「ボランティアをやってみたい」と口に出したあと、たいていの人が止まるのは次の一歩である。清掃活動も学習支援も災害支援も同じ言葉で呼ばれるので、どこを向いて探せばいいのか見当がつかない。実は国の統計には、対象と目的で区切った分類がすでに用意されている。その枠組みを知っておくと、募集情報を眺めたときに「これは自分の話かどうか」が一読で判断できるようになる。
国の調査は対象と目的で11種類に分けている
総務省統計局が5年ごとに実施する社会生活基本調査では、報酬を目的とせず自分の労力や技術、時間を提供して地域社会や個人・団体の福祉増進のために行う活動をボランティア活動と定義している。そのうえで、対象や目的によって11種類に分けて参加状況を集計している。健康や医療サービス、高齢者、障害者、子供、スポーツ・文化・芸術・学術、まちづくり、安全な生活、自然や環境、災害、国際協力、そしてその他である。
この区切り方の利点は、活動の中身ではなく「誰のため、何のため」で線を引いているところにある。たとえば公園の花壇づくりと商店街のイベント運営は作業としてまるで違うが、どちらもまちづくりのための活動に入る。逆に、同じ子どもと関わる活動でも、学校行事の手伝いは子供を対象とした活動、スポーツを教えることはスポーツ・文化・芸術・学術に関係した活動として扱われる。募集要項の見出しが曖昧でも、この問いに戻れば整理できる。
分野ごとの参加率には9倍の開きがある
同じ11分類でも、人が集まっている分野とそうでない分野の差は大きい。2021年の調査で10歳以上の行動者率を分野別に並べると、最も高いまちづくりのための活動が7.4%、最も低い災害に関係した活動と国際協力に関係した活動がそれぞれ0.8%だった。上と下で9倍以上の開きがある。全体の行動者率は17.8%、人数にして2,005万6千人である。
| 分野(11分類のうち10分野) | 2021年 | 2016年 |
|---|---|---|
| まちづくりのための活動 | 7.4% | 11.3% |
| 子供を対象とした活動 | 4.6% | 8.4% |
| 安全な生活のための活動 | 3.1% | 5.0% |
| 自然や環境を守るための活動 | 3.0% | 4.0% |
| スポーツ・文化・芸術・学術に関係した活動 | 2.8% | 3.7% |
| 高齢者を対象とした活動 | 2.4% | 3.8% |
| 健康や医療サービスに関係した活動 | 2.1% | 2.9% |
| 障害者を対象とした活動 | 0.9% | 1.5% |
| 災害に関係した活動 | 0.8% | 1.5% |
| 国際協力に関係した活動 | 0.8% | 0.9% |
出典は総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」で、数値は10歳以上の行動者率。11分類のうち「その他」は分野別の集計から外してある。表を縦に見ると、2016年から2021年にかけてすべての分野が下がっていることもわかる。感染症の流行で対面の活動が止まった時期を含むため、ここは水準より順位の並びを読むほうが実態に近い。
順位そのものには理由がある。まちづくりが頭一つ抜けているのは、町内会や自治会の清掃が地域の年間行事として組み込まれていて、個人が探さなくても案内が回ってくるからだ。子供を対象とした活動が二番目に来るのも、保護者という立場が入口になる。一方で国際協力や障害者を対象とした活動は、語学や手話といった前提の技能を求められる場面があり、入口の幅がそのまま参加率に出ている。数字の低い分野は人気がないのではなく、たどり着くまでの道が細いだけだと読むほうが実態に合う。
期間で見ると続ける型と駆けつける型に分かれる
分野の名前だけでは見えない違いがもう一つある。活動が年単位で続くものか、必要なときだけ立ち上がるものか、という時間の形である。まちづくりや高齢者を対象とした活動は、月に一度の清掃や週に一度の見守りのように、同じ顔ぶれで積み上げていく性格が強い。対して災害に関係した活動は、起きた場所と時期に人が集中する。
その集中はデータにも出る。災害に関係した活動の行動者率は、東日本大震災が発生した2011年に3.8%まで上がり、2021年には0.8%まで下がっている。都道府県別に見ると2021年は熊本県が2.5%で最も高く、佐賀県1.8%、長野県1.4%と続く。いずれも直前に大きな水害や地震を経験した地域である。つまりこの分野は「いつ参加するか」を自分で決めにくい。初めての一歩として選ぶなら、日程が先に決まっている分野のほうが見通しが立つ。
担い手の総数は16万団体・614万人
分野を決めたあとに知りたくなるのは、受け入れ先の規模だろう。全国社会福祉協議会の全国ボランティア・市民活動振興センターは、全国の社会福祉協議会が把握している団体数と人数を定期的に集計している。2025年4月現在の数字は、団体数が168,231団体、団体に所属する人が5,401,977人、個人で活動する人が739,113人で、合計6,141,090人である。
この数字は社会福祉協議会の目に入っている範囲に限られるため、企業の社会貢献活動や大学のサークル、オンラインだけで完結する活動は十分に拾えていない。それでも16万を超える団体が登録されている事実は、分野を一つ決めれば近所に受け入れ先がある可能性が高いことを示している。学生の団体活動として組み立て直す発想は学生団体の活動内容例に、地域側から見た受け皿の作り方は地域コミュニティの作り方にまとめてある。
自分に合う分野は三つの問いで絞れる
11分野を前から順に検討すると、たいてい途中で疲れる。先に三つの問いを立てたほうが早い。一つ目は「誰と向き合いたいか」。子ども、高齢者、障害のある人、外国から来た人のどれに自分の関心が向くかで、対象別の4分野まで絞れる。二つ目は「現場に行くのか、場をつくるのか」。前者なら見守りや学習支援、後者ならイベント運営や広報の手伝いが近い。
三つ目は「どれくらいの頻度なら無理がないか」。月一回が限度なら清掃や配食、週一回とれるなら学習支援や施設での活動が候補になる。この三つを決めてから社会福祉協議会の窓口で相談すると、紹介される活動の数が一気に絞れる。なお、職業上の専門性を持ち込む形は一般のボランティアとは条件が違うので、プロボノとボランティアの違いも先に見ておくと迷いが減る。若者と地域をつなぐ事業に関心があるなら、FLASPOが各地の自治体と進めている企画型のプロジェクトも参照できる。
よくある質問
複数の分野をかけもちしてもよいか。問題ない。統計上も一人が複数の分野で回答できる形になっており、分野別の数値を足すと全体の17.8%を超える。ただし初回から二つ以上を同時に始めると、どちらの勝手もつかめないまま終わりやすい。
献血はボランティアに入るのか。入る。社会生活基本調査では健康や医療サービスに関係した活動の例として献血が明示されている。2021年のこの分野の行動者率は2.1%だった。
報酬や交通費が出る活動は名前が変わるのか。国の定義は報酬を目的としないことを条件にしているので、実費の交通費や弁当が支給されても分類は変わらない。一方、時間に対して賃金が払われる形になれば有償の仕事であり、この統計の対象から外れる。募集要項では「謝礼」「実費支給」「時給」のどの言葉が使われているかを確かめたい。
11分類に当てはまらない活動はどう扱われるのか。人権を守るための活動や平和のための活動は「その他」に集約されている。分類の外に置かれているのではなく、分野別の内訳として公表されていないだけだと考えておけばよい。
分野を途中で変えてもよいのか。構わない。社会福祉協議会への登録は分野ごとではなく個人単位なので、紹介し直してもらえば別の分野に移れる。一度やってみて合わないと感じたこと自体が、次の希望を伝えるときの材料になる。
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