI目標の達成割合が高かったと分析している。入口で意見を聞くところまでは9割近くが到達するのに、走り出したあとも口を出せる窓を残した事業は4分の3に下がる。住民不在と呼ばれる事態の多くは、聞かなかったことではなく、聞いたあとの参加経路を閉じたことから生じている。

よくある質問

地域運営組織と自治会は何が違うのですか

活動範囲と役割の幅が違う。地域運営組織の活動範囲は小学校区とおおむね一致するものが44.9パーセントで最も多く、旧小学校区に重なるものが約3割を占める。自治会よりも広い単位で、祭りや防災訓練だけでなく買い物支援や見守りまで引き受ける協議組織という位置づけだ。ただし母体の半分近くは自治会・町内会で、人は重なっている。

住民の意見を聞いたという記録があれば十分ではないのですか

記録は手続きの証拠にはなるが、計画の修正経路にはならない。内閣府の集計では、入口で課題やニーズを明確化した事業が89パーセントある一方、改善に参加できる仕組みまで設けた事業は74パーセントだった。着工後に状況が変わったとき、誰がどこに言えば直るのかを決めておくかどうかが分かれ目になる。

人口の多い都市では住民不在が起きにくいのでしょうか

そうとも言えない。地域運営組織がある割合は30万人以上50万人未満で74.0パーセントまで上がるが、50万人以上になると47.1パーセントに下がり、特別区では26.1パーセントにとどまる。小さな自治体では単位が足りず、大都市では単位が追いつかない。理由は違っても、意見を集約する層が薄いという点では共通している。

自分の地域に受け皿があるか調べる方法はありますか

まず市区町村の地域振興担当に、小学校区単位の協議組織やまちづくり協議会があるかを尋ねるのが早い。全国の状況は総務省の実態把握調査結果の概要で地域ブロック別まで確認できる。組織がない場合、公民館活動や自治会の連合組織が母体になった事例が全国で2割前後あるので、既存の集まりから立ち上げる道筋も現実的だ。


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