OB・OG訪問のマナー|厚労省の14事項から双方が守る線を引く

OB・OG訪問のマナー|厚労省の14事項から双方が守る線を引く

「失礼のないように」だけでは決まらないこと

約束の5分前に着いたのに相手が会議から出てこない。指定されたカフェが騒がしくて声が届かない。話の流れで実家の家業を尋ねられる。検索して出てくる作法の記事は服装や名刺の受け取り方で終わっていることが多く、こうした分岐には答えをくれない。型を暗記しても、型から外れた瞬間に判断材料がなくなる。

先輩訪問の作法を支えているのは、立場の差である。学生は選ばれる側に近く、相手は選ぶ側の組織に属している。相手が差し出しているのは業務時間か私的な時間のどちらかで、いずれにしても本来は別のことに使えた時間だ。この偏りを前提に置くと、作法は「気に入られる振る舞い」ではなく「どちらも不利益を受けない線引き」として整理できる。気に入られようとする設計は、相手が線を越えてきたときに自分を守れない。

そして線の一部は、すでに公の文書で決まっている。厚生労働省は採用選考で把握すべきでない事項を14に分けて公表しており、2026年10月1日からは、先輩社員への訪問を含む求職活動の場でハラスメントを防ぐ措置が企業の義務になった。守る側と守られる側が同じ資料を読んでおけば、迷う場面はかなり減る。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

聞かれても答えなくてよい14の事項

厚生労働省の公正採用選考特設サイトは、採用選考時に配慮すべき事項を14に分けて示している。応募書類に書かせること、面接で尋ねること、作文の題材にすることのいずれであっても、就職差別につながるおそれがあるとされる項目だ。

区分 具体的な事項
本人に責任のない事項 本籍・出生地/住宅状況(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)/家族(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)/生活環境・家庭環境など
本来自由であるべき事項 宗教/人生観・生活信条/思想/購読新聞・雑誌・愛読書/支持政党/尊敬する人物/労働組合や学生運動などの社会運動
採用選考の方法 身元調査など/合理的・客観的に必要性が認められない健康診断の実施/本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」の14事項を区分ごとに整理

先輩訪問は選考そのものではない。ただし相手は企業に雇われた労働者であり、聞き取った内容が人事に渡る経路は現に存在する。選考の場で尋ねられない事項が、訪問の場なら自由に聞けるという理屈は立たない。逆に言えば、表の内容を向けられたとき、学生の側には答えないという選択肢がある。

区分の意味を押さえると、断り方まで決まる。本人に責任のない事項と本来自由であるべき事項は、答えたところで職務を遂行する力の証明にならない。だから「仕事と関係しない話なので控えます」と返しても会話は破綻しない。相手が採用担当でないときは、悪意なく世間話として出していることも多いので、話題を業務の内容に戻すだけで足りる。企業に答える義務がある項目との対比はOB・OG訪問の質問|企業に答える義務がある12項目を下敷きにするで扱った。

場所と時間と連絡手段を決めるのは自分ではない

改正男女雇用機会均等法により、2026年10月1日から事業主は求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防ぐ措置を講じる義務を負う。厚生労働省のリーフレットは、対象となる求職活動等の例に「企業の雇用する労働者への訪問」を名指しし、SNSなどオンラインを介して行われるものも含むと明記している。先輩訪問はこの枠の内側にある。

義務の一つは、求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者と求職者等の双方に周知することだ。リーフレットが挙げる例は、面談時間および場所の指定、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類の指定である。つまり「いつ、どこで、どの手段で」は、学生が頼む前から会社側で決まっている可能性が高い。

ここを読み違えると善意が逆効果になる。気を利かせて相手の自宅に近い店を提案する、連絡を早くしたくて個人の連絡先を求める、終業後の時間を指定する。いずれも相手を社内規定との板挟みに置く。最初の問い合わせでは条件を出さず、日程と場所と手段は貴社の規定に合わせたい、と一行添えるほうが通りやすい。義務化の前後で何が変わったかはOB・OG訪問とは|2026年10月の義務化で変わった依頼と当日の作法にまとめてある。

当日の60分で引いておく3本の線

時間の線は、始まる前に終わりを確認することで引ける。相手が1時間と言ったなら55分で切り上げる構えで入り、延長を自分から求めない。質問が余ったら、残りは後日メールで1問だけ送ってよいかと尋ねる。相手が次の予定を気にしながら話す15分より、集中した40分のほうが得られる情報は多い。

記録の線は、許可で引く。録音は必ず事前に可否を尋ね、断られたら手書きに切り替える。社内資料を見せてもらった場合、撮影は原則できないものとして扱う。相手が口頭で語った数字も、公表されていないものは社名を伏せて自分のノートに留める。ここを曖昧にすると、相手が次の学生に会えなくなる。

負担の線は、下調べで引く。求人票や有価証券報告書に載っている数字を人に尋ねるのは、相手の時間を資料の代わりに使うことになる。飲み物代は自分が持つ前提で用意し、相手が払うと言っても一度は辞退する。地方の企業を一日に数社まわるなら、現地側の窓口に日程を寄せてもらう手もあり、FLASPOのような地域の事業者がその役を担っている。

線を越えられたとき、どこへ行くか

リーフレットは具体例を挙げている。訪問した際に相手の労働者から性的な関係を求められ、求職活動の意欲が低下した場合。執拗に私的な食事へ誘われ、苦痛を感じた場合。これらは防止措置の対象として書かれている事例で、学生の側に断る理由を説明する責任はない。男性も女性も当事者になり得るとされ、同性に対するものや、相手の性的指向やジェンダーアイデンティティにかかわらず該当することがあり得ると注記されている。

相談の経路は三つある。社内では、企業が相談窓口をあらかじめ定めて求職者等に周知する義務を負っている。社外では、都道府県労働局の雇用環境・均等部または室が受け付ける。採用選考で先の14事項に触れる質問を受けたときは、求職者の皆様へが最寄りのハローワークまたは都道府県労働局への問い合わせを案内している。

大学を通す経路も有効だ。望ましい取組として、大学等のキャリアセンターから相談に関する情報提供があった場合に企業が連携して対応することが挙げられている。ひとりで企業に向き合う構図にしなくてよい。相談者のプライバシーを保護する措置と、事実確認に協力したことを理由に不利益な取扱いをしない旨の周知も、企業が講じるべき措置に含まれている。訪問全体の流れはOB・OG訪問のやり方|依頼から当日・お礼まで企業の窓口を通す手順で段ごとに追える。

よくある質問

服装はスーツでなければいけませんか

指定があればそれに従う。指定がなければ、相手の職場で浮かない範囲で選べば足りる。付け加えると、服装は14事項にも防止措置の指針にも登場しない。公的な資料が評価の軸として挙げていない項目に時間を使うより、聞く内容の設計に時間を回したほうが戻りは大きい。

手土産は持っていくべきですか

持たない前提で考えるのが無難だ。社内規定で受け取れない企業があり、受け取れない旨を相手に言わせる手間が生じる。代わりになるのは、終了後に送る短い報告と、聞いた内容を実際の選択に使ったという事後の一報である。

オンラインの面談でも同じ扱いですか

同じだ。リーフレットは求職活動等にSNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものを含むと書いている。画面越しであることが、場所や手段のルールを緩める理由にはならない。録画の可否も、対面での録音と同様に事前に確認する。

14事項を尋ねられたら、その場で訪問を終えるべきですか

一律に終える必要はない。相手の立場と文脈で分けて考えるとよい。採用担当者が選考の文脈で尋ねたのであれば、記録を残して労働局やハローワークに相談する材料になる。現場の社員が雑談の流れで触れたのであれば、答えずに話題を戻せば済むことが多い。判断に迷う状態で続けるのが一番消耗するので、帰ってから大学のキャリアセンターに共有しておく。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。