貯金の中央値は1,264万円|平均2,059万円との差はどこから来るか

貯金の中央値は1,264万円|平均2,059万円との差はどこから来るか

平均と中央値で800万円近く違う

貯蓄の全国平均が2,000万円を超えたという見出しを読んで、自分の口座残高と並べて落ち込む人がいる。並べる相手が間違っているだけである。平均値は少数の大きな金額に引っ張られるため、真ん中の世帯を表す数字にはならない。

二人以上の世帯の2025年平均を見ると、1世帯当たりの貯蓄現在高は2,059万円で7年連続の増加だった。一方、貯蓄を保有する世帯を金額の少ない順に並べた中央値は1,264万円である。差は795万円で、平均は中央値の1.6倍の水準にある(総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果の概要」)。

貯蓄がゼロの世帯も含めて計算した中央値は、参考値として1,167万円が示されている。前年の中央値は1,189万円だったので、1年で75万円ほど上がった計算になる。

平均値を下回る世帯の割合も公表されている。2,059万円に届かない世帯は66.1%で、およそ3分の2が平均未満という分布である。前年は67.0%だった。平均を基準に自分の位置を測ると、3世帯に2世帯が平均以下という結論にしかならない。

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5つに区切ると、どこで金額が跳ねるかが見える

分布の形を知るには、全世帯を貯蓄の少ない順に5等分した区分が分かりやすい。同じ調査が五分位階級として集計している。

階級 貯蓄現在高の範囲 貯蓄現在高の平均 年間収入
第Ⅰ階級 285万円まで 102万円 541万円
第Ⅱ階級 285万〜813万円 534万円 632万円
第Ⅲ階級 813万〜1,652万円 1,193万円 689万円
第Ⅳ階級 1,652万〜3,259万円 2,353万円 725万円
第Ⅴ階級 3,259万円以上 6,113万円 817万円

第Ⅰ階級の102万円と第Ⅴ階級の6,113万円では60倍の開きがある。ところが年間収入は541万円と817万円で1.5倍しか違わない。収入の差だけでは説明がつかない開きが、貯蓄の側にできているということである。

中身の構成も階級ごとに違う。第Ⅰ階級ではすぐ出し入れできる通貨性預貯金が57.8%を占め、有価証券は6.9%にとどまる。第Ⅴ階級では通貨性預貯金が31.0%に下がり、有価証券が27.0%まで上がる。金額が増えると置き場所が変わり、置き場所が変わると増え方も変わるという順序が見える。

年齢で切ると中身が入れ替わる

同じ調査を世帯主の年齢で区切ると、金額の並びは素直に上がっていく。2025年平均の貯蓄現在高は、40歳未満の世帯で994万円、40歳代で1,381万円、50歳代で1,756万円、60歳代で2,843万円、70歳以上で2,471万円だった。

注意すべきなのは負債のほうである。負債現在高は40歳未満が1,882万円で最も多く、年齢が上がるにつれて減っていく。40歳代は1,483万円、50歳代は743万円、60歳代は234万円、70歳以上は81万円である。住宅ローンを組んだ直後の世帯が、貯蓄より大きい負債を抱えている形になる。

貯蓄から負債を引いた純貯蓄額で見ると、50歳未満の各年齢階級はいずれも負債超過だった。50歳以上では貯蓄超過に転じ、60歳代の純貯蓄額が2,609万円で最も多い。40歳未満の世帯が平均より少なく見えるのは、貯めていないからではなく、先に家を買っているからという説明がつく。

負債保有世帯の割合も年齢で動く。40歳代が67.0%と最も高く、40歳以上では年齢が上がるほど下がっていく。自分の数字を比べるなら、同じ年齢階級の貯蓄と負債を一組で見るほうが実態に近い。

勤め人の世帯だけを取り出すと下がる

二人以上の世帯には、無職の世帯や個人営業の世帯も含まれる。退職金を受け取った後の高齢世帯が入ることで、全体の平均は押し上げられている。

勤労者世帯だけを取り出すと、貯蓄現在高の平均は1,717万円で、中央値は1,015万円になる。貯蓄がゼロの世帯を含めた参考値は964万円である。全体より平均で342万円、中央値で249万円低い水準になる。

年間収入との比で見ると差はさらに分かりやすい。貯蓄年収比は二人以上の世帯全体で302.3%、勤労者世帯では208.4%である。全体では年収の3倍の貯蓄があることになるが、働いて収入を得ている世帯では2倍程度にとどまる。年齢階級別では70歳以上の559.0%が最も高く、40歳未満は129.6%だった。

毎月の収支から見える動きも押さえておきたい。勤労者世帯の2025年平均では、可処分所得532,408円に対して黒字が186,111円、黒字率は35.0%だった。このうち預貯金の純増が177,061円である(総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」)。年単位に直せば、平均的な勤労者世帯は1年で200万円ほどを預貯金に積み増している。

自分の位置を測るときの線引き

比べる前に、その数字が何を数えたものかを確かめておくと誤差が減る。中央値として公表されているのは、貯蓄現在高がゼロの世帯を除いて並べたときの真ん中の値である。ゼロを含めた値は参考値として別に示されている。

調査の対象も限定されている。この結果は二人以上の世帯を集計したもので、単身世帯の金額はここには入っていない。一人暮らしの人が1,264万円と自分を比べるのは、前提が合わない比較になる。集計の範囲は総務省統計局「家計調査(貯蓄・負債編)」の公表資料で確認できる。

貯蓄の定義も生活実感とは少しずれる。ここでいう貯蓄には、普通預金や定期預金のほかに、生命保険などの掛金の払込額と有価証券が含まれる。平均2,059万円の内訳は、通貨性預貯金710万円、定期性預貯金511万円、生命保険など369万円、有価証券440万円である。すぐ使える現金だけを指しているわけではない。

そのうえで目安を1つ持つなら、金額より年収に対する比率のほうが扱いやすい。手取りが増えれば貯蓄も増えるため、絶対額は年齢と収入で動く。生活費の規模から逆算する考え方は生活費の内訳から削る順番を整理した記事でも使っている。地域を移して暮らしの固定費ごと組み替える選択肢は、FLASPOが扱う地域と仕事の情報が材料になる。

よくある質問

なぜ平均値と中央値で800万円近い差が出るのか。分布が少ない側に偏っているためである。第Ⅴ階級の平均が6,113万円に達する一方、第Ⅰ階級は102万円で、上の階級の金額が平均を引き上げている。真ん中の世帯を知りたいときは中央値を見るほうが適切である。

20代や30代の中央値はどこで分かるか。公表資料の年齢階級別は平均値での集計で、40歳未満という区分にまとめられている。40歳未満の平均は994万円だが、負債が1,882万円あるため、金額だけを取り出して自分と比べると判断を誤りやすい。

単身世帯の数字はないのか。概要として公表されているのは二人以上の世帯である。単身世帯を含む集計は政府統計の総合窓口で提供されている詳細表に当たる必要がある。

負債が貯蓄を上回っていると危ないのか。50歳未満の各年齢階級では平均で負債超過になっている。住宅ローンのように返済計画が立っている負債と、返済期間が決まっていない借入は性質が違うため、合計額ではなく毎月の返済額が手取りに占める割合で見るほうがよい。

目標額はどう決めればよいか。他人の金額を目標にすると根拠がない数字になる。使う時期が決まっている支出は必要額を年数で割り、時期が決まっていない分は生活費の何か月分かで置く。値動きのある資産を混ぜる場合の考え方は投資のリスクを種類ごとに整理した記事にまとめてある。


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