奨学金のメリットと注意点|受給率51.1%の実態から考える

奨学金のメリットと注意点|受給率51.1%の実態から考える

半数が使う制度になったという事実から見る

奨学金という言葉には、借金という響きを警戒する空気と、使わないと進学できないという現実の両方がまとわりついている。評価の出発点になるのは、どれだけの学生が実際に使っているかという数字だろう。令和6年度学生生活調査によれば、大学学部(昼間部)で何らかの奨学金を受給している学生は51.1%だった。短期大学(昼間部)は57.3%である。

この割合は前回調査から3.9ポイント下がっており、増え続けてきた流れが反転した。設置者別では国立43.8%、公立54.8%、私立52.4%と差がある。日本学生支援機構の給付奨学金と貸与奨学金に限った受給者の割合は、令和6年度の支援実績ベースで大学学部が31.7%、短期大学が34.6%と注記されている。

同じ調査で、学生生活費は年間2,019,100円、前回調査から10.7%の増加だ。収入の内訳は家庭からの支援が50.7%で5.1ポイント減り、アルバイト収入が25.0%で5.9ポイント増え、奨学金は21.6%だった。家計からの支援が細る一方で費用が膨らむなかで、奨学金は収入の五分の一を支える位置にある。

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進学の判断を家計の都合で打ち切らずに済む

最大の効用は、入学の時点で費用の全額を用意できなくても進路を選べることだ。とくに返還不要の給付奨学金は、授業料と入学金の減免と組み合わせて「高等教育の修学支援新制度」を構成しており、生活費と学校納付金の両面から負担を引き下げる。

金額の規模は小さくない。給付奨学金の支給額では、私立・自宅外・第1区分で月75,800円、国公立・自宅外・第1区分で月66,700円が支給される。4年間に換算すれば私立の自宅外で360万円を超える。減免の側も、多子世帯支援の上限額では私立大学の授業料が年70万円、入学金が26万円まで対象になる。

貸与型にも、この局面では利点がある。入学時に一括で用意できない費用を在学期間に分散させ、返還を収入が立ち上がったあとへ移す仕組みだからだ。とくに第一種は無利子で、返す額が借りた額と一致する。教育ローンのように利息が積み上がらない点は、同じ借入でも性格が違うと言える。

返し方に選択肢があることも効用に数えてよい。第一種には、月々の額を完済まで一定にする定額返還方式と、前年の課税対象所得に応じて毎年決め直す所得連動返還方式がある。後者は機構の算定資料で、年収300万円・子どもなしなら月約8,600円、年収450万円なら月約15,400円と例示されている。収入が伸びない時期の負担を抑えられる設計だ。

アルバイトの時間を学業に振り替えられる

金銭面に次いで見逃せないのが時間の効果だ。前掲の調査でアルバイト収入が収入全体の25.0%まで上がったことは、学費を稼ぐために費やす時間が増えたことの裏返しでもある。奨学金で不足分を埋められれば、その時間を授業や研究、資格の勉強、長期のインターンシップに回せる。

ここは判断が分かれる論点でもある。アルバイトには収入以外に得られるものがあり、職場での経験がそのまま就職活動の材料になることも珍しくない。だから奨学金とアルバイトはどちらかを選ぶ関係ではなく、配分の問題として考えるのが実際的だ。働くことで得られるものの整理はアルバイトで得るものを扱った記事にまとめている。

配分を決める材料は、自宅通学か自宅外かで大きく変わる。自宅外なら住居費と光熱費が固定で乗るため、アルバイトだけで埋めるには週の労働時間が長くなりすぎる。仕送りの水準の推移は仕送りの平均額を扱った記事が参考になるだろう。

返還が苦しくなったときの逃げ道が制度側にある

貸与型を避ける理由として最も多いのが、返せなくなったらどうするのかという不安だ。ここに対しては複数の仕組みが用意されており、知っているかどうかで結果が変わる。

制度 内容 期間の上限
減額返還 月々の額を3分の2・2分の1・3分の1・4分の1のいずれかに減額する 通算15年(180か月)
返還期限猶予 一定の収入を得るまで返還を先送りする 通算10年(120か月)
所得連動返還方式 課税対象所得から子1人33万円を控除し9%を掛けた額で月額を決める 下限は月2,000円
代理返還 勤務先が従業員に代わり機構へ直接送金する 導入企業ごとに条件が異なる
日本学生支援機構「減額返還制度」「返還期限猶予」「所得連動返還方式」「企業等の奨学金返還支援」の記載より作成

減額返還制度は1回の願い出で12か月が適用され、最長15年まで延長できる。返還期限猶予は通算10年が上限だが、災害、傷病、生活保護の受給中、産前産後休業と育児休業などの場合はこの制限がかからない。

勤務先が肩代わりする道もある。企業等の奨学金返還支援は、企業が返還残額の一部または全部を本人に代わって機構へ直接送金する制度で、地域や業種から導入企業を検索できる。企業の支援額に自治体が補助を上乗せする仕組みも整いつつあり、就職先を選ぶ際の条件のひとつになってきた。地域で働き暮らす選択肢の情報はFLASPOでも扱っている。

損をしやすいのは制度の前提を読み飛ばしたとき

利点の裏には必ず条件がある。第一に利息だ。第二種の利率は在学中は無利子だが、卒業後は上限年3.0%の範囲で利息が発生する。貸与終了時の利率を完済まで使う固定方式と、おおむね5年ごとに見直す方式があり、後者は金利上昇の影響を受ける。月額は大学なら最大120,000円まで選べるため、満額を4年間借りれば元金だけで576万円に達する。

第二に延滞だ。期日に返さなければ延滞金が課され、個人信用情報機関への登録に至る場合もある。住宅ローンの審査などに影響が出るのはこの段階である。収入が落ちたら延滞する前に減額返還か猶予を願い出るのが正解で、放置だけが明確な失敗になる。

第三に毎年度の適格認定がある。学業成績や修得単位数が基準を下回れば、警告や支給の打ち切りが行われ、給付奨学金では支給済み額の返還を求められる場合もある。採用は一度で確定する権利ではなく、在学中の学修と結び付いた条件付きの支援だと捉えておきたい。返還額を初任給と並べて検討する手順は初任給から逆算した記事で扱っている。

第四に、申込の時期を外すと一年単位で機会を失う。高校を通した予約採用と、進学後に在籍校を通す在学採用のどちらも、校内の締切が機構の締切より前に置かれる。採用の見込みを進学先の判断に使いたいなら予約採用が要になるため、案内を受け取った段階で日程を押さえるほかない。

よくある質問

給付奨学金は本当に返さなくてよいのか。原則として返還は不要だ。ただし適格認定で廃止となった場合や、虚偽の申告があった場合には支給済み額の返還を求められる。無条件の給付ではない点に注意したい。

無利子の第一種だけ借りるのは得なのか。利息が付かない以上、同じ金額なら第一種が有利だ。問題は上限で、大学の最高月額は国公立・自宅外で51,000円、私立・自宅外で64,000円にとどまる。不足するなら第二種を足すか、必要額そのものを見直すことになる。

延滞すると具体的に何が起こるのか。延滞金は令和2年3月28日以降の返還期日分について年3%の率で、期日の翌日から返還日までの日数に応じて課される。さらに延滞が3か月以上になると個人信用情報機関への登録対象になる。返還開始から6か月が過ぎた時点で判定が始まり、以後は毎月確認される。

在学中に家計が急変した場合はどうなるか。家計急変採用という枠がある。失業や災害、生計維持者の死亡などで収入が大きく減った場合に、通常の募集時期とは関係なく申し込める。要件と提出書類が通常の採用と異なるため、在籍校の窓口で確認するのが早い。

機構以外の給付型も併せて受けられるのか。制度ごとに併給の可否が決まっており、受けられるものとそうでないものがある。自治体や民間財団の給付型は返還不要で金額を上乗せできる反面、募集が学校単位で告知されるため情報が届きにくい。在学中は掲示や学内メールを定期的に見る習慣が効く。


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