ネットショップの始め方|開業届と表示義務から順に整える

ネットショップの始め方|開業届と表示義務から順に整える

店を作る前に決めておくことが三つある

無料のサービスを使えば、商品の写真と値段を入れるだけで半日で店の形はできる。それでも開店後に止まってしまう例が多いのは、作る手前の判断を飛ばしているからだ。止まる原因は、売る物の選び方、届出と許可、表示の不備の三つにだいたい収まる。

この三つはいずれも後から直すと痛い。売る物を決めてから許可が必要だと気づけば、仕入れた在庫が動かせない。表示を欠いたまま売れば、返品の条件をめぐって買い手との話が食い違う。店の画面を整えるのは最後でよく、順番としては売る物、手続き、表示、そのあとに店作りが来る。

もう一つ押さえておきたいのは、ネットでの販売が法律上は通信販売にあたることだ。消費者庁は通信販売を、新聞や雑誌、インターネットなどで広告し、郵便や電話、インターネットといった通信手段で申込みを受ける取引と定めている。個人であっても、営利の意思を持って反復継続して取引するなら販売業者として扱われる。趣味の延長という自己認識は、この判断には影響しない。

開設そのものの作業を先に眺めておきたい場合は、BASEでネットショップを作る記事が手順を追っている。

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売る物は、分野ごとの電子化の進み方から逆算できる

好きな物を売ればよいという助言は間違っていないが、分野によって買い手がネットで買う習慣の強さが大きく違う。経済産業省の調査が公表している分野別の数字を見ると、その差が一目で分かる。

令和6年度電子商取引に関する市場調査によれば、2024年の国内のBtoC-EC市場規模は26.1兆円で前年比5.1パーセント増、全取引に占める割合であるEC化率は9.8パーセントだった。物販の内訳を分野ごとに割ると、同じ市場でもEC化率は2パーセント台から56パーセント台まで開いている。

分野 市場規模(2024年) EC化率
書籍、映像・音楽ソフト 1兆8,708億円 56.45%
生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 2兆7,443億円 43.03%
生活雑貨、家具、インテリア 2兆5,616億円 32.58%
衣類・服装雑貨等 2兆7,980億円 23.38%
化粧品、医薬品 1兆150億円 8.82%
食品、飲料、酒類 3兆1,163億円 4.52%
自動車、自動二輪車、パーツ等 3,336億円 4.16%
物販系分野の合計 15兆2,194億円 9.78%

この表は二通りに読める。EC化率が高い分野は買い手が既にネットで買い慣れているので説明の手間が少ない代わり、価格の比較もされやすい。低い分野は競争相手が少ない代わり、ネットで買う理由を自分で作らなければならない。食品は市場規模が3兆1,163億円で物販のなかで最も大きいのに、EC化率は4.52パーセントにとどまる。店頭で選ぶ習慣が残っている分野であり、だからこそ説明と信頼の作り込みが効く。

どちらを選ぶにしても、商品の背景を語れるかどうかが分かれ目になる。生産者と組んで売る形の実例は特産品のEC販売を扱った記事と産地直送の仕組みを整理した記事で扱っている。

開店前に済ませる届出と、商材ごとに要る許可

手続きには、どの店でも共通のものと、扱う物によって追加されるものがある。共通するのは税務署への届出で、追加されるのは許可や免許だ。

個人で始める場合は、事業を始めたことを税務署に知らせる。国税庁の個人事業の開業届出・廃業届出等手続によると、新たに事業所得などを生ずべき事業を開始した人が対象で、提出時期は事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までとされている。あわせて青色申告の承認申請をしておくと、記帳の手間と引き換えに控除の扱いが変わる。e-Taxでも書面でも提出できる。

商材によって上乗せされる手続きは次のとおりだ。中古品を仕入れて売るなら古物営業法の許可が要り、取引に使うサイトのURLも公安委員会に届け出る。自分で調理や加工をした食品を売るなら食品衛生法の許可か届出が必要で、許可を受ける業種と、届出だけで足りる業種に分かれている。詳細は厚生労働省の食品の情報で確認できる。酒類を売るなら通信販売酒類小売業免許という別の免許が必要になる。

いずれも申請してから許可が下りるまでに日数を要するため、在庫を仕入れる前に着手する順番が正しい。許可が下りる前に販売を始めてしまうと、売上を止めて申請をやり直す事態になる。

表示の不備は、売り始めてからでは直しにくい

通信販売には、広告に何を書くかが法律で定められている。画面の見栄えとは別の話で、ここを欠いていると行政の指導の対象になるだけでなく、返品をめぐる言い合いの種になる。

消費者庁の特定商取引法ガイドの通信販売の項は、特定商取引法第11条が定める広告の表示事項を挙げている。販売価格は送料も含めて示すこと、代金の支払時期と方法、商品の引渡時期、申込期間の定めがあるときはその内容、申込みの撤回または解除に関する事項、そして事業者の氏名と住所と電話番号。法人が電子的な方法で広告する場合は代表者または通信販売の業務責任者の氏名も求められる。

インターネット通販では、申込みの最終確認画面にも表示が必要になる。第12条の6が定める項目は、分量、送料を含む販売価格、支払の時期と方法、引渡時期、申込期間の定めがあるときはその旨と内容、申込みの撤回または解除に関する事項の六つだ。返品特約を設けているなら、返品の可否と期間の条件、送料をどちらが負担するかまで書く。この返品に関する事項は、広告スペースの都合による省略が認められていない項目に入っている。

広告のメールにも制約がある。消費者があらかじめ承諾しない限り電子メール広告を送ることは原則禁止で、承諾を得た記録は最後に送った日から3年間保存する。注文確認や発送通知に付随する広告は規制の対象外なので、告知を混ぜたいならそちらに寄せるほうが無理がない。

開けたあとの運転は、集客と在庫と入金の三つで回る

店ができて最初の注文が入ると、作業の中身が変わる。設計から運転へ切り替わり、毎日判断することが三つに絞られてくる。

一つ目は人を連れてくる経路だ。出店型のプラットフォームを使えば、そこを見に来ている人の流れを借りられる代わりに、成約額の一定割合が手数料として引かれる。自分の店として独立させれば手数料は下がるが、人を連れてくる仕事はすべて自分の側に残る。両方を併用して、入口を広げながら利益率の高い経路へ誘導する形が現実的だ。

二つ目は在庫の持ち方である。先に仕入れると欠品は防げるが現金が寝る。受注を受けてから仕入れると現金は寝ないが、引渡時期を遅く設定しなければならず、その時期は広告に書く義務がある。どちらを選ぶかは表示の内容に跳ね返るので、在庫の方針と表示文はセットで決める。

三つ目は入金の時期だ。代金を先に受け取る前払式では、代金を受け取ったあと商品の引渡しに時間がかかるとき、申込みを承諾したかどうかなどを記載した書面を渡す義務がある。ここでいう遅滞なくは取引の実態から見て1週間程度とされている。前払いで現金を前に寄せる利点は大きいが、義務も一つ増える。地域の産品を扱う取り組みの事例はFLASPOでも紹介している。

よくある質問

個人の副業でも開業届は要るのでしょうか。
事業として反復継続して販売するなら対象になる。所得の区分や金額によって扱いが変わる部分があるため、迷う場合は所轄の税務署に確認するのが早い。届出を出すこと自体に費用はかからない。

自宅の住所と電話番号を公開したくない場合はどうすればよいでしょうか。
事業者の住所と電話番号は広告の表示事項に含まれるため、記載を省く方向では解決しない。レンタルオフィスなど事業用の所在地を用意する、転送の番号を取得するといった形で、公開できる連絡先をそろえるほうが筋が通る。

返品を受け付けない方針にしてもよいのでしょうか。
返品を受け付けない旨を返品特約として広告と最終確認画面に表示していれば、その特約が優先される。表示していなければ、買い手は商品を受け取った日から8日間は自分の費用で返品できる扱いになる。書くか書かないかで結論が変わる部分なので、方針を決めて必ず明記したい。

プラットフォームに出すのと独立した店を持つのは、どちらを先にすべきでしょうか。
売れるかどうかが読めない段階では、人の流れを借りられる出店型から試すほうが検証が速い。手数料は検証の費用と考える。注文が安定して読めるようになってから、独立した店へ主軸を移す順番がおさまりがよい。

売れ始めたら法人にしたほうがよいのでしょうか。
判断材料は利益の額と、取引先が法人格を求めるかどうかにある。ネット販売では買い手が個人であることが多く、法人格を求められる場面は限られる。税負担の分岐点は状況で変わるので、数字を持って税理士に相談する段階に入ったと考えるのが実際的だ。


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