OB・OG訪問の効果|辞めた理由の上位4つを採点表にして測る

OB・OG訪問の効果|辞めた理由の上位4つを採点表にして測る

「有意義でした」は成果の記録にならない

面談を終えた直後の満足感は、相手の話し方に左右される。話が面白かった社員の会社を高く評価し、口数の少なかった社員の会社を低く見る。これは先輩の資質を測っているだけで、会社の実態を測ったことにはならない。5社に会って5通のお礼を送っても、判断の材料が増えていないことは起こり得る。

測るには尺度が必要で、尺度は自分の感想の外から持ってくるしかない。先輩訪問の成果は、入社後に起きる不一致をいくつ減らせたかで決まる。だとすれば、実際に辞めた人が何を理由に挙げたかを先に知っておけば、採点の軸がそろう。会いに行く前に見るべき資料は、志望企業の採用ページではなく、離職の統計のほうだ。

厚生労働省は若年者雇用実態調査で、学校を出てから初めて勤務した会社をやめた理由を集計している。最新は令和5年調査で、令和6年9月25日に概況が公表された。ここに並ぶ理由の分布を、訪問で確かめられるかどうかで仕分ける。それが効果を測る最も手堅い手順になる。会う目的そのものの立て方はOB・OG訪問の目的|3年以内離職率33.8%と重視項目から考える確かめ方で整理した。

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辞めた理由の分布が、そのまま採点表になる

令和5年若年者雇用実態調査の概況によれば、初めて勤務した会社をやめた理由は、労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったが28.5%、人間関係がよくなかったが26.4%、賃金の条件がよくなかったが21.8%、仕事が自分に合わないが21.7%の順に並ぶ。3つまでの複数回答なので、上位4つは互いに排他ではない。

初めて勤務した会社をやめた理由 割合 求人票や説明会で分かる範囲 訪問でしか届かない範囲
労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった 28.5% 所定労働時間、休日数、休暇の制度 繁忙期の偏り、実際の取得のしやすさ
人間関係がよくなかった 26.4% ほぼ分からない 相談の持ち込み先、意見が通る場面の有無
賃金の条件がよくなかった 21.8% 初任給、手当、昇給の制度 評価が賃金に反映されるまでの期間
仕事が自分に合わない 21.7% 職種と事業内容 1日の時間配分、任される範囲の広がり方
令和5年若年者雇用実態調査の離職理由(3つまでの複数回答)と、確かめられる経路の対応

表の3列目と4列目を分けると、訪問の効果が置かれている場所が見える。制度は公開されているので、調べれば分かる。分からないのは、その制度が現場でどう使われているかだ。年間休日が125日と書かれていても、どの月にまとまって消えるかは書かれていない。有給休暇の付与日数は決まっていても、申請が通る空気があるかは決まっていない。

この仕分けをしておくと、質問の無駄が消える。3列目に収まる事柄を人に尋ねた分だけ、4列目に使える時間が減る。1時間の面談で聞けることは多くないので、配分の設計が結果を左右する。何を聞くかの枠組みはOB・OG訪問の質問|企業に答える義務がある12項目を下敷きにするに分解してある。

入社1年目に効くのは、人間関係のほうだった

同じ調査には、勤続期間で理由の順位が入れ替わるという結果が載っている。初めて勤務した会社での勤続期間が1年未満の層では、人間関係がよくなかったと答えた割合が最も高い。1年から10年未満の層では、労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったが最も高くなる。10年以上の層では再び人間関係が最も高く、次に労働時間・休日・休暇が続く。

この入れ替わりには実務上の意味がある。入って最初の1年を左右するのは、制度よりも周囲との関係だということだ。そして関係の実態は、求人票にも会社説明会にも出てこない。説明会で語られるのは制度と事業であり、誰に何をどう持ち込めるかという話にはならない。

つまり先輩訪問の固有の効果は、ここに集中している。聞き方は抽象的にしないほうがよい。雰囲気はどうですかと尋ねても、良いですという答えしか返らない。代わりに経路を聞く。配属されて最初の3か月、分からないことは誰に聞いていたか。自分の意見が通った場面と通らなかった場面を、それぞれ一つ思い出せるか。答えの具体性そのものが、関係の濃さを映している。

会社の側も、同じ場所を直そうとしている

定着は学生だけの関心事ではない。令和5年の調査では、若年正社員の定着のための対策を行っている事業所が73.7%、正社員以外の若年労働者について行っている事業所が60.1%だった。対策を行っている事業所の内訳を複数回答で見ると、職場での意思疎通の向上が59.7%で最も高い。

続くのは採用前の詳細な説明・情報提供が58.4%、本人の能力・適性にあった配置が55.6%、労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励が52.9%である。最後の項目は前回の平成30年調査では37.8%で、15ポイント以上伸びた。会社が手を入れている場所と、辞めた人が理由に挙げた場所は、ほぼ重なっている。

この重なりは、訪問の使い道をもう一段増やす。会社が取り組んでいると説明する内容を、現場の社員の体感と突き合わせられるからだ。意思疎通の向上に取り組んでいる会社で、半年前に入った人が誰にも質問できずにいたなら、取り組みはまだ届いていない。採用前の説明を充実させたという会社で、入社前に聞いた話と実際が違ったと言われたなら、そこが弱点になる。

効果が出ない訪問に共通すること

効果を落とす型は三つに絞られる。一つは、公開資料で足りる数字を人に尋ねること。二つめは、1社だけで判断すること。比較の相手がいない評価は、印象の言い換えにしかならない。三つめは、感想を聞いて終わること。働きやすいですかという問いに、否定で答える社員は少ない。

比較を成立させるには、同じ項目を複数社で聞く。最初の3か月の相談先、繁忙期が来る月、評価が賃金に反映されるまでの期間。この三つを揃えて聞けば、3社でも差が見える。地方の企業を1日に数社まわるなら日程の組み立てが要るので、現地の窓口に寄せる方法もある。地域の企業と学生をつなぐFLASPOのような事業者が、その調整を引き受けている。

学生側が強く出られる根拠もある。就職・採用活動日程に関する考え方によれば、企業が採用予定数を充足できたとする割合は近年減り、2025年卒では3割台にとどまった。理由として選考応募者が予定より少ないことや、内定辞退が予定より多かったことが挙げられている。会ってもらえる確率は、思われているより低くない。どの経路から頼むと届きやすいかはOB・OG訪問の探し方|キャリアセンターと企業窓口から先輩にたどり着く道で比べた。

よくある質問

何社に会えば効果があったと言えますか

本数より、同じ項目を聞けた社数で考える。違う質問を10社にすると比較できないが、同じ3項目を3社に聞けば差が出る。業種をまたいで比べると差が大きく出すぎるので、まず同じ業種の中で2社から3社、そのうえで業種を変えて1社という順に広げると読みやすい。

効果を記録するにはどうすればよいですか

面談ごとに、聞いた項目と答えを同じ欄に並べる形で残す。感想の欄は分けて、混ぜない。進路を決める段階で見返したときに使えるのは前者だけで、後者はその日の気分の記録になる。答えが得られなかった項目も空欄のまま残しておくと、次の面談で何を優先するかが決まる。

人間関係を聞くのは踏み込みすぎではありませんか

個人の評価を尋ねれば踏み込みになるが、仕組みを尋ねる形なら答えやすい。誰が苦手かではなく、困ったときに持ち込む先が決まっているかを聞く。前者は相手を社内で危うくするが、後者は制度の話なので答えても差し支えがない。

辞めた人の理由を志望企業の社員に聞いてもよいですか

退職した個人を特定する形は避ける。代わりに、同じ部署で何人が入って何人が残っているか、あるいは直近3年で配属後に異動した人がいるかという質問に置き換える。数で答えられる形にすると、相手は答えやすくなり、こちらも比較できる材料として持ち帰れる。


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