月額ゼロの店は、どこで費用を払っているのか
商品の写真と値段を入れるだけで、お金をかけずに店の形ができる。STORESのフリープランは月額が0円で、契約の期間も縛られない。初めてネットで売る人にとって、ここが入り口になりやすい。
ただし無料という言葉が指しているのは月額のことだけだ。代金を受け取るたびに決済手数料が引かれる形で、費用は売上のほうから回収される。フリープランの決済手数料は5.5%から、月額3,300円のスタンダードプランでは3.6%からと公表されている。差は1.9ポイントある。
この設計は、売上が小さいうちは無料のほうが得で、ある金額を超えると月額を払うほうが総額で安くなることを意味している。折り返し地点は計算で出る。自分の店が今どちら側にいるのかを知らないまま使い続けると、気づかない形で負担が増えていく。
二つのプランを、月額と率の両方で見比べる
STORESが公表している料金は次のとおりである。スタンダードプランの月額は契約の仕方で変わり、一年単位の契約だと月あたりの負担が下がる。決済手数料に幅があるのは、使う決済手段によって率が違うためだ。
| 項目 | フリープラン | スタンダードプラン |
|---|---|---|
| 月額(年間契約) | 0円 | 3,300円 |
| 月額(月額契約) | 0円 | 3,960円 |
| 決済手数料(基本) | 5.5%〜 | 3.6%〜 |
| 一部の決済手段 | 6.5% | 4.6% |
| 振込手数料 | 275円 | 275円 |
| 独自ドメイン | 使えない | 使える |
率が上がる決済手段として、STORESの料金ページはPayPal、Paidyあと払い、atone、楽天ペイ、PayPay残高、Amazon Pay、キャリア決済を挙げている。これらを使うとフリープランで6.5%、スタンダードプランで4.6%になる。後払いやスマートフォンの決済を揃えたい店では、こちらの率で考えておくほうが実態に近い。
月の売上が150万円を超える規模になると、2.9%からの個別の料率が用意されているとも示されている。ここまで来ると料率の交渉が意味を持つ段階ということでもある。
入れ替わるのは、月の売上が17万円あたり
どこで乗り換えると得になるのかは、月額の差を率の差で割れば出てくる。年間契約のスタンダードプランの月額3,300円を、1.9ポイントの差で割ると約173,000円になる。月の売上がこれを超えたあたりから、月額を払う形のほうが総額で安くなる。
月額契約の3,960円で計算すると、折り返しは約208,000円まで上がる。一部の決済手段を使った場合でも率の差は1.9ポイントで変わらないので、同じ目安が使える。覚えておくなら、年間契約なら月商17万円、月額契約なら21万円という二つの数字で足りる。
月の売上ごとに、基本の率で負担を並べると差が見やすい。フリープランは5.5%、スタンダードプランは3.6%に年間契約の月額3,300円を足した金額で計算した。
| 月の売上 | フリープラン | スタンダードプラン | 差 |
|---|---|---|---|
| 5万円 | 2,750円 | 5,100円 | フリーが2,350円安い |
| 10万円 | 5,500円 | 6,900円 | フリーが1,400円安い |
| 17万円 | 9,350円 | 9,420円 | ほぼ同じ |
| 30万円 | 16,500円 | 14,100円 | スタンダードが2,400円安い |
| 50万円 | 27,500円 | 21,300円 | スタンダードが6,200円安い |
| 100万円 | 55,000円 | 39,300円 | スタンダードが15,700円安い |
表の下のほうを見ると、売上が増えるにつれて差が広がっていくことがわかる。月商100万円の店がフリープランを使い続けると、年間で19万円ほど多く払う計算になる。無料のまま育ってしまった店は、ここで一度見直す価値がある。
注意したいのは、この計算が決済手数料だけを見ている点だ。独自ドメインを使いたい、実店舗の決済も揃えたいといった事情があれば、金額の損得より先にそちらの必要が決め手になる。
入金は翌月末で、1万円に届かない月は繰り越される
手数料とは別に、お金が手元に入るまでの時間も把握しておきたい。STORESの入金は月末締めで、翌月末に振り込まれる。たとえば4月に売れた代金は5月の末に入る形で、仕入れの支払いが先に来る商材だと、この一か月のずれが資金繰りに響く。
もうひとつの条件が金額だ。入金は売上が10,000円以上になった月に行われ、届かなければ次の月へ繰り越される。振込手数料は275円で、プランによる差はない。
この275円は、売上が小さいうちは率として重い。ちょうど10,000円で入金されるなら275円は売上の2.75%にあたり、決済手数料の5.5%に上乗せされて実質8%を超える。売上が10万円になれば0.275%まで薄まる。表に出ている率だけでなく、固定額の費用が売上に対して何%になるかを見ると、小さな店の負担の形が見えてくる。
入金を早める仕組みも用意されている。前倒しで受け取る場合は振込手数料275円に加えて、スタンダードプランで1.5%、フリープランで3.5%が引かれる。急ぎの仕入れに充てるなら使える手だが、常用すると率の負担が積み上がる。
実店舗を持っているかどうかで、価値の出方が変わる
STORESの料金ページを読むと、月額の中に含まれているものがネットショップだけではないことに気づく。予約システム、キャッシュレス決済、POSレジ、持ち帰り向けのモバイルオーダー、データの分析が追加料金なしで使える形になっていて、スタンダードプランには店舗ごとに決済端末1台の無料提供も付く。
つまり実店舗を持っていて、店頭の決済や予約の仕組みも同時に整えたい事業者にとっては、月額3,300円の意味が変わる。ネットショップ単体で損得を計算すると17万円の線になるが、店頭の仕組みを別に契約する手間と費用を考えれば、もっと早い段階で引き合う。
逆にネットだけで売るなら、比べる相手は同じ無料枠を持つサービスになる。BASEの仕組みを扱った記事と並べて読むと、月額をゼロに抑えて率で回収する設計が国内で共通していることがわかる。売り場そのものの選び方はモールと自社サイトの違いを比べた記事で扱っている。
規模感の材料としては、経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査が示す2024年の国内の消費者向け電子商取引26.1兆円という推計がある。市場は伸びているが、個々の店の手残りを決めるのは率と固定費の組み合わせだ。地域の事業者と販路を考える取り組みはFLASPOでも進めている。
よくある質問
フリープランのままで、ずっと使い続けられるのか。使い続けられる。契約の期間に縛りはなく、売上が増えてからスタンダードへ移る形でも不利にならない。移る目安は月の売上が17万円あたりだ。
独自ドメインはフリープランでも使えるか。使えない。自分で取ったドメインで店を見せたい場合は、スタンダードプランが必要になる。検索からの流入を長く育てたいなら、早めに移しておくほうが後の移行が軽くなる。
決済手数料の幅は、何で決まるのか。使われた決済手段で決まる。カードなどの基本の率と、後払いやスマートフォンの決済に適用される高い率の二段になっている。どの手段がよく使われるかは客層で変わるため、開店後に実績を見て計算し直したい。
売上が1万円に届かない月は、代金はどうなるのか。その月は振り込まれず、翌月以降に繰り越される。少額の売上が続く時期は、入金のタイミングを前提に仕入れの支払いを組む必要がある。
実店舗を持っていない場合でも、月額を払う意味はあるか。ネットだけで売るなら、判断は売上の大きさで決まる。月商が17万円に届かない時期に月額を払う理由は、独自ドメインを使いたいという一点にほぼ絞られる。
乗り換えの手続きは、途中で止まらないか。プランの変更そのものは設定の切り替えで済み、商品の登録や注文の履歴は引き継がれる。ただし年間契約は一年単位の支払いになるため、季節で売上が大きく動く商材では、年間の合計で損得を見てから決めたい。
開業の届出や表示の準備は、どこまで要るのか。サービスが無料でも、通信販売としての表示義務や税務の届出は同じようにかかる。この部分はネットショップの始め方をまとめた記事が順を追って扱っている。
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