語られる量に比べて、20代の人数は多くない
若い世代は会社に縛られず自由に働く、という語り口はもう珍しくない。学生がSNSで案件を受け、新卒数年で独立する例も目にする。ただ、その印象がどのくらいの人数に支えられているのかを数えた資料は、長らく見当たらなかった。
総務省の就業構造基本調査が2022年調査で初めてこの働き方を把握し、同省は統計Today No.197としてその結果を公表した。それによれば、有業者のうち本業がフリーランスの数は209万人で、有業者に占める割合は3.1%である。年齢階級別に実数を見ると、最も多いのは45歳から49歳の24.5万人、次が50歳から54歳の24.4万人だった。
20歳から24歳で本業がフリーランスの人は3万1千人、25歳から29歳は7万6千5百人である。合わせて10万8千人ほどで、本業がフリーランスの全体に対する比率は5%あまりにすぎない。一方で75歳以上は17万7千人を超える。年齢が上がるほど比率が高くなる構造になっていて、若者が主役という像とはかなり違う。
年齢階級ごとに並べると、傾きがはっきり出る
同じ資料の集計から、若い層と高い層を抜き出して並べると次のようになる。フリーランス総数には本業と副業の両方が含まれ、うち本業の列は本業のみと本業かつ副業を合わせた数である。
| 年齢階級 | 有業者数(人) | フリーランス総数(人) | うち本業(人) | 有業者に占める本業の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 4,288,700 | 46,400 | 31,400 | 0.7% |
| 25〜29歳 | 5,565,700 | 112,000 | 76,500 | 1.4% |
| 30〜34歳 | 5,547,400 | 164,500 | 118,400 | 2.1% |
| 35〜39歳 | 6,186,500 | 234,500 | 171,400 | 2.8% |
| 65〜69歳 | 3,837,400 | 243,900 | 208,200 | 5.4% |
| 75歳以上 | 2,219,600 | 189,600 | 177,200 | 8.0% |
| 総数 | 67,060,400 | 2,574,000 | 2,093,700 | 3.1% |
有業者に占める本業の割合は、20歳から24歳で0.7%、25歳から29歳で1.4%にとどまる。同世代で働いている人のうち、百人に1人前後という計算になる。これが65歳から69歳では5.4%、75歳以上では8.0%まで上がる。
この傾きには理由がある。高齢層では、定年後に自分の技能を個人の立場で売り直す人や、家業を一人で続けている人が積み上がる。対して20代は、まず雇われて経験を積む段階にいる人が圧倒的に多い。つまり年齢とフリーランス比率の相関は、世代の志向というより職業人生の局面を映している。
若い世代ほど、本業ではなく副業の形で接している
人数の少なさだけを見て、若い世代とこの働き方の縁が薄いと結論するのは早い。内訳を見ると、関わり方の形が違っている。
20歳から24歳のフリーランス総数4万6千4百人のうち、副業のみフリーランスは1万4千9百人で、総数の32.1%に当たる。25歳から29歳は11万2千人のうち3万5千5百人で31.7%、30歳から34歳は28.0%である。これに対して全年齢では257万4千人のうち48万人、18.7%にとどまる。75歳以上では6.6%まで下がる。
若い世代は、仕事を辞めて独立するという形ではなく、雇われたまま片足を出す形でこの働き方に触れている。実際の資料も、副業のみフリーランスの割合が最も高いのは35歳から39歳で、次に65歳から69歳、40歳から44歳が続くと記している。女性では30歳から34歳、35歳から39歳、40歳から44歳の各階級が最も高い。
この構図は、キャリアの設計としては理にかなっている。収入の基盤を保ったまま、値付けと納品と請求の一連を小さく試せる。失敗の代償が小さい段階で経験を積めるのは、独立を後ろに置ける若さの利点である。
選んだ理由は、35歳のあたりで入れ替わる
なぜその働き方を選んだのかを、同じ調査は主な理由として尋ねている。全体では専門的な技能等を生かせるからが32.5%で首位、自分の都合のよい時間に働きたいからが29.5%で続く。ところが年齢で切ると、この二つの順位が入れ替わる地点がある。
| 年齢階級 | 自分の都合のよい時間に働きたいから | 専門的な技能等を生かせるから | 正規の職員・従業員の仕事がないから |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 46.0% | 18.3% | 10.3% |
| 25〜29歳 | 43.7% | 29.3% | 1.5% |
| 30〜34歳 | 41.9% | 26.3% | 1.1% |
| 35〜39歳 | 33.7% | 33.4% | 2.4% |
| 55〜59歳 | 23.8% | 36.5% | 5.1% |
| 総数 | 29.5% | 32.5% | 3.5% |
20歳から24歳では時間の都合が46.0%と半分近くを占め、専門的な技能は18.3%にとどまる。25歳から29歳では43.7%と29.3%、30歳から34歳では41.9%と26.3%。差が詰まるのが35歳から39歳で、33.7%と33.4%とほぼ並ぶ。55歳から59歳になると技能のほうが36.5%で、時間の23.8%を大きく上回る。
資料本文も、男性については34歳以下では時間の都合、35歳以上74歳以下では専門的な技能が最も高いと整理している。売るものが時間の裁量から技能そのものへ移っていく過程が、この数字に表れていると読める。若いうちに独立する人は、まだ技能を売り物にしきれていない段階で、働き方の自由度を先に手にしているということでもある。
20代前半だけ、不本意な理由が3倍に跳ねる
もうひとつ、この表で目を引く列がある。正規の職員・従業員の仕事がないからという理由の比率だ。全年齢では3.5%と低く、資料も不本意な理由の割合は低くなっていると述べている。
ところが20歳から24歳では10.3%で、全体の約3倍に当たる。性別で分けると差はさらに開き、同じ階級の男性が6.7%、女性が15.6%である。25歳から29歳では1.5%まで下がるので、この跳ね上がりは20代前半に限った現象といえる。
ここから言えるのは、若い世代のフリーランスを一つの塊として扱えないということである。働き方を選び取った層と、雇用の入口でつまずいた結果としてこの形になった層が、同じ年齢階級の中に混ざっている。前者には制度の知識が効くが、後者に必要なのはそれだけではない。
数としては20歳から24歳の本業フリーランス3万1千4百人の1割なので、3千人規模である。小さいが、全年齢平均の3.5%を眺めているだけでは見えない。
若いうちに独立するなら、先に固めるべきもの
制度の側は、この数年でかなり動いた。2024年11月1日に施行された特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律は、従業員を使用しない個人に業務委託をする事業者に対して、給付の内容と報酬の額と支払期日その他の事項を書面または電磁的方法で直ちに明示する義務を課している。報酬の支払期日は、給付を受領した日から起算して60日の期間内で、かつできる限り短い期間内に定めなければならない。
経験が浅い時期こそ、この規定は使い勝手がよい。相手の提示を飲むしかないと感じる場面でも、明示を求めることは法が前提にしている行為である。年齢や実績の差は、ここでは関係しない。
収入の見通しも先に持っておきたい。内閣官房新しい資本主義実現会議事務局などが2022年8月に実施した令和4年度フリーランス実態調査結果では、直近1年間の所得が100万円未満の人が14.1%、100万円から200万円未満が12.6%、200万円から300万円未満が12.7%だった。副業として始めて基盤を残しておく判断が、統計の分布からも支持される。
職種ごとの入り方はプログラミングでフリーランスになる方法やデザインで独立する場合の始め方、動画編集で独立して働く方法にまとめてある。学生や20代が最初の一歩を踏み出す場面での相談は、FLASPOでも受け付けている。
よくある質問
20代でフリーランスになるのは早すぎますか
統計は早いか遅いかを決めてくれませんが、20代前半で本業にしている人は同世代の有業者の0.7%と少数です。しかもその層では働く時間の都合が理由の46.0%を占め、専門的な技能は18.3%にとどまります。売るものが固まる前に独立すると、時間の自由と引き換えに単価が伸びにくくなるという構造は意識しておくほうがよいでしょう。
まず副業から始めるのが安全という理解でよいですか
同世代の実態はそれに近い形です。20歳から24歳のフリーランスのうち32.1%が副業のみで、全年齢の18.7%より大きく上回ります。収入の基盤を残したまま値付けと請求を試せるため、失敗の代償が小さいうちに経験を積めます。
学生のうちに案件を受ける場合も、法律の保護はありますか
対象は従業員を使用しない個人の事業者で、学生であることを除く規定はありません。取引条件の明示義務と支払期日の規定は単発の案件にも及びます。一方で禁止行為や解除の予告は政令で定める期間以上続く業務委託に限られるため、短い案件では明示と支払期日が主な拠りどころになります。
正社員の仕事が見つからずフリーランスになるのは、避けるべきですか
20歳から24歳では理由としてこれを挙げた人が10.3%おり、全年齢の3.5%より明らかに高いので、珍しい選択ではありません。ただし働き方を選び取った場合と動機が違うため、単価や取引先の数を自分で設計する負担は同じようにかかります。雇用に戻る選択を閉じないよう、職務の記録を残しておくことが現実的な備えになります。
年齢が上がるほどフリーランスの割合が高いのは、なぜですか
定年後に技能を個人の立場で売り直す人や、一人で家業を続けている人が高齢層に積み上がるためです。75歳以上では有業者の8.0%が本業としており、20代前半の0.7%と1桁違います。年齢とこの働き方の関係は、世代ごとの価値観というより職業人生のどの局面にいるかを映した数字と見るほうが近いでしょう。
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