公務員試験と若者|高卒程度19.4%減と教養区分24.9%増のねじれ

公務員試験と若者|高卒程度19.4%減と教養区分24.9%増のねじれ

公務員試験の志望者が減っているという話は、十年近く同じ言い方で繰り返されてきた。ところが直近の数字を区分ごとに割ると、全体が一様に縮んでいるのではないことがわかる。高校卒業程度の試験は二割近く減り、大学卒業程度の一般職は増え、大学一年生から受けられる区分は二割以上伸びた。減っているのは志望者ではなく、特定の入口である。

減り方は区分でまったく違う

人事院の令和7年度年次報告書(公務員白書)によると、二〇二五年度の国家公務員採用試験の申込者総数は八万七二六四人で、前年度から六六九四人、七・一パーセント減った。この一行だけを読めば志望者離れの話になる。だが内訳を開くと方向が揃っていない。

大学・大学院卒業程度の試験は六万四六四一人で、減少は一二三二人、一・九パーセントにとどまる。一方で高等学校卒業程度の試験は二万二六二三人で、五四六二人、一九・四パーセントの減少だった。全体の減少六六九四人のうち八割以上が高卒程度の区分で起きている。

さらに細かく見ると増えている区分もある。一般職の大卒程度試験は申込者二万五四三七人で前年度比一一九七人、四・九パーセントの増加だった。合格者は八八一五人で一二五八人、一六・六パーセントの増加である。逆に一般職の高卒者試験は申込者八二七五人で一四〇六人、一四・五パーセントの減少となった。同じ年に同じ役所の同じ試験体系の中で、学歴区分によって符号が反転している。

区分 2025年度の申込者数 前年度からの増減 増減率
全採用試験 八万七二六四人 六六九四人減 七・一%減
大学・大学院卒業程度 六万四六四一人 一二三二人減 一・九%減
高等学校卒業程度 二万二六二三人 五四六二人減 一九・四%減
一般職(大卒程度) 二万五四三七人 一一九七人増 四・九%増
一般職(高卒者) 八二七五人 一四〇六人減 一四・五%減
総合職(秋の教養区分) 五九一四人 一一八〇人増 二四・九%増

高卒程度の落ち込みは、十八歳人口の変化だけでは説明しきれない大きさである。高校卒業時点の進路として公務が選ばれにくくなっているのか、大学進学を経て受け直す層に移っているのか。少なくとも数字の上では、公務の入口が後ろにずれている。試験種別ごとの規模の全体像は公務員試験の概要|申込8.6万人から合格2.4万人までの全体像で押さえられる。

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伸びているのは十九歳から受けられる区分

最も伸び率が高かったのは総合職試験の教養区分だった。二〇二五年秋に実施された分の申込者は五九一四人で、前年から一一八〇人、二四・九パーセントの増加である。専攻分野を問わず企画立案の基礎的な能力を見る区分で、十九歳の春、つまり大学一年生の三月から受験できる。

同じ年の総合職試験の他の区分は減っていた。春の院卒者試験が一二八八人で六二人、四・六パーセントの減少、春の大卒程度試験のうち教養区分以外が一万〇七四〇人で一五〇九人、一二・三パーセントの減少である。総合職全体では一万七九四二人、三九一人の減少で、教養区分の伸びが他の区分の落ちを埋めきれていない形になっている。

そのうえで人事院は、教養区分を春にも実施する手を打った。2026年度国家公務員採用総合職試験(春)の申込状況等についてのとおり、二〇二六年度から秋に加えて春にも教養区分が置かれ、春の申込者は三一三二人という速報値が出ている。春試験全体の申込者は一万二四八六人で前年度の一万二〇二八人から三・八パーセント増え、二〇二二年度以来四年ぶりの増加に転じた。

採用時期をそろえて数えると変化はもっと明確になる。主に二〇二七年四月採用に向かう二〇二五年度秋と二〇二六年度春の申込者の合計は一万八四〇〇人で、前年の一万六七六二人から九・八パーセント増えた。女性の申込者は春試験で五五一九人、全体の四四・二パーセントを占める。受けやすい入口を早い学年に置くと人は集まる、という単純な結果が出ている。

倍率の低下は受験者側の追い風にはなりきらない

申込者が減れば倍率は下がる。二〇二五年度の大学・大学院卒業程度の試験では、申込者に対する倍率が三・九倍、第一次試験の受験者に対する倍率が二・七倍だった。前年度はそれぞれ四・三倍と三・〇倍である。高等学校卒業程度では申込基準三・〇倍、受験基準二・二倍で、前年度の三・四倍と二・六倍から下がった。

地方も同じ方向に動いている。総務省の令和6年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果によれば、競争試験の受験者数は三八万八九九六人、合格者数は九万四九九九人、競争率は四・一倍だった。平成二十七年度は六・六倍だったから、十年で二・五ポイント下がっている。

ただし分母が減ったことと合格しやすくなったことは別の話である。合格者数は国でも二万四三三四人へ六八〇人、二・九パーセント増えているが、これは辞退を見込んだ上積みを含む。採用側が募集枠を広げても、基準点に届かない層が増えれば合格水準は下がらない。倍率の分母と分子の読み分けは公務員試験の倍率|申込倍率と受験倍率を分けて読む作法に詳しい。

採用側の景色は受験者側とは逆である。令和六年度の国家公務員の離職者総数は二万二七四九人で、前年度より三三一四人増え、全職員の離職率は八・〇パーセントになった。入口が細りながら出口が広がっている局面で、自治体の現場で何が起きているかは地方公務員の現状とは?人手不足と働き方改革の実態を徹底的に解説が描いている。

人事院が若者のどこを見ているか

当事者である人事院の分析は、志望者減の原因を待遇だけに置いていない。白書は、国家公務員として働くやりがいや仕事を通じた成長、働く環境の現状や今後の改善の方向性が公務の外に十分に伝わっていないと書いている。そのうえで、これからの社会を担う若年層が国家公務員の仕事に対して持つイメージと実態の間にギャップがあり、それが就職先として選ばれない一因になっていると整理している。

打ち手も具体的に記録されている。令和七年七月に人事院と内閣官房内閣人事局、各府省が連携して三四府省等の約一三〇人が参加する府省横断チームが立ち上がり、令和七年度中に七回の会合を開いた。現役の大学生の協力を得て、仕事観の形成から情報収集、深掘りと選定、意思決定までをたどるカスタマージャーニーマップを作成し、令和八年三月に「国のミライをつくる、唯一無二の挑戦がある」というブランドメッセージを策定している。

待遇面も同時に動いた。令和7年人事院勧告・報告の概要は「激しい人材獲得競争を勝ち抜くため」と題され、採用市場での競争力向上を理由に初任給を大幅に引き上げた。総合職の大卒が二四万二〇〇〇円で五・二パーセント、一般職の大卒が二三万二〇〇〇円で五・五パーセント、一般職の高卒が二〇万〇三〇〇円で六・五パーセントの引上げである。最も減っている高卒程度の入口に、最も大きな率が当てられている。

白書は、若年層において進路選択の早期化や就業意識の多様化が顕在化していると見ている。早期化への答えが十九歳から受けられる区分の拡大で、多様化への答えが経験者採用の拡充という対応になる。民間企業で新卒一括採用が揺れているのと同じ力が、公務の側にも働いている。民間の就活で若者が何を負担と感じているかは新卒就活と若者|オワハラ8.3%と学業の両立から見る負担の所在に数字がある。

受ける側はこの変化をどう使うか

入口が増えたことの実利は、挑戦の回数が増えることにある。教養区分が春と秋の二回になれば、大学一年の三月から複数回の受験機会が生まれる。専門科目の対策を積む前に一度受けておき、その結果を見て次の準備を決めるという順番が取れる。

もう一つは併願の組み方である。高卒程度の区分が細り、大卒程度の一般職が増えているという流れは、民間と公務を並行して受ける層が大卒区分に集まっていることを示している。併願が多い試験は申込者に対する倍率と受験者に対する倍率の差が開くため、見かけの数字より会場での競争は緩い。志望先を絞るなら、倍率ではなく受験率と採用予定数を見るほうが確かである。

逆に注意が要るのは、採用側が人材確保に動いている時期に合格の価値を見積もり違えることである。離職率が八・〇パーセントまで上がっている組織に入るのだから、受かることより続けられるかどうかの検討が重い。白書が言うイメージと実態のギャップは、受ける側にとっては入ってからの落差として現れる。

ギャップを埋める方法は、実際に行政の現場に触れておくことしかない。官庁訪問や説明会は選考の一部として設計されているため、見える範囲が限られる。学生のうちに自治体や地域の課題に関わる機会として、FLASPOのようなプログラムを挟んでおくと、公務の仕事の手触りを自分の言葉で語れるようになる。

よくある疑問

公務員試験の志望者は結局減っているのか増えているのか。二〇二五年度は全採用試験で七・一パーセント減だが、採用時期をそろえた総合職の秋春合計では九・八パーセント増に転じている。どの区分をどの単位で数えるかで答えが変わるため、「公務員試験の人気」という一つの指標は存在しない。

高卒程度が一九・四パーセントも減ったのはなぜか。白書はこの区分だけを切り出した原因分析を示していない。ただ進路選択の早期化と就業意識の多様化を全体の背景として挙げており、初任給の引上げ率が高卒区分で最も高い六・五パーセントに設定されている。採用側がここを弱点と見ていることは、打ち手の配分から読める。

教養区分は受けやすいのか。専門科目の試験がない代わりに、企画提案や政策課題討議が課される。二〇二五年秋の区分では申込者五九一四人に対し合格者は四二六人で、合格の難しさが他の区分より緩いわけではない。早い学年から受けられることと通りやすいことは別に考えたい。

倍率が下がっている今が狙い目なのか。競争率は下がっているが、落ちる理由の多くは基準点に届かないことにある。分母が減っても到達すべき水準は動かないため、準備量を落とす根拠にはならない。むしろ受験機会が増えたぶん、どの区分に労力を配るかという設計の差が結果に出やすくなっている。


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