つまずきが表に出るのは、登録の瞬間ではなく二年後
登録を終えた直後に困ることは、実はあまりない。困るのは、積み残しが二つ三つ重なって進級や卒業の判定に当たる時期だ。そこまで来ると、選べる手は休学か、在籍を延ばすか、辞めるかに狭まっていく。
どのくらいの規模で起きているかは、国の調査で分かる。文部科学省の「令和六年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果」は、令和六年四月一日から令和七年三月三十一日までを対象に、全国の国公私立大学、短期大学、大学院及び高等専門学校を調べたもので、回答率は90.4%だった。
大学の中途退学者は五万五百十六人で、学生数に占める割合は2.00%。前年度の2.04%からわずかに下がっている。学校種を合わせた合計は六万千四百四十一人、割合は2.10%だった。休学者は大学で六万八千二百三十九人、割合は2.70%で、前年度の2.69%から微増している。
一学年あたりに置き換えると、百人の学部生のうち二人が年度内に大学を離れ、三人近くが在籍のまま休んでいる計算になる。珍しい出来事ではない。履修の組み方が、この数字のどこに関わるのかを見ていく。
中退の理由の内訳に、履修と地続きの項目が並ぶ
同じ調査は、中途退学の理由を単一選択で集計している。複合的な理由による場合は、もっとも中心的な理由に分類する扱いだ。
| 中途退学の理由(令和6年度) | 割合 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 転学・進路変更等 | 22.3% | +0.3ポイント |
| 学生生活不適応・修学意欲低下 | 16.3% | -0.2ポイント |
| 就職・起業等 | 14.8% | +0.4ポイント |
| その他 | 13.6% | - |
| 経済的困窮 | 13.2% | -0.4ポイント |
| 学力不振・精神疾患(いずれも同率) | 各7.0% | - |
| 病気・けが・死亡 | 4.1% | - |
| 不明 | 1.1% | - |
| 海外留学 | 0.6% | - |
最も多いのは転学・進路変更等で、これは必ずしも行き詰まりを意味しない。注目したいのは二番目の学生生活不適応・修学意欲低下が16.3%を占めている点と、学力不振が7.0%ある点だ。足すと二割強が、学びの進み方そのものに関わる理由で離れている。
前年度の調査では、転学・進路変更等が22.0%、学生生活不適応・修学意欲低下が16.5%、就職・起業等が14.4%、経済的困窮が13.6%だった。順位も水準もほとんど動いていない。景気や制度の変化で入れ替わる類の数字ではなく、毎年同じ構造で積み上がっている。
この内訳を履修の側から読むと、意欲が落ちる前の段階に手がかりがあることになる。初年度の時間割が重すぎた、評価の基準を読まずに登録した、不足している区分を把握していなかった、といった経緯は統計の分類には現れない。以下は、その手前で起きる型を三つに分けたものだ。
型その一 上限まで埋めて、授業外の時間が入らなくなる
空いているコマを埋めると、充実した時間割になったように見える。ところが単位の数え方は、教室にいる時間だけを前提にしていない。
大学設置基準の第二十一条第二項は、一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもって構成することを標準とし、授業の方法に応じておおむね十五時間から四十五時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって一単位として計算するものとしている。講義で十五時間を授業に充てる設計なら、残りの三十時間は授業外に回る前提になる。
半期に二十単位を登録した場合、計算上は九百時間の学修が割り当てられる。十五週で割れば週六十時間で、生活に収まらない。収まらないと課題が出せなくなり、評価が落ち、意欲が落ちる。中退理由の二番目に入っている項目へは、この順路で届く。
だからこそ上限の規定がある。第二十七条の二第一項は、学生が各年次にわたって適切に授業科目を履修するため、登録することができる単位数の上限を定めるよう努めなければならないと大学に求めている。上限は妨げではなく、一科目あたりの時間を確保するための線だ。
判断を助けるのは、授業外にどれだけかかるかという見積もりである。もっとも、準備学習に必要な学修時間の目安をシラバスに書いている大学は、文部科学省の平成二十九年度の調査で三百四十六大学(47%)にとどまる。書かれていない前提で、自分の生活時間から逆算するほうが確実だ。
型その二 区分を見ずに数だけ揃える
三年目の秋に残っている不足は、たいてい総数ではなく区分の空白である。第三十二条第一項は、卒業の要件を百二十四単位以上の修得のほか、大学が定めることとしている。この後半が科目区分ごとの必要単位数にあたり、超過した選択科目で埋め合わせることはできない。
外から持ち込む単位を当てにしていた場合も、同じ形のずれが起きる。第三十条第四項は、入学前の既修得単位等として認定できる単位数を、第二十八条第一項や第二十九条第一項でみなす単位数と合わせて六十単位を超えないものとしている。留学と入学前の単位を両方算入する計画は、枠の取り合いになる。
認定の可否が出るまで時間がかかる点も見落としやすい。申請してから結果が出るまでに一学期かかる大学もあり、その間は不足が確定しない。認定されなかったときに戻せる余裕を、年次の計画に残しておきたい。
進級要件や履修条件が絡むと、ずれは次の年度にも波及する。演習や卒業研究は、特定の科目を修得していることを履修条件にしている場合が多い。その一科目を落とすと、翌年の登録ができず、卒業が一年先に延びる。
働く時間が増えて計画が崩れそうなときは、制度の側に受け皿がある。第三十条の二は、職業を有している等の事情により修業年限を超えて計画的に教育課程を履修し卒業することを希望する旨を申し出たときに、その履修を認めることができると定めている。黙って落とすより、申し出たほうが選択肢は残る。
型その三 警告のサインを放置する
成績が下がったとき、通知が来るのは学生本人だけではない。平成二十九年度の調査では、成績の指標を退学勧告の基準として用いている大学が百五十四大学(21%)と報告されている。五校に一校では、指標が在籍の判断に直結している。
授業料等の減免や給付の支援を受けている場合は、基準が省令に数値で書かれている。大学等における修学の支援に関する法律施行規則の別表第二は、修得した単位数の合計数が標準単位数の七割以下であることなどを警告の区分とし、六割以下であることや、修業年限で卒業または修了できないことが確定したことなどを廃止の区分としている。出席率も指標で、八割以下は警告、六割以下は廃止の側に置かれている。
標準単位数は、卒業要件の単位数を修業年限で割った数に在学期間の年数を掛けた数と、登録できる単位数の上限として大学が定めた数の合計の、いずれか少ない数と定義されている。卒業要件が百二十四単位で四年なら一年あたり三十一単位、二年目の終わりで六十二単位が目安になる。災害や傷病その他のやむを得ない事由による場合は除かれる扱いだ。
休学は失敗ではなく、立て直しの手段として使える。先の調査では、大学の休学者は六万八千二百三十九人で、中退者より多い。在籍を保ったまま時間を作る選び方が、実際には広く使われている。
相談の入口も公表されている。学校教育法施行規則の第百七十二条の二第一項第十号は、大学が行う学生の修学、進路選択及び心身の健康等に係る支援についての情報を公表するものと定めている。どこへ行けばよいかを探す手間は、思っているより小さい。
学業の外に軸を作っておくことも、意欲が落ちたときの支えになる。働き方の選び方は大学生のアルバイトの探し方、学業との両立で気をつける点はインターンのデメリットにまとめた。地域に関わりながら学びたい場合はFLASPOのような入口から探せる。
よくある疑問
単位を落としたことに気づいたのが学期末だった場合は、次の学期の登録で同じ科目を取り直す形になる。年度によって開講されない科目もあるので、開講時期を科目表で先に確かめたい。再履修は登録できる単位数の枠を食うため、その学期は新規の科目を減らす計算が必要になる。
何単位落とすと留年になるかは大学ごとに違う。進級要件は学則や履修要項に書かれていて、学年ごとに必要な修得単位数が示されている。第三十二条第一項の後半で「大学が定める」とされている部分に含まれるため、全国共通の数値はない。
支援を受けている人が警告を受けたあとは、次の認定までに単位数と出席率を戻すのが先になる。別表第二は、警告の区分に連続して該当した場合を停止や廃止の区分に置いている。連続させないことが分かれ目になる。
中退を考える段階まで来たときは、転学・進路変更という選び方が統計上もっとも多い理由であることを知っておくと視野が変わる。辞めるか続けるかの二択ではなく、休学、長期履修、転学の三つが制度として用意されている。どれも手続きの期限があるので、学務窓口に早めに相談するのが確実だ。
出典は次のとおり。中退と休学の数値は令和6年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果(文部科学省)、条文は大学設置基準(e-Gov法令検索)と大学等における修学の支援に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)、調査結果は文部科学省の改革状況調査(平成29年度)を参照した。
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