ひな型を写した会則は、揉めたときに使えない
会則は、たいてい設立の直前に急いで作られる。検索で見つけたひな型の団体名を書き換え、全員の了解を取って終わる。そこまでは問題が起きない。困るのは一年後で、会費を払っていない人に票があるのか、役職の任期はいつ切れるのかを確かめようとしたときに、該当する条文が見つからない。
ひな型が悪いわけではない。写すときに、どの条文が何のためにあるのかを通さなかったことが原因である。順番と抜けのない一覧があれば、写す作業は数時間で終わり、しかも後で効く。
その一覧は、探さなくても法律の側に並んでいる。任意団体には適用されないが、何を書いておくべきかという問いへの答えとしては、これ以上のものがない。団体の形を選ぶ段の話は学生団体の作り方|任意団体のまま進むか法人格を取るかで決めるで整理した。
法律が書かなければならないと並べた14の項目
特定非営利活動促進法の第11条第1項は、特定非営利活動法人の定款には次に掲げる事項を記載しなければならないとして、14の項目を号で並べている。NPO法人を作る場合にはひとつでも欠けると認証が通らない、必要的記載事項と呼ばれるものである。
下の表は、その14項目を条文の順に置き、会則に移すときの置き場所と、その条文が抜けたときに実際に起きることを対にしたものである。四列目は、学生団体の運営で頻発する詰まりを当てている。
| 号 | 記載しなければならない事項 | 会則での置き場所 | 抜けると起きること |
|---|---|---|---|
| 一 | 目的 | 第1条(目的) | 何のための団体か答えられず、企画の採否の基準も立たない |
| 二 | 名称 | 第2条(名称) | 口座や契約の名義が揺れ、同じ団体だと示せない |
| 三 | その行う特定非営利活動の種類及び当該特定非営利活動に係る事業の種類 | 第3条(事業) | やらないことの線が引けず、依頼を断る根拠がなくなる |
| 四 | 主たる事務所及びその他の事務所の所在地 | 第4条(所在地) | 書類の送付先が定まらず、助成の申請で止まる |
| 五 | 社員の資格の得喪に関する事項 | 第5条から第7条(会員) | 誰が決定に加わるのか曖昧になり、票の数え方で揉める |
| 六 | 役員に関する事項 | 第8条から第12条(役員) | 任期と交代の手続きがなく、毎年引き継ぎが止まる |
| 七 | 会議に関する事項 | 第13条から第18条(会議) | 決定が成立したのかどうかを後から示せない |
| 八 | 資産に関する事項 | 第19条(資産) | 備品が個人の持ち物と区別できなくなる |
| 九 | 会計に関する事項 | 第20条から第22条(会計) | 帳簿の付け方が代替わりごとに変わる |
| 十 | 事業年度 | 第23条(事業年度) | 決算の区切りがなく、年度での比較ができない |
| 十一 | その他の事業を行う場合には、その種類その他当該その他の事業に関する事項 | 第24条(その他の事業) | 物販などの収益活動が本来の目的と混ざる |
| 十二 | 解散に関する事項 | 第25条から第26条(解散) | 活動が止まったとき、誰も終わらせられない |
| 十三 | 定款の変更に関する事項 | 第27条(会則の変更) | 会則を直す手続きがなく、実態と文面が離れる |
| 十四 | 公告の方法 | 第28条(公告) | 決まったことを知らせる手段が定まらない |
同条第2項は、設立当初の役員は定款で定めなければならないとも定めている。最初の役員を文面に書き入れるという作りで、これは学生団体でも真似する価値がある。発足時の名前が残っていれば、何年目の団体なのかを後から示せる。各項目の書き方に迷ったときは、所轄庁向けの定款に関するQ&Aに実例が載っている。
義務がないのに、同じ順で書く理由
任意団体の会則には、法律上の必要的記載事項は存在しない。一枚の紙に三行だけ書いても、それが会則である。それでも14項目の順で書くことには、三つの実利がある。
一つは、助成金や協賛の申請で求められる書類にそのまま使えることである。多くの募集要項は規約の写しを添付させ、目的、事業、会計、役員の規定を見る。項目が揃っていないと、追加の提出で締切に間に合わなくなる。
二つは、法人格を取る段で書き直す手間が消えることである。会則が14項目の順に並んでいれば、呼び名を社員総会や理事に置き換えるだけで定款の骨格になる。法人化の判断そのものは学生団体とNPOの違い|社員10人と20分野という法律上の線で比べた。
三つは、揉めたときに引く場所が決まっていることである。会費を払っていない人の票をどう扱うかは五号、役職の任期は六号、票の数え方は七号と、争点ごとに参照先が一つに決まる。条文の番号を言えるだけで、話が感情から手続きに戻る。制度の全体像はNPO法人の認証制度についてに説明がある。
最も効くのは、会員の規定と会議の規定
14項目のうち、学生団体で実際に働くのは五号と七号である。誰が決定に加わるのか、どうやって決まったことにするのか。この二つが書いてあれば、残りの不備は後から埋められる。
会議の書き方は、NPO法の規定をそのまま縮めると形になる。第14条の2は理事は少なくとも毎年一回通常社員総会を開かなければならないとし、第14条の4は招集の通知を会議の日より少なくとも五日前に、目的である事項を示して行うと定めている。学生団体なら、年に一度の総会と、五日前までの議題の通知、と二行書けばよい。
票の数え方にも参考になる規定がある。第14条の7は各社員の表決権は平等とし、出席しない社員は書面で、または代理人によって表決をすることができるとし、定款で定めるところにより電磁的方法による表決もできるとしている。オンラインでの議決を認めるかどうかを会則に書いておけば、集まれない時期に止まらない。
急いで決めたい場面の型もある。第14条の9は、理事または社員が提案をした場合に、社員の全員が書面または電磁的記録で同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する旨の決議があったものとみなすと定めている。全員の同意が条件なので乱用はできないが、書面での決議という形を会則に用意しておくと、会議を開けない週に手が止まらない。
解散と残余財産は、作るときに書く
十二号の解散に関する事項が、学生団体でいちばん後回しにされる。作る側からすれば終わりの話は考えにくい。それでも、書いておく価値は高い。活動が止まった団体が、口座に残った数万円と借りたままの備品を抱えて、誰も手を付けられない状態になることが実際に起きる。
書く内容は二つに絞れる。どういう状態になったら解散とみなすか、残ったお金と物をどうするか。前者は、総会で決議したとき、または構成員が一定数を下回ったときという形にする。後者は、次の代に引き継ぐのか、大学や寄付先に渡すのかを先に決めておく。
法人の側には、ここに厳しい制約がある。NPO法第11条第3項は、解散に関する事項の中に残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合、その者は特定非営利活動法人のほか、国または地方公共団体、公益社団法人または公益財団法人、私立学校法に規定する学校法人、社会福祉法に規定する社会福祉法人、更生保護事業法に規定する更生保護法人のうちから選定されるようにしなければならないと定めている。個人や営利企業には渡せないという設計である。
任意団体にこの制約はないが、考え方は借りておきたい。残ったお金が個人に流れる形を書いてしまうと、在籍者が増えたときに不信の種になる。外部の組織と継続して関わる団体なら、FLASPOのように地域と学生をつなぐ窓口を引き継ぎ先の候補に含めておくと、活動そのものを残す道も開ける。
よくある質問
会則の分量はどのくらいが適当か。14項目を一つずつ短く書けば、二千字から三千字で収まる。長くする必要はない。判断に迷ったとき引ける長さであることのほうが大事で、細かい運用は別の内部規程に分ける。
会則と規約は違うものか。呼び名の違いで、中身は同じである。法人の定款に当たるものを、任意団体では会則または規約と呼ぶ。申請書類で規約の写しを求められたら、会則を出して差し支えない。
作った会則はどこに出すのか。任意団体なら提出先はない。全員が読める場所に置き、改定の日付を残す。大学の公認団体であれば大学の規程に沿った提出が必要になる場合があり、その線は学生団体とサークルの違い|大学の公認という線はどこで効くかで扱った。
途中で会則を直したいときの手順はどうするか。十三号に当たる変更の規定を先に作っておく。総会の決議で変更できること、変更の案を何日前までに示すことの二点を書けば足りる。この規定がない会則は、直す手続きそのものから揉める。
会費を取らない団体でも会員の規定は必要か。必要である。会費の有無とは別に、誰が決定に加わるかを定める必要がある。参加の意思表示をした時点で会員とするのか、一定回数の活動参加を条件とするのかを書き分けておく。
顧問や協力者を会則に書くべきか。決定に加わらない人は、会員とは別の区分にする。協力者という条を一つ置き、票を持たないことを明記する。ここを曖昧にすると、票の数え方で後から争点になる。
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