入学前に一度決めた仕送り額は、その後なかなか動かせない。送る側は家計の余力から、受け取る側は家賃と食費の実額から考えるため、最初のすり合わせを外すと在学中ずっと窮屈になる。ここでは大学生協と日本学生支援機構の調査から、月額の最新値、年額で見た長期の変化、そして仕送りが届かない学生の家計までを並べる。
最新の平均は月7万4,652円
月単位の数字で最も新しいのは大学生協の調査である。全国大学生活協同組合連合会の第61回学生生活実態調査(2025年10〜11月実施、有効回答13,277人)では、下宿生の仕送りが月額74,652円で、前年から2,302円増えた。収入合計138,070円は過去10年で最も高い水準にあたる。
前年の第60回調査では仕送りが72,350円で、こちらも前年から2,230円の増加だった。ただし長い目で見ると様子は違う。同じ調査系列をたどると2022年は67,650円まで落ち込んでおり、物価高を受けて直近2回で戻してきた、というのが実態に近い。
| 年 | 仕送り | アルバイト | 奨学金 | 収入合計 |
|---|---|---|---|---|
| 2015年 | 71,440円 | 25,320円 | 23,270円 | 122,580円 |
| 2019年 | 72,810円 | 33,600円 | 20,900円 | 129,860円 |
| 2022年 | 67,650円 | 32,340円 | 20,640円 | 124,290円 |
| 2023年 | 70,120円 | 36,110円 | 19,660円 | 129,240円 |
| 2024年 | 72,350円 | 37,540円 | 19,140円 | 132,140円 |
年額で見ると家庭からの給付は109万円台まで下がった
月額が戻っている一方で、年額の統計は逆を向いている。日本学生支援機構の令和4年度学生生活調査では、大学学部(昼間部)の家庭からの給付が年1,096,900円だった。平成26年度の1,193,800円から、8年で96,900円減っている。
学生生活費に対する給付の比率も落ちている。平成26年度は64.1%だったが、令和4年度は60.1%。費用の4割が家庭以外の原資で賄われていることになる。2つの調査が反対を向いて見えるのは対象が違うからで、大学生協は下宿生の月額、学生支援機構は自宅生を含む全学生の年額を集計している。自宅生の比率が高い後者のほうが、家庭の負担の総量をとらえやすい。
減り方は学校区分によって差がある。短期大学(昼間部)は792,900円で給付の比率が53.1%、修士課程は839,000円で48.4%、博士課程は249,000円で11.2%まで下がる。学年が上がるほど家庭の支えから離れる構造が、年額の統計にはっきり出ている。
| 年度 | 家庭からの給付額(年) | 学生生活費に対する割合 |
|---|---|---|
| 平成26年度 | 1,193,800円 | 64.1% |
| 平成28年度 | 1,180,700円 | 62.7% |
| 平成30年度 | 1,196,600円 | 62.5% |
| 令和2年度 | 1,144,700円 | 63.1% |
| 令和4年度 | 1,096,900円 | 60.1% |
収入に占める仕送りの割合は5割台
仕送りが家計のどこを支えているのかは、収入の構成比を見ると分かる。学生支援機構の集計では、大学学部(昼間部)の収入総額1,967,400円の内訳が、家庭からの給付1,096,900円(55.8%)、奨学金407,600円(20.7%)、アルバイト収入375,900円(19.1%)、定職とその他87,000円(4.4%)となっている。
設置者で分けると差が大きい。国立は864,200円で収入の53.3%、公立は718,000円で48.3%、私立は1,175,200円で56.6%。公立だけが5割を下回り、その分を奨学金とアルバイトで埋めている。下宿生に限った大学生協の構成比では、仕送りが収入の54.8%、アルバイトが28.4%、奨学金が14.5%で、やはり仕送りが半分強を担う形になる。
男女で分けると、給付額は男子1,063,200円、女子1,126,000円で、女子のほうが6万円ほど多い。収入総額も男子1,939,800円に対し女子1,991,100円で、差の大半は家庭からの給付によるものである。
仕送りが届かない学生は何で埋めているか
平均の裏側には、仕送りを受けていない学生がいる。大学生協の集計では、仕送りが0円の下宿生はおおむね7%前後で推移しており、2024年の調査でも同じ水準だった。この層の家計は平均とはっきり違う形をしている。
仕送り0円の下宿生は、奨学金が月66,540円で全下宿生平均19,140円の3倍を超え、アルバイトも47,960円と平均37,540円を上回る。それでも収入合計は123,190円で、平均132,140円には届かない。支出側では住居費が48,870円と平均より約7,000円低く、食費も23,500円で平均26,110円を下回る。収入の不足を住まいと食事の水準で調整している構図である。
奨学金の受給で分けた集計も示唆的だ。受給者の仕送りは40,920円、非受給者は86,500円で、倍以上の差がある。家庭からの送金が少ない学生ほど奨学金に寄り、将来の返還を抱えることになる。
金額をどう決めるか
決め方の順序は、住居費から積み上げるのが素直である。第61回調査の下宿生は住居費に月55,452円を払っており、仕送り74,652円から引くと残るのは19,200円。食費29,853円には1万円以上足りない。その差をアルバイト収入37,620円が埋めている、というのが平均的な姿になる。
つまり家賃を先に決めれば、必要な仕送り額とアルバイトの時間はほぼ自動的に決まる。学業に支障が出ない働き方を前提に置くなら、家賃の天井を下げるほうが調整の余地は大きい。費用の全体像は大学生の一人暮らしとはの記事、家計が受ける影響は一人暮らしのデメリットの記事、自宅通学との比較はメリットの記事にまとめている。地域で暮らしを組み立てる視点はFLASPOでも扱っている。
よくある質問
仕送りは増えているのか減っているのか。下宿生の月額は直近2回の調査で続けて増え、72,350円から74,652円になった。一方で自宅生を含む年額の家庭からの給付は109万円台まで下がっている。見ている対象が違うため、どちらも事実として成立する。
仕送りだけで生活できるか。平均値で見ると、仕送り74,652円から住居費55,452円を引いた残りでは食費を賄えない。アルバイトか奨学金のどちらかを組み込む前提で設計しないと、月の後半で立ち行かなくなる。
自宅通学と比べて家庭の負担はどれだけ違うか。学生支援機構の集計では、国立大学生の学生生活費が自宅で1,082,600円、アパート等で1,681,800円。差は599,200円で、年に約60万円が住まいの違いから生まれている。
月額と年額のどちらを基準にすべきか。送る金額を決める場面では月額が実務的だが、4年間の総額を把握するには年額が向く。月74,652円は年に換算すると約90万円で、学生支援機構が示す給付額109万円台との差は、入学金や帰省費のような月々に表れない支出を含むかどうかによる。
奨学金を前提に組んでよいか。仕送り0円の層が奨学金を平均の3倍受けている事実は、制度が機能していることの裏返しでもある。ただし貸与型は返還が始まるため、卒業後の収入見込みと返還額を並べて確認してから金額を決めたい。
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