「今月はもう使った」の単位は、たいてい月である
月の半ばで「今月はもう使った」と言う人がいる。何に使ったかを聞くと、入場券と物販と交通費が並ぶ。家賃や通信費のように毎月同じ額が引かれるのではなく、公演の日程に合わせて山ができる。推し活の支出はこの形をとるため、年単位で平らに見ると実感と合わない。
この支出を国の統計はどこに入れているのか。総務省統計局の家計調査では、入場料や月謝、玩具や音響機器、書籍などをまとめて「教養娯楽」という費目に置いている。2025年の家計の概要によると、二人以上の世帯の教養娯楽は1か月あたり3万2,125円で、名目6.2%の増加、実質3.7%の増加だった。
前年と比べると向きが変わっている。2024年の教養娯楽は3万240円で、名目では1.6%増えていたが実質では3.6%減っていた。物価の上がり方に支出が追いつかず、中身が削られていた形である。2025年は消費支出全体も実質0.9%増えて3年ぶりの増加に転じた。
応援する行為そのものに何が残るのかは推し活のメリットに分けて書いた。ここでは出ていったお金の側を追う。
家計・産業・政策の三つを同じ紙に並べる
推し活とお金の話は、話し手の立っている場所で数字の桁が変わる。自分の財布を見ている人は万円で話し、産業を見ている人は兆円で話す。両者がかみ合わないのは単位が違うからで、間に政策の目標値が挟まっている。
| 見ている単位 | 指標 | 直近の値 | 動き |
|---|---|---|---|
| 家計 | 二人以上の世帯の教養娯楽(1か月) | 3万2,125円 | 名目6.2%増・実質3.7%増 |
| 家計 | 同じ費目の前年の値 | 3万240円 | 名目1.6%増だが実質3.6%減 |
| 産業 | エンタメ産業の海外売上 | 5.8兆円 | 1.4兆円から約4倍 |
| 産業 | クリエイティブ産業の海外売上 | 2,614億円 | 1,231億円から約2倍 |
| 政策 | 海外売上の政府目標 | 20兆円(2033年) | 海外受取2.6兆円・回収率13%が前提 |
上二段の出典は家計調査、下三段は経済産業省の資料である。家計の側は1か月の平均、産業の側は1年の合計なので、縦に足して意味のある数字にはならない。並べる意味は別のところにある。自分の支出がどの列に効いているのかを見るためだ。
教養娯楽の内訳では、入場料や月謝を含む「教養娯楽サービス」と、音響機器などの「教養娯楽用耐久財」が実質で増え、「書籍・他の印刷物」は実質で減った。紙に払う金額が減り、場に払う金額が増えている。推し活の支出の形がそのまま出ている。
並べる順番にも意味がある。先に産業の数字を見ると、自分の支出が小さく感じられて記録を付ける気が失せる。先に自分の月の額を出しておけば、産業の数字は「その先に何があるか」の話として読める。順番を逆にしないほうがよい。
産業の側では、12年ほどで4倍になっている
応援する人が増えると、受け取る側の数字も動く。経済産業省のエンタメ・クリエイティブ産業政策研究会の事務局資料は、2013年のクールジャパン政策の本格化を境に、エンタメ産業の海外売上が1.4兆円から5.8兆円へ約4倍に増えたとしている。
同じ資料によれば、ファッションやデザイン、アート、伝統的工芸品を含むクリエイティブ産業の海外売上も1,231億円から2,614億円へ約2倍になった。桁は一つ小さいが、伸びの向きは同じである。国内向けに作られた作品が海外の受け手に届いた結果だと整理されている。
政府はこの先に目標を置いている。日本発コンテンツの海外市場規模を2033年までに20兆円へ拡大するというものだ。資料では、国内に還流する海外受取を2.6兆円、回収率を13%にすることが同時に必要だとしている。売上を増やすだけでは国内に残らないという前提が入っている。
作品ごとの市場の広がり方はアニメの海外人気に分野を絞った数字がある。産業の全体像としてはアニメの歴史の側から辿るほうが見通しがよい。
払った金額は、次の作品の原資になりうる
入場券の代金が作り手にどう届くかを、家計の側から辿るのは難しい。興行や配信の取り分は契約ごとに違い、公開されていない。ただ、集まった金額が次の制作に回ったかどうかは、産業全体の動きとして見ることができる。
家計調査の2025年版が挙げた同年の主な動きには、映画の興行収入が過去最高を記録したことが含まれている。訪日外国人数も4,268万3,600人と過去最多になった。見に行く人と買う人が増えた年に、教養娯楽の支出も実質で増えたという並びになる。
経済産業省の資料は、公的な支援が民間の投資を呼び込んだかどうかも検証している。クールジャパン機構の投資額1,671億円に対し、民間からの投資額は3,646億円で、呼び水の効果は2.1倍だったとしている。制作への支援では、平均0.8億円の支援を受けた案件の平均興行収入等が35.7億円、受けていない案件が16.1億円で、差に寄与した可能性があるという書き方になっている。
応援する側から見ると、ここで分かるのは一点だけだ。払った金額は、作品が続くかどうかを決める要素のうちの一つである。ただし全部ではない。だから「自分が買わないと終わる」という圧力の掛け方は、構造の説明としては正確でない。
自分の側で測るなら、月の枠を先に決める
支出を抑えるという話にすると続かない。公演の日程は自分で決められないので、節約の計画が最初の遠征で崩れる。先に決めるのは金額の上限ではなく、どの月に山を作るかという配分のほうである。
家計調査の費目の切り方は、この配分にそのまま使える。入場料と交通費と物販を一つの袋に入れず、サービスへの支出と物への支出に分けて記録する。前者は日程に縛られ、後者は後回しにできる。削るべきときにどちらを削るかが、記録の形で決まってくる。
年単位の平均と比べる使い方もある。二人以上の世帯の教養娯楽が月3万2,125円という値は、世帯の人数も年齢も混ざった平均なので、自分の額と直接比べる意味は薄い。それでも、桁が二つ違っていれば何かが起きていると分かる。目安は精密でなくても働く。
記録を付ける手順そのものは大学生のお金管理と節約に書いてある。応援の対象が町や催しの場合は、FLASPOが集めている活動事例のほうが、お金の回り方を見る材料になる。
よくある質問
推し活の市場規模はいくらか。公的な統計で「推し活」を切り出した数字は公表されていない。近いところでは、経済産業省が整理したエンタメ産業の海外売上5.8兆円と、家計調査の教養娯楽3万2,125円がある。前者は産業の側、後者は家計の側の値で、どちらも推し活だけを測ったものではない。
教養娯楽の支出が増えたのは推し活が増えたからか。そう断定はできない。家計調査は費目を分けているが目的は尋ねていない。言えるのは、入場料や月謝を含むサービスへの支出が実質で増え、書籍などへの支出が実質で減ったという内訳の動きである。
海外売上が伸びると応援している人に何か返るのか。直接は返らない。資料が回収率13%という中間目標を置いているのは、海外で売れた分が国内にどれだけ戻るかが別の問題だからである。作品が続く確率が上がるという形で間接的に効く。
物価が上がると推し活から削られるか。2024年の教養娯楽は名目で1.6%増えながら実質では3.6%減っていた。価格が上がった分だけ中身が減った年があったということで、削られる側に入りやすい費目だと言える。
月にいくらまでなら使ってよいか。公的な基準はない。決め方としては、金額の上限より先に、どの月に支出を寄せるかを決めるほうが崩れにくい。日程が先に決まる支出だからである。
応援している相手が国内だけで活動している場合はどう見るか。海外売上の数字は関係が薄く、見るべきは国内の興行や配信の側になる。家計調査の教養娯楽サービスが実質で増えたという動きのほうが、近い指標として使える。
支出の記録はどこまで細かくすればよいか。費目を二つに割るだけで足りる。日程に縛られるサービスへの支出と、後回しにできる物への支出。この二つが分かれていれば、予定が重なった月にどちらを削るか迷わない。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
