人間関係と心理学|孤独感の数字は聞き方で7ポイント変わる

人間関係と心理学|孤独感の数字は聞き方で7ポイント変わる

同じ回の調査に、孤独感の数字が二つ並んでいる

孤独かどうかを人に尋ねるとき、聞き方で答えが変わる。それを一つの調査のなかで確かめている例がある。内閣府の「人々のつながりに関する基礎調査(令和7年)」は、孤独という主観的な感情をより的確に把握するため、2種類の設問を同時に採用した。有効回答は11,873人である。

一つめは「あなたはどの程度、孤独であると感じることがありますか」と正面から尋ねる形である。結果は「しばしばある・常にある」4.5%、「時々ある」13.7%、「たまにある」19.5%、「ほとんどない」41.6%、「決してない」19.6%、無回答1.0%だった。感じることがある側の三つを足すと37.7%になる。

二つめは孤独という言葉を一度も使わない形である。三つの質問への答えを点数化し、合計点が高いほど孤独感が高いと評価する。こちらでは「10〜12点」が6.5%、「7〜9点」が38.2%で、上の二区分の合計は44.7%になった。同じ人たちに同じ時期に尋ねて、7.0ポイントの開きが出ている。どちらかが間違っているのではなく、測り方が違えば数が違うというだけである。

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尺度は、質問の組と点のつけ方で決まる

後者で使われているのは「UCLA孤独感尺度」の日本語版の3項目短縮版である。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のラッセルが考案したもので、調査票の脚注には原典としてRussell DW(1996年)、日本語版として舛田ゆづりらの2012年の論文、3項目短縮版としてArimotoとTadakaの2019年の論文が挙げられている。心理学の道具がそのまま政府の一般統計調査に入っている。

三つの質問は「自分には人とのつきあいがないと感じることがありますか」「自分は取り残されていると感じることがありますか」「自分は他の人たちから孤立していると感じることがありますか」である。「決してない」を1点、「ほとんどない」を2点、「時々ある」を3点、「常にある」を4点として合計し、3点から12点の範囲に収める。

孤独という語を避けるのは手続き上の工夫である。自分を孤独だと認めるのは抵抗が伴うので、直接尋ねると低めに出る。つきあいや取り残されという具体的な状態に置き換えれば、その抵抗を通らずに同じものを拾える。先ほどの7.0ポイントは、その抵抗の大きさを間接的に示した数字と読める。

測り方 質問の数 点のつけ方 使っている公的調査 直近の結果
直接質問(孤独感) 1問 5段階から一つ選ぶ 内閣府「人々のつながりに関する基礎調査」 しばしばある・常にある4.5%
UCLA孤独感尺度(3項目短縮版) 3問 各1〜4点、合計3〜12点 内閣府「人々のつながりに関する基礎調査」 10〜12点が6.5%
K6 6問 各0〜4点、合計0〜24点 厚生労働省「国民生活基礎調査」健康票 0〜4点が71.1%

K6は、国の基幹統計のなかで毎回使われている

表の三行目に挙げたK6も、心理学由来の尺度が統計に定着した例である。厚生労働省の「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」の健康票には「こころの状態」という項目があり、用語の説明にはK6という尺度を用いていると明記されている。米国のKesslerらが、うつ病や不安障害などの精神疾患をスクリーニングする目的で開発したものである。

質問は「神経過敏に感じましたか」「絶望的だと感じましたか」「そわそわ、落ち着かなく感じましたか」「気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか」「何をするのも骨折りだと感じましたか」「自分は価値のない人間だと感じましたか」の6つで、過去1か月間について「まったくない」0点から「いつも」4点までで答える。

令和7年の結果では、合計点が「0〜4点」の人が71.1%で最も多く、「5〜9点」が16.2%だった。年齢階級別に見ると、0〜4点の割合は12〜19歳の80.7%が最も高く、30〜39歳の64.9%が最も低い。関係の不調は「人間関係の問題」としては集計されず、気分や落ち着かなさという形で統計に現れる。この見え方の違いは人間関係とメンタルでも扱っている。

心理の尺度は、すでに法律の側に組み込まれている

職場で年に一度、質問票に答えて点数が返ってくる経験をした人は多いだろう。ストレスチェックである。厚生労働省の「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」のページには、2015年から労働安全衛生法により事業者に実施が義務付けられてきたこと、労働者数50人未満の事業場は当分の間努力義務とされてきたことが書かれている。

その範囲は広がる。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、50人未満の事業場にも実施が義務化され、令和10年4月1日から小規模事業場でも義務になる。点数化して返すという心理学の手続きが、ほぼすべての働く場に行き渡ることになる。

ただし測ることと変えることは別の作業である。点数が返ってきても、席の配置や担当の割り振りが動かなければ、同じ数字が翌年も出る。そこをどう動かすかは人間関係とストレスで整理した。尺度は現状を言葉から数に移すところまでを担当し、その先は制度と人の仕事になる。

専門職として数えられる規模になった

心理学が実務に出てくる経路は、尺度だけではない。国家資格としての公認心理師が2017年に始まり、人数の統計が取れるようになった。内閣府の「令和7年版 障害者白書」によると、公認心理師の資格登録者数は2024年12月末時点で73,678人である。比較のために挙げると、精神保健福祉士は2025年3月末時点で111,588人となっている。

この人数が意味を持つのは、相談先が身近にいない人がはっきり存在するからである。先の内閣府調査では、頼れる人が「いない」と答えた人のうち孤独感が「しばしばある・常にある」人は25.1%にのぼった。頼れる人が「いる」人では2.7%である。相談相手の有無で見ても、いない人23.4%に対している人2.5%と、10倍前後の差がついている。

専門職に行くほどではないが身近な相手もいない、という間が実は一番広い。そこを埋めるのは制度ではなく、仕事や家族と関係のない接点である。趣味や関心を軸にした集まりなら、職場の上下や家族の役割を持ち込まずに話せる。FLASPOのような場をそうした一本として持っておくと、尺度の点数が上がる前に手が打てる。

よくある質問

心理学の尺度は、信じてよいものですか。少なくとも政府の統計調査はその前提で使っています。UCLA孤独感尺度の日本語版は信頼性と妥当性を検討した論文が原典として示されており、K6も一般住民を対象とした調査で精神的な問題の程度を表す指標として広く利用されています。

直接質問と間接質問で、どちらの数字を見ればよいのでしょうか。用途が違います。直接質問は本人が孤独だと認識しているかを、間接質問は本人の認識を経ずに状態を拾います。内閣府調査が両方を載せているのは、どちらか一方では足りないという判断だと読めます。

K6の点数が高いと病気ということですか。スクリーニングの目的で開発された尺度なので、合計点数が高いほど精神的な問題がより重い可能性があるとされる、という読み方になります。診断そのものではないので、気になるときは医療機関で確かめることになります。

ストレスチェックを受けると会社に内容が伝わりますか。制度の建て方では、本人の同意がなければ個人の結果は事業者に提供されません。集団ごとに分析した結果は事業者に渡りますが、そこでは個人が特定されない形に集計されます。

公認心理師と臨床心理士は違うのですか。公認心理師は2017年に始まった国家資格で、人数も白書に載る形で公表されています。臨床心理士は民間の資格です。どちらも心理の相談を扱いますが、根拠となる制度が別です。

尺度で測れば悩みは解決しますか。測定は現状を共有できる形に変える手続きで、それ自体は何も変えません。ただ、点数という共通の言葉があると、職場や家族に説明するときの労力が減ります。説明が通りやすくなるぶんだけ、次の手が打ちやすくなるという効き方をします。


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