自治体が若者の声を聞く仕組み|法律に根拠がある四つの入口

窓口を探す前に、入口を四つに分けて考える

ゼミの調査で地元のバス路線の減便を扱い、まとめた結果を市役所に届けたい。そう考えたときに最初にぶつかるのは、どこへ持っていけばよいのか分からないという壁である。市のサイトには「ご意見・ご要望」のフォームがあり、広報紙にはパブリックコメントの告知が載り、ニュースでは「若者議会」という言葉も流れてくる。並べると似て見えるが、この三つは根拠も重みもまったく違う。

自治体が住民の声を受け取る経路は、大きく四つに分かれる。行政が自分で開くもの、常設の席として条例で置くもの、議会の側が開くもの、そして住民の側から起動できるもの。どれを選ぶかで、必要な人数も、手続にかかる日数も、返事が返ってくるかどうかも変わってくる。根拠となる条文まで降りて並べると、違いが一度で見渡せる。

入口 根拠となる条文 開く側 出した意見の行き先
意見公募(パブリックコメント) 行政手続法第39条/自治体には第46条の努力義務 行政 国の手続では考慮した結果まで公示(第43条)
審議会・若者議会などの附属機関 地方自治法第138条の4第3項 行政 答申や意見として記録に残る
議会の公聴会・参考人 地方自治法第115条の2 議会 会議の記録に残る
条例の制定・改廃の請求 地方自治法第74条 住民(有権者の50分の1以上) 20日以内に議会へ付議される
こども施策への意見反映 こども基本法第11条 国と地方公共団体 「必要な措置」の中身は各自治体が決める
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こども基本法は「聴く」ではなく「反映させる」と書いた

2022年6月に公布され、2023年4月1日に施行されたこども基本法の第11条は、国と地方公共団体に対し、こども施策を策定し、実施し、評価するにあたって、対象となるこどもや養育する者などの意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとすると定めている。目を留めたいのは動詞のほうで、意見を「聴く」ではなく「反映させる」と書かれている。アンケートを配って集計し、そこで止めたのでは条文の求めに届かない。

同法第3条は基本理念として、年齢及び発達の程度に応じて自己に直接関係する全ての事項について意見を表明する機会と、多様な社会的活動に参画する機会が確保されること(第三号)、その意見が尊重され最善の利益が優先して考慮されること(第四号)を挙げる。さらに第2条は「こども」を「心身の発達の過程にある者」と定義していて、何歳までという線を引いていない。18歳で切れる制度ではない、という読み方ができる点は、大学生が自分の問題として扱うときの足場になる。内閣官房も庁の発足前から意見反映プロセスの調査研究を重ねており、先進事例の蓄積はそちらにまとまっている。

自治体のパブリックコメントは、行政手続法の外で動いている

意見公募手続の条文は行政手続法の第六章にある。第39条第1項は、命令等を定めようとするときは案と関連資料をあらかじめ公示し、提出先と期間を定めて広く一般の意見を求めなければならないとする。期間は第3項で「公示の日から起算して三十日以上」と決まっており、第40条は、やむを得ない理由でそれを下回る期間にする場合は公示の際に理由を明らかにせよと続ける。出した後の扱いも第43条が押さえていて、提出意見と、それを考慮した結果及びその理由を、公布と同時期に公示しなければならない。

ところが同じ法律の第3条第3項は、地方公共団体の機関が命令等を定める行為について、第二章から第六章までを適用しないと書いている。市区町村や都道府県のパブリックコメントには、30日という日数も、結果を公示する義務も、法律としては及んでいないということである。代わりに第46条が、この法律の趣旨にのっとり必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定める。各自治体が条例や要綱で独自の手続を組んでいるのはそのためで、意見提出期間が30日のところもあれば2週間のところもある。募集要項を開いたら、締切までの日数と、結果を公表するという一文があるかどうかを先に確かめておきたい。

席そのものを条例でつくる、審議会と若者議会

一回限りの募集ではなく、継続して座る席を用意するやり方もある。地方自治法第138条の4第3項は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができると定める。総合計画や子ども計画の審議会に公募委員の枠が設けられているのは、この条文を使った仕組みである。枠は数人でも、任期のあいだ議論の場に居続けられる点が、一度きりの意見提出とは決定的に違う。

これを若者に振り切った例が愛知県新城市である。地方自治研究機構がまとめた若者に関する条例の解説によれば、新城市若者条例は2014年12月24日に公布され、2015年4月1日に施行された。同条例は「若者」をおおむね13歳からおおむね29歳までの者と定義し、第10条で若者議会を置くと定めている。年齢の幅が中学生から20代後半までに及んでいる点は、選挙権の18歳とも、児童福祉法が扱う18歳未満とも重ならない。自分の住む自治体に似た条例があるかどうかは、例規集を「若者」「青少年」で引くと早く見つかる。職員の減少や財政の硬直化といった自治体が抱える課題を踏まえると、こうした常設の席は人手をかけてでも維持したい仕組みだと分かる。

50分の1の署名が、議会の議題を動かす

行政が入口を開くのを待たず、住民の側から起動できる手段もある。地方自治法第74条第1項は、選挙権を有する者の総数の50分の1以上の連署をもって、その代表者から長に対し条例の制定又は改廃を請求できると定める。地方税の賦課徴収、分担金・使用料・手数料の徴収に関するものは対象から外れている。請求を受理した長は第3項により20日以内に議会を招集し、意見を付けて議会に付議しなければならない。第4項は、その審議にあたって代表者に意見を述べる機会を与えなければならないとまで書いている。署名が集まれば、議会の議題になることまでは法律が保証している。

署名できるのは選挙権を持つ人で、第18条が年齢満18年以上かつ引き続き3か月以上その市町村の区域内に住所を有する者としている。下宿して住民票を移した学生は、この条件を満たせば下宿先の自治体で署名もでき、代表者にもなれる。議会の側にも別の入口があり、第115条の2は、予算その他重要な議案や請願等について公聴会を開き、真に利害関係を有する者や学識経験を有する者等から意見を聴くこと、調査や審査のために参考人の出頭を求めて意見を聴くことを認めている。学生団体として調査結果を持っているなら、この参考人の枠は現実的な狙い目になる。活動を続ける体力の作り方は若者の社会参加と学生団体の整理が参考になるはずだ。

よくある質問

高校生でも意見を出せるのか。パブリックコメントの要項は住所や年齢で応募者を絞らないものが多く、在学・在勤を含めて受け付ける例が目立つ。こども基本法第2条が「こども」を年齢で区切っていないことも後押しになる。ただし第74条の署名だけは別で、18歳以上という条件が法律で決まっている。

出した意見に返事は来るのか。国の命令等であれば第43条が結果の公示を義務づけているが、自治体の手続は第46条の努力義務の下にあるため、扱いは要項しだいである。「個別には回答しません」と書かれていることも珍しくない。その場合でも、寄せられた意見と市の考え方を一覧にして公表する自治体は多いので、締切の数か月後に同じページを見に行くと自分の意見の行方が確かめられる。

住民票を実家に置いたままだとどうなるのか。署名は住所のある自治体でしかできないので、実家のある市町村が対象になる。一方でパブリックコメントや公募委員は、在学している自治体でも受け付ける例が多い。要項の「対象者」の欄に在学が含まれているかどうかで判断したい。

若者議会のような枠がない自治体では何をすればよいのか。審議会の公募委員、議会の公聴会と参考人、そして自治体が主催する提案型の企画が残る。提案型の企画については大学生の政策コンテストで応募の流れを確かめられる。地域と学生をつなぐ取り組みを探している人は、FLASPOが各地で動かしているプロジェクトも入口の一つになる。


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