ソーシャルビジネスの事例|国が選んだ55者から四つの型を読む

ソーシャルビジネスの事例|国が選んだ55者から四つの型を読む

事例を集めても、並べ方が決まらない

企画書に「参考事例」の欄を設けて検索をかけると、美しい写真と志の高い文章がいくらでも集まる。ところが三十件ほど貼り終えたところで、自分の企画がそのどれと似ているのか言えなくなる。事例が足りないのではなく、並べる軸がないまま集めているからだ。

軸を外から借りられる資料が一つある。経済産業省が全国から公募して選んだソーシャルビジネス55選である。2009年2月の公表で17年前の資料だが、国が募集要項を書いて選抜した唯一の一覧であり、選定の枠組みがそのまま分類の軸として使える。

同省は選定の目的を、社会的課題・地域課題の解決を目標として事業展開している企業やNPO等の取組を広く世の中に紹介することで、全国の人々のソーシャルビジネスやコミュニティビジネスに対する関心を高めていくことだと説明している。表彰ではなく紹介のための選抜だったという位置づけが、事例の読み方を左右する。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

選抜の枠組みが、そのまま四つの型になっている

公式ページの事例集は、55者を四つの束に分けて並べている。地域活性化のための人づくり・仕組みづくり、地域住民が抱える課題、社会の仕組みづくりへの貢献、そして企業家育成と創業・経営の支援。掲載されている名称を数えると、束ごとの件数に大きな偏りがある。

型 選定数 並んでいる事業者の例
街づくり・観光・農業体験等で地域活性化に取り組む 25 株式会社いろどり、株式会社四万十ドラマ、株式会社御祓川
子育て支援・高齢者対策等の住民の課題に取り組む 18 特定非営利活動法人フローレンス、有限会社ビッグイシュー日本
環境・健康・就労等で社会の仕組みづくりに貢献する 7 特定非営利活動法人「育て上げ」ネット、株式会社アバンティ
企業家育成、創業・経営の支援に取り組む 5 特定非営利活動法人G-net、特定非営利活動法人大阪NPOセンター

半数近くが一つめの束に入る。地域の側に課題があり、その地域の中で事業を立てる形がもっとも多く選ばれたということだ。四つめの束がわずか5者にとどまる点も見ておきたい。担い手を育てる側に回る事業者は、当時まだ数が薄かった。

もっとも多い型は、すでにある資源を売り物に変えている

一つめの束に並ぶ25者を見ていくと、新しい何かを持ち込むのではなく、その土地にあって値段がついていなかったものに値段をつけた例が目につく。株式会社いろどり、株式会社四万十ドラマ、株式会社吉田ふるさと村、農業法人株式会社秋津野はいずれも、農山村の産物や景観を商品の側へ移している。

もう一つ目立つのが、移動そのものを事業にした例である。特定非営利活動法人生活バス四日市と株式会社コミュニティタクシーは、路線の維持が難しくなった地域で住民の足を引き受けている。有限会社やんばる自然塾は自然の案内そのものを商品にした。器はNPO法人と株式会社に分かれるが、課題の立て方は近い。

株式会社御祓川やさんぽく生業の里企業組合のように、まちの通りや集落の生業を事業の単位に据えた例もある。地域コミュニティの再生事例で見た八事例と重ねると、担い手が法人格を取って事業の形に移した段階が、この束に当たるとわかる。

残りの三つの型は、人の困りごとから立ち上がっている

二つめの束の18者は、暮らしの中で止まってしまう場面を事業の対象にしている。病児の保育を引き受ける特定非営利活動法人フローレンス、障がいのある人の仕事をつくる社会福祉法人はらから福祉会と有限会社ねば塾、在宅での就労を組み立てた特定非営利活動法人ジェイシーアイ・テレワーカーズ・ネットワーク、路上での販売を仕事にした有限会社ビッグイシュー日本が並ぶ。

三つめの束は7者だけだが、性格がはっきりしている。若者の就労支援に向かう特定非営利活動法人「育て上げ」ネット、生ごみの資源化を広げる特定非営利活動法人循環生活研究所、オーガニックコットンを扱う株式会社アバンティ。いずれも自分の地域で完結させず、やり方そのものを他へ渡すことを狙っている。三要件のうち革新性に重みがある型だと言える。

四つめの束の5者は、事業者を支える事業者である。特定非営利活動法人G-net、特定非営利活動法人大阪NPOセンター、特定非営利活動法人宝塚NPOセンター、特定非営利活動法人コムサロン21、そしてネイチャリング・プロジェクト。中間支援と呼ばれる役回りで、5者のうち4者が特定非営利活動法人、残る1者は名称に法人格の表記がない団体だった。

17年たって、事例はどの分野で増えているのか

55選が選ばれた前年、同じ省の研究会は国内の規模を推計している。経済産業省のソーシャルビジネス研究会が2008年にまとめた報告書は、市場規模を約2,400億円、事業者数を約8,000、雇用規模を約3万2千人と見積もり、事業者のうちNPO法人が約半数、株式会社と有限会社を合わせた営利法人が約2割だとしていた。

いま同じ規模を測る統計はないが、資金が動いた件数なら追える。日本政策金融公庫が2026年5月に公表した令和7年度の実績では、「社会的課題の解決を目的とする事業者」向けの融資が8,818件・710億円で、前年度比は件数105.3パーセント、金額121.0パーセントだった。事業者数の推計と融資件数は別のものを数えているので足し引きはできないが、桁がそろっている点は押さえておきたい。

分野の並びは55選の束とよく対応する。件数構成比では保健・医療又は福祉の増進が27.5パーセント、農山漁村又は中山間地域の振興が11.6パーセント、まちづくりの推進が8.8パーセント、観光の振興が8.5パーセント。二つめの束に相当する福祉が首位で、一つめの束に相当する地域と観光が続く形は、17年前の選定の偏りと同じ向きを示している。分野区分の全体像は内閣府の活動分野別統計で確かめられる。

担い手の側も動いている。同じ8,818件を年代別に見ると40代が2,901件で最多、30代以下が2,631件、60代以上が1,419件で前年度比112.8パーセントと伸びが大きい。創業前または創業後1年以内への融資は18,032件中6,577件、割合は36.5パーセントで、三割台半ばが続いている。

地域の課題を事業にした人の話や相談先はFLASPOにも集まっている。事例を探す段階では、まず自分の企画が四つの型のどれに入るかを決め、同じ型の中から規模の近い先例を選ぶと、比較の軸がぶれない。移住や協力隊から事業を起こす筋道は地域おこし協力隊の起業支援で扱った。

よくある質問

17年前の事例集を、いま参考にしてよいのでしょうか。選定された個々の事業の現況は変わっている可能性がありますが、型の分布は現在の融資実績の分野構成比ともおおむね対応しています。枠組みを借りる目的なら使えます。

55選に選ばれた事業者の詳しい内容はどこで読めますか。経済産業省の公式ページに、事業者ごとのPDFが一件ずつ掲載されています。四つの束ごとにまとめた版も置かれています。

いま同じような公的な事例集はありますか。省庁や自治体の施策ごとに個別の事例集はありますが、分野横断で全国から公募して選抜した一覧は55選のあとに作られていません。そのため分類の軸としては、いまもこれが使われています。

事例を選ぶときに、法人格をそろえるべきですか。そろえる必要はありません。55選でも同じ型の中にNPO法人と株式会社が混在しています。参考にするなら、器よりも対価を誰が払っているかをそろえたほうが収支の比較になります。

先に言葉の輪郭を確かめたい場合は、ソーシャルビジネスの定義を読むと、社会性・事業性・革新性の三要件から事例を評価する手がかりが得られます。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。