新卒就活の年収|初任給26.2万円と平均給与478万円の間を埋める

新卒就活の年収|初任給26.2万円と平均給与478万円の間を埋める

求人票に並ぶ月額と、生活の設計に使う年収は別のものである。前者は決まった時間働いたときに支払われる月々の額で、賞与や残業代、通勤手当は含まれていない。この違いを飛ばして十二倍すると、入社後の家計が合わなくなる。ここでは公的統計の数字を使い、月額から年収までの距離を段ごとに埋めていく。

最初に示される額は所定内給与である

厚生労働省の令和七年賃金構造基本統計調査によると、新規学卒者の賃金は男女計で大学卒が二六万二三〇〇円だった。この調査でいう賃金は六月分の所定内給与額を指し、残業などの超過労働給与額と、賞与のような年間の特別給与額は含まない。求人票の「初任給」も多くはこの範囲で書かれている。

したがって、提示された額をそのまま十二倍した数字は年収の下限に近い目安でしかない。上に積まれるのは賞与と時間外の手当、下に引かれるのは社会保険料と税である。手取りと支給総額の差は入社一年目でおおむね二割前後になるため、月額だけを見て住む場所や固定費を決めると窮屈になりやすい。

同じ調査では、大学卒の新規学卒者の賃金は前年に比べて五・六%増えている。高校卒は五・〇%、高専・短大卒は五・二%、大学院卒は四・〇%の増加で、学歴を問わず上向いた年だった。

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学歴で九万円近い差がつく

同じ調査の新規学卒者の賃金を学歴別に並べると、入口の位置が見える。

学歴 男女計 男 女 前年からの増減率
高校 二〇万七三〇〇円 二一万〇一〇〇円 二〇万二九〇〇円 五・〇%
専門学校 二三万〇七〇〇円 二二万七八〇〇円 二三万二四〇〇円 三・五%
高専・短大 二三万五五〇〇円 二四万一四〇〇円 二三万〇〇〇〇円 五・二%
大学 二六万二三〇〇円 二六万四九〇〇円 二五万九七〇〇円 五・六%
大学院 二九万九〇〇〇円 三〇万一二〇〇円 二九万二九〇〇円 四・〇%

高校卒と大学院卒の間は九万一七〇〇円で、年額に直すと百万円を超える開きになる。一方で大学卒と大学院卒の差は三万六七〇〇円であり、修士の二年分の学費と生活費を月額の差だけで回収できるとは限らない。専門学校卒は唯一、女性の額が男性を上回っている。

入口の段階では男女の開きも小さい。大学卒では男性二六万四九〇〇円に対して女性二五万九七〇〇円で、差は五二〇〇円にとどまる。前年からの伸びは女性が六・〇%、男性が五・四%だった。この差が後に広がるかどうかは、職種の配分と勤続年数の違いに左右される。

二十代の間に月額はどこまで動くか

入口の額は固定されない。同じ調査で大学卒の賃金を年齢階級別に見ると、二十〜二十四歳が二六万三九〇〇円、二十五〜二十九歳が二九万六四〇〇円、三十〜三十四歳が三四万〇三〇〇円である。年齢計は三九万六三〇〇円だった。

二十代前半から後半にかけての五年で三万二五〇〇円、三十代前半までの十年で七万六四〇〇円が積まれる計算になる。昇給の幅そのものは大きくないが、賞与が月数で決まる会社では基準となる額が上がるため、年収への波及は月額の差より大きくなる。

男女別に分けると、二十〜二十四歳は男性二六万七四〇〇円、女性二六万〇四〇〇円で、差は七〇〇〇円である。二十五〜二十九歳では男性三〇万五一〇〇円、女性二八万六九〇〇円となり、差は一万八二〇〇円に広がる。入口でほぼ揃っていた額が、二十代の後半に入るあたりで離れ始める。

学歴による差も、この間に形を変える。大学卒の年齢計三九万六三〇〇円に対し、高校卒は二九万七二〇〇円、大学院卒は五一万七四〇〇円である。入口の九万円台の差が、年齢計では二十二万円台まで開く。初任給だけを比べて進路を決めると、後半の傾きを見落とすことになる。

同じ年齢でも会社の規模で二割違う

年齢が同じでも、勤め先の規模によって月額は揃わない。令和七年賃金構造基本統計調査の企業規模別の数字では、二十〜二十四歳の賃金は大企業が二五万八四〇〇円、中企業が二三万七六〇〇円、小企業が二二万六三〇〇円だった。大企業を百とすると中企業は九二・〇、小企業は八七・六である。

この差は年齢とともに広がる。年齢計では大企業三八万五一〇〇円、中企業三二万六二〇〇円、小企業三〇万五六〇〇円で、指数は八四・七と七九・四まで下がる。入口では一割強だった開きが、生涯では二割前後の開きになるという読み方ができる。

間の年代を見ると、二十五〜二十九歳では大企業三〇万一七〇〇円、中企業二七万〇六〇〇円、小企業二五万八二〇〇円となる。三十〜三十四歳では大企業三四万四六〇〇円、中企業二九万九四〇〇円、小企業二八万六五〇〇円である。年齢が上がるにつれて金額の差そのものが大きくなっていく。

ただし規模は賃金だけに効くわけではない。厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況(令和四年三月卒業者)では、大学卒の就職後三年以内の離職率は千人以上の事業所で二七・〇%、五人未満で五七・五%だった。賃金の低い側で離職率が高いという対応関係があるため、規模を選ぶ判断は金額と定着の両方を並べて行うことになる。地域による賃金差の見方は地方就職の年収|賃金の地域差1.23倍と物価差1.08倍のずれで整理している。

年収という単位で見ると位置が変わる

月額から離れて年単位の分布を見ると、自分の位置の見当がつきやすい。国税庁の令和六年分民間給与実態統計調査では、一年を通じて勤務した給与所得者五一三七万人の平均給与は四七八万円で、前年比三・九%の増加だった。男性が五八七万円、女性が三三三万円である。平均年齢は四七・二歳、平均勤続年数は一二・六年で、働き始めたばかりの人を基準にした数字ではない。

雇用の形で分けると、正社員が五四五万円、正社員以外が二〇六万円となる。分布のほうを見ると、三百万円超四百万円以下が八二六万人で一六・一%を占めて最も多く、次が四百万円超五百万円以下の七八七万人で一五・三%だった。大学卒の初任給を単純に十二倍した約三百十五万円は、この最も人数の多い階級の下寄りに入る。賞与が二か月分あれば四百万円前後に届き、分布の中心に重なってくる。

正社員をさらに男女で分けると、男性が六〇九万円、女性が四三〇万円である。正社員以外では男性二七一万円、女性一七四万円となる。同じ調査で乙欄適用者を除いて計算した平均給与は四八六万円で、前年比四・四%の増加だった。どの区分を取るかで百万円単位の違いが出るため、比較するときは区分を揃えておきたい。

企業説明会で年収の話が出たときに確かめたいのは、提示額が所定内給与か固定残業代を含むのか、賞与の支給実績が何か月分か、昇給の実績はどの程度かという三点である。この三つが揃えば、同じ「月二十六万円」でも年収の幅は数十万円違ってくる。学生が企業と早い段階で接点を持ち、こうした条件を聞ける場としてFLASPOのようなコンテスト型の取り組みを使う手もある。市場全体の見取り図は新卒就活の現状|内定率73.4%と求人倍率1.62倍が示す採用市場にまとめてある。

よくある疑問

求人票の初任給には何が含まれているのか。会社によって異なるのが実情で、所定内給与だけを示す場合と、固定残業代や各種手当を含めて大きく見せる場合がある。内訳の明示を求め、基本給がいくらかを確かめておくと、賞与や昇給の計算根拠までたどれる。

手取りはどのくらい減るのか。健康保険料と厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、二年目から加わる住民税が引かれる。入社初年度の手取りは支給総額の八割前後になることが多く、二年目は住民税の分だけ見かけの手取りが下がる点に注意したい。

初任給の高い会社を選べば生涯の収入も多くなるのか。必ずしもそうならない。年齢計では学歴間も規模間も差が入口より広がっており、昇給の傾きと賞与の実績が効いてくる。入口の額と年齢計の額を同じ資料で並べて見るのが確実である。

平均給与四七八万円という数字を基準にしてよいのか。この平均には四十代後半を中心とする全世代が含まれており、平均年齢は四七・二歳である。二十代の目安としては高すぎるため、自分の位置を見るときは給与階級別の分布のほうが役に立つ。

賞与は何か月分と見ておけばよいのか。賃金構造基本統計調査の賃金には賞与が含まれていないため、この統計から支給月数は読めない。入社一年目は査定期間が短く満額に届かない会社もあるので、募集要項の支給実績か、面接の場で前年度の実績を聞いて確かめるのが確実である。

大学院へ進むと月額はどれだけ変わるのか。令和七年の数字では大学卒との差は三万六七〇〇円である。年額では四十四万円ほどの差になるが、修了までの学費と二年分の収入を失う機会費用を考えると、金額だけで判断できる水準ではない。研究内容が職種に直結するかどうかで見るほうが実際に合う。


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