勉強のモチベーションは手応えで戻る|成長実感85%と外国語36%の差

勉強のモチベーションは手応えで戻る|成長実感85%と外国語36%の差

意欲が落ちるのは、手応えが返ってこない時期である

教科書を開いても字が目を滑るだけの週が続くと、自分の根気を疑いたくなる。だが数字を見ると、学んでいる当人の実感はそれほど低くない。文部科学省が2025年9月に公表した令和6年度の全国学生調査(第4回試行実施)では、大学での学びによって成長を実感していると答えた割合が85パーセント、卒業時までに身に付けるべき知識や能力を意識して学修していると答えた割合が82パーセントだった。回答は13万8千人を超える。

同じ設問群の中で、はっきり低い項目が一つある。授業アンケート等の学生の意見を通じて大学教育が良くなっていると答えた割合は52パーセントで、ほかが8割台に並ぶなかで半数程度にとどまった。短期大学では成長実感が92パーセント、意識して学修しているが92パーセントまで上がる。手応えのある側とない側の差が、この並びにそのまま出ている。

やる気の話を性格の話として扱うと、ここで止まる。出した側に何かが返ってくる感覚があるかどうかという設計の話に置き換えると、動かせる場所が見えてくる。意欲は内側から湧くものというより、出力に対する反応の量で決まっている部分が大きい。落ち込んでいるときに探すべきは励ましではなく、返りの薄い箇所である。

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やってみた人ほど有用だと答える、という順序

意欲が出てから動くという順番を、同じ調査の別の設問が疑わせる。主に英語で行われる授業の履修については6割以上が経験したことがあり、経験した学生の約7割が有用だった、ある程度有用だったと答えている。履修する前に有用さが分かっていたわけではない。やったあとに評価が付いている。

対になる数字が、経験していない人の割合である。海外留学・海外研修は86パーセント、5日間以上のインターンシップは79パーセントが経験していないと答えた。短期大学でも海外留学・海外研修が88パーセント、インターンシップが64パーセントで同じ傾向になる。未経験の枠は、有用かどうかを判断する材料がそもそも手元にない枠でもある。

判断の材料がないものは、優先順位の中で自然に後ろへ下がる。下がったまま四年が過ぎると、やらなかった理由として「興味がなかった」が後から貼られる。順序を逆にして、小さい単位で一度経験してから判断すると、意欲の問題が情報の問題だったと分かることがある。五日間の実習に手応えがあれば、次の一歩は意志ではなく経験が押してくれる。

身についた実感には、はっきりした偏りがある

何に手応えが出やすく、何に出にくいかも同じ調査から読める。大学教育を通じて身に付いたと思うかを尋ねた設問では、専門分野に関する知識・理解が89パーセント、幅広い知識やものの見方が88パーセント、他者と協働する力が86パーセントと高い。一方で外国語を使う力は36パーセントにとどまり、数理・統計・データサイエンスに関する知識・技能は53パーセントだった。

身に付いたと思う項目 大学 短期大学
専門分野に関する知識・理解 89% 96%
幅広い知識、ものの見方 88% -
将来の仕事につながる知識・スキル等 - 95%
他者と協働する力 86% 94%
数理・統計・データサイエンスに関する知識・技能 53% 48%
外国語を使う力 36% 33%
文部科学省「令和6年度全国学生調査(第4回試行実施)」の公表資料から作成。「身に付いた」「ある程度身に付いた」の合計。-は公表資料に該当の記載がない項目

低い二つに共通するのは、できたかどうかが自分では測りにくいことである。専門科目の理解は試験や発表で手応えが戻るが、語学やデータ処理は使う場面を自分で作らないかぎり成果が見えない。意欲が続かないと感じる領域は、たいていこの型に当てはまる。測り方を先に用意すれば、同じ努力でも手応えの出方が変わる。語学なら目標の置き方から整理したほうが早く、その手順は英語学習の目標設定で扱っている。

役に立つという感覚は、放っておくと薄れていく

学んでいることが将来につながると思えるかどうかは、意欲の土台になる。この感覚が時間とともに減っていくことを、文部科学省と国立教育政策研究所の令和7年度全国学力・学習状況調査の質問調査が示している。対象は小学6年生と中学3年生で、大学生の調査ではないが、下がり方の形は参考になる。

算数・数学の授業で学習したことが将来、社会に出たときに役に立つと思うかという問いに「当てはまる」と答えた割合は、小学6年生で66.1パーセント、中学3年生で35.0パーセントだった。学年が上がると半分近くまで落ちる。経年でも下がっており、小学6年生は令和4年度の74.7パーセントから、中学3年生は同じ年の40.7パーセントから、いずれも減っている。国語についても小学6年生は65.5パーセントから56.0パーセントへ下がった。

同じ報告書のクロス分析では、中学校で「理科の勉強は好きである」「理科の授業で学習したことは、将来、社会に出たときに役に立つと思う」と答えた生徒のほうが平均の学力スコアが高い傾向が出ている。好きだから伸びたのか、伸びたから好きになったのかは、この集計では決まらない。ただし両者が一緒に動くことは確かで、意欲だけを単独で引き上げようとする方法が効きにくい理由にもなる。

立て直しは、返りを自分の側に作ることから始まる

では何を変えるか。全国学生調査には、返りの量を直接示す項目がある。理解がしやすいような教え方の工夫があったと答えた割合は90パーセント、授業時間外に行うべき学習の指示があったが79パーセントと高い。これに対し、適切なコメントが付された提出物の返却は54パーセント、ティーチングアシスタントなどによる補助的な指導は56パーセントで、半数程度だった。

教え方と指示は届いているが、出したものへの反応は半分の確率でしか戻らないということである。そこを待つかぎり、意欲の波は他人の運用に左右される。打てる手は、返りを自分の側に作ることになる。提出前に友人と交換して読む、授業後に質問を一つ持っていく、課題を小さく割って終わりの印を増やす。どれも反応の回数を増やす工作である。

仕組みにする方向もある。履修の組み方を卒業までの逆算で決めておけば、一つの科目の出来不出来に気分が引きずられにくくなる。単位の数え方から組み立てる手順は大学の卒業要件と履修計画に、働きながら学ぶ場合の配分は資格取得の勉強法にまとめてある。学外で手応えを取りに行くなら、地域の課題に学生が提案を出すFLASPOのような場も選択肢になる。

よくある質問

やる気が出るまで待つのは有効か。調査の形から言えば、待つ時間は材料の増えない時間である。主に英語で行われる授業で、経験した学生の約7割が有用だったと答えているように、評価は経験の後に付く。先に小さく試して、そこから判断するほうが情報が増える。待っていても判断材料は増えないという点が、待機の弱いところである。

好きになれない科目はどう扱うか。好きかどうかと成績が一緒に動く傾向は調査にも出ているが、因果の向きは決まっていない。やれる手は、好きになる努力より測り方を作る側である。小テストの点、解けた問題の数、説明できた範囲のように、戻ってくる数字を一つ決めると、感情に関係なく進みが見える。感情は後からついてくることが多い。

周りと比べて焦るときはどうするか。全国学生調査の数字は、同じ設問でも大学と短期大学で成長実感が85パーセントと92パーセントのように差がある。環境によって手応えの出やすさが違うということで、個人の資質の差とは別の話である。比較する相手を他人から過去の自分に替えると、記録の有無がそのまま差になる。記録の取り方は時間管理のコツは記録から始まるで扱っている。

長期の目標が思い描けないときはどうするか。令和7年度の全国学力・学習状況調査では、将来の夢や目標を持っているという問いに「当てはまる」と答えた中学3年生は35.5パーセントで、小学6年生の60.7パーセントから下がっていた。年齢が上がるほど見通しは立てにくくなる。遠い目標が描けないなら、半年で終わる課題を一つ置いて、その評価が返ってくるところまでを区切りにするほうが現実的である。


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