投資の心構え|25年のうち7年は下落、それでも年率4.95%

投資の心構え|25年のうち7年は下落、それでも年率4.95%

下がる年は、25年のうち7回あった

積立を始めた人がまず驚くのは、口座の数字が毎日動くことである。預金では起こらないこの上下に慣れないうちは、下がった日の夕方に設定を解除したくなる。ここで役に立つのは励ましの言葉ではなく、過去にどれくらいの頻度で下がってきたかという実績の形である。

公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人は、2001年度から2026年度第1四半期までの収益率を年率プラス4.95%、累積の収益額を221兆201億円と公表している。運用資産額は2026年度第1四半期末で317兆7,596億円である(年金積立金管理運用独立行政法人「最新の運用状況」)。

同じ資料には年度ごとの収益率も載っている。2001年度から2025年度までの25年度のうち、収益率がマイナスだった年度は7回あった。4年に1回程度は年単位で減る前提だったことになる。

年度 収益率 そのとき起きていたこと
2008年度 -7.57% 世界的な金融危機
2015年度 -3.81% 中国経済の減速懸念
2019年度 -5.20% 感染症の拡大
2020年度 +25.15% 翌年度に大きく戻した
2023年度 +22.67% 株高と円安
2025年度 +16.47% 直近の年度

並べて見ると、下げた翌年度に戻している年もあれば、数年にわたって伸びない時期もある。この振れ幅ごと引き受けた結果として年率4.95%が残った、という読み方になる。下げを避けながら平均だけを受け取る方法は、この表のどこにも出てこない。

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期待する数字を、現実の幅に合わせる

「年に何%くらい増えるのか」という問いには、確定した答えがない。それでも手がかりとして、公的な運用実績の水準を自分の積立額に当てはめてみることはできる。仮に年率4.95%が続いたとすれば、月1万円を20年積み立てた場合の元本240万円が約409万円、月3万円なら元本720万円が約1,226万円という試算になる。

この数字は将来の約束ではなく、過去の平均を機械的に延ばしただけのものである。実際には上下の順番によって結果が変わり、使う直前に下げ相場が来ることもある。それでも試算を一度やっておく意味はある。期待を倍や3倍に置いていると、途中の下落に耐える理由が消えてしまうからだ。

金融庁は、株式や投資信託は預貯金より高い収益が期待できる一方で元本割れのおそれがあると明記し、長期・積立・分散という3つの組み合わせを基本に挙げている(金融庁「資産形成の基本」)。短い期間で大きく当てる方法ではなく、長い時間をかけて平均に寄せる方法が制度の前提になっている。

非課税の仕組みに期待しすぎないことも必要である。NISAで非課税になるのは利益が出たときの税金だけで、値下がり自体を防ぐ機能はない。制度で得られる効き目の範囲は、投資で得られるものを整理した記事のほうで詳しく扱っている。

待てる形を、下がる前に作っておく

下落に耐えられるかどうかは、意志の強さではなく家計の構えで決まる。手元に現金があり、半年以内に使う予定の資金を市場に置いていなければ、評価額が3割減った画面でも閉じて放置できる。逆に来年の学費を入れていれば、1割の下落で判断が揺れる。

総務省統計局の家計調査では、2025年平均の消費支出は二人以上の世帯で1世帯当たり1か月314,001円、単身世帯で173,042円だった(総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」)。生活費の3か月から6か月分を現金で置く目安に当てはめると、二人以上の世帯で約94万円から188万円、単身世帯で約52万円から104万円になる。

次に決めるのは、積立を止める条件である。収入が減ったときにいくらまで下げるか、どの支出を先に削るかを紙に書いておくと、相場とは無関係な事情で全額を解約する判断を避けやすい。止めることと売ることは別の操作だという整理も、先にしておく価値がある。

借りたお金で投資額を膨らませる形は、ここまでの備えをすべて無効にする。損失が入れた額を超えて広がると、自分で決めた線を守れなくなるためだ。収入と支出の全体像から逆算する手順は、節約とライフプランを扱った記事が参考になる。

「必ずもうかる」話は、制度の外から来る

心構えの話で最後に残るのは、焦りを利用してくる相手への備えである。じっくり増やす方針を決めたあとでも、短期間で大きく増えたという話は目に入ってくる。実際、その入口から被害が出ている。

警察庁の集計では、令和8年上半期のSNS型投資詐欺は認知件数5,893件(前年同期比プラス3,020件)、被害額797.9億円(同プラス444.9億円)で、いずれも倍以上に増えた(警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」)。令和7年の確定値では認知件数9,523件・被害額1,288.0億円である。

同じ資料では、広告に「必ずもうかる」「元本保証」といった文言が使われていたことが挙げられている。この2語は、投資の心構えとしては覚えやすい目印になる。元本が保証されている金融商品は収益も低く抑えられるのが普通で、高い利回りと元本保証が同時に成り立つ形はまずない。

相手が正規の業者かどうかは、金融庁が公表する免許・許可・登録等を受けている事業者の一覧で確かめられる(金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」)。名前が見つからない相手に資金を渡さない、という一線を先に決めておけば、判断を急かされても動かずに済む。

相場を読む代わりに、手順を点検する

毎日の値動きを追うほど判断の回数が増え、増えた判断のどこかで間違える。これを避ける方法は単純で、決めることを先にまとめて済ませ、あとは機械に任せる形にしておく。買い付けを自動引き落としにしておけば、下がった月に手が止まることもない。

点検は年に1回で足りる。確かめるのは3つで、積立額が今の収入に合っているか、資産の種類が片方に偏っていないか、そして持っている商品の運用管理費用である。相場の先行きは分からないが、毎年引かれる費用は確実に出ていくため、ここだけは事前に比べられる。

売る理由も書いておきたい。使う予定が来たから売る、積立額を下げる必要が出たから一部を解約する、といった形で理由を限定しておけば、下落そのものを理由に売る回数が減る。判断の記録を残すと、翌年の点検で自分の癖が見える。

値動きの性質を種類ごとに分けて把握しておくことも、同じ目的に効く。価格変動と信用の問題では手当ての方法が違うという整理は、投資のリスクを種類ごとに整理した記事にまとめている。暮らす場所や働き方を変えながら資産形成を考えたい場合は、FLASPOの情報も材料になる。

よくある質問

下がっているときに積立を止めるのは間違いか。相場を理由に止めるのであれば、安く買える月を飛ばすことになる。一方で収入が減って生活が苦しいなら、止めるのは正しい判断である。理由が家計側にあるのか相場側にあるのかで、答えが変わる。

何年続ける前提で考えればよいか。使う予定のない資金であれば10年以上の単位で考えると、年単位の下落を受け止めやすくなる。公的年金の積立金のように25年という長さで見れば7回の下落年を含んで年率4.95%が残ったが、3年で区切れば結果はまったく違う形になる。

毎日値動きを確認してしまうのをやめられない。見る回数を減らす工夫より、見ても操作できない状態を作るほうが効く。積立の設定を変えるには手続きが必要な形にしておくと、衝動と操作の間に時間が入る。

周りが短期で増やしているのを見ると焦る。増えた話は共有され、減った話は共有されにくいという偏りがある。同じ手法で損をした人の数は見えないため、聞こえてくる成功だけを平均と見てしまう。自分が何年後に何に使う資金なのかに話を戻すのが、いちばん早い対処になる。

損が出たまま使う時期が来たらどうするか。使う時期が決まっている資金は、その時期が近づくにつれて預金へ移しておく。進学や住宅の購入が数年先に見えているなら、必要な分を先に確保し、残りだけを市場に置く形にすると、売る時期を相場に決められずに済む。


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