人気の観光地を並べた記事は多いが、実際に何人が泊まったかを県ごとに数えた統計はひとつしかない。観光庁の宿泊旅行統計調査である。2025年の年間確定値が2026年7月に出そろったので、47都道府県の数字を開いてみる。合計は伸びていないのに地方部だけが大きく増えるという、少し読み方の難しい年になっていた。
2025年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊
観光庁が2026年7月6日に公表した2025年の年間確定値によると、全国の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊だった。前年比はプラス0.3パーセント、2019年比ではプラス10.9パーセントである。2026年2月27日に出た速報値の6億5,348万人泊から、回収した調査票を反映して上方修正された。
内訳を見ると方向が分かれている。日本人は4億8,118万人泊で前年比マイナス2.7パーセント、外国人は1億7,992万人泊で前年比プラス9.4パーセントだった。2019年と比べると日本人はプラス0.2パーセントでほぼ横ばい、外国人はプラス55.6パーセントで一段上の水準に移っている。全体に占める外国人の割合は27.2パーセントで、泊まった4人に1人以上が海外からの客という計算になる。
時系列で並べると落差が大きい。2019年の5億9,592万人泊が2020年に3億3,165万人泊まで落ち、2021年は3億1,777万人泊でさらに下がった。2022年に4億5,046万人泊へ戻り、2023年6億1,747万人泊、2024年6億5,906万人泊と回復して、2025年でほぼ横ばいになった。回復局面が終わり、どこに人が集まるかという配分の問題に移った年だと読める。
東京都が1億790万人泊、上位5都道府県で42.4パーセント
都道府県別の順位は、観光地の知名度の並びとは少し違う。首位は東京都の1億790万人泊で、全国の16.3パーセントを占める。次が大阪府の5,877万人泊、北海道の4,650万人泊、沖縄県の3,386万人泊、京都府の3,316万人泊と続き、この5都道府県だけで全国の42.4パーセントになる。
| 都道府県 | 延べ宿泊者数 | うち外国人 | 外国人の割合 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 全国 | 6億6,111万人泊 | 1億7,992万人泊 | 27.2% | +0.3% |
| 東京都 | 1億790万人泊 | 6,012万人泊 | 55.7% | -2.2% |
| 大阪府 | 5,877万人泊 | 2,452万人泊 | 41.7% | +2.3% |
| 北海道 | 4,650万人泊 | 1,330万人泊 | 28.6% | +4.2% |
| 沖縄県 | 3,386万人泊 | 921万人泊 | 27.2% | +8.3% |
| 京都府 | 3,316万人泊 | 1,829万人泊 | 55.2% | -3.1% |
| 佐賀県 | 236万人泊 | 25万人泊 | 10.7% | +0.5% |
下位も見ておくと幅が分かる。最も少ないのは佐賀県の236万人泊で、鳥取県257万人泊、徳島県266万人泊、高知県281万人泊、秋田県299万人泊が続く。東京都と佐賀県では45.8倍の差がある。宿泊施設の所在地で集計する統計なので、日帰りで訪れる人の多い県や、隣県に泊まって観光する県では数字が小さく出る。栃木県が1,109万人泊、群馬県が877万人泊と温泉地を抱える県が上位に食い込むのも、泊まる場所を数えているからである。
京都と東京は泊まる人の半分以上が海外から
同じ総数でも、客の構成はまったく違う。東京都は1億790万人泊のうち6,012万人泊が外国人で、割合は55.7パーセントになる。京都府も3,316万人泊のうち1,829万人泊が外国人で55.2パーセントである。この2つは泊まる人の半分以上が海外からの客という市場になっている。
大阪府は2,452万人泊で41.7パーセント、福岡県は842万人泊で33.0パーセント、北海道は1,330万人泊で28.6パーセント、沖縄県は921万人泊で27.2パーセントと、上位でも構成はばらつく。一方で秋田県の外国人は14万8千人泊、福井県は10万9千人泊、島根県は11万4千人泊、高知県は14万1千人泊にとどまり、総数に対する比率は数パーセントである。
この差は収益の揺れ方の差でもある。外国人比率が高い県は、為替や航空便の増減、相手国の景気に売上が左右されやすい。国籍別の集計は従業者数10人以上の施設に限られるが、その1億5,425万人泊の内訳では中国が3,036万人泊で19.7パーセント、台湾1,997万人泊、韓国1,773万人泊、米国1,722万人泊、香港660万人泊と続き、上位5か国・地域で全体の約59.6パーセントを占める。韓国と香港は前年を下回っており、構成は毎年動いている。
伸びたのは地方部で、前年比プラス19.1パーセント
全体がほぼ横ばいだった年に、どこが伸びたのか。観光庁は東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の8都府県を三大都市圏、それ以外を地方部として集計している。外国人延べ宿泊者数の前年比は、三大都市圏がプラス5.1パーセント、地方部がプラス19.1パーセントだった。
地方部の外国人は2023年の3,358万人泊から2024年5,086万人泊、2025年6,056万人泊へと増え、全体に占める構成比は28.5パーセント、30.9パーセント、33.7パーセントと上がってきた。三大都市圏は同じ期間に8,417万人泊から1億1,936万人泊へ増えてはいるが、構成比は71.5パーセントから66.3パーセントへ下がっている。人の流れが都市から外へ少しずつ漏れ出している形だ。
県単位の伸び率を見ると動きがはっきりする。外国人延べ宿泊者数の前年比は鳥取県がプラス72.0パーセント、新潟県がプラス60.6パーセント、三重県がプラス57.7パーセント、富山県がプラス54.5パーセントと、もとの水準が低い県で大きく跳ねている。逆に石川県は総数で前年比マイナス17.2パーセント、リゾートホテルの客室稼働率が17.1パーセントで全国最下位となり、能登半島地震の後の復旧需要が落ち着いた影響が出た。地域との関わり方の分類は関係人口と交流人口の違いは?定住人口も含めた3つの概念を比較解説が参考になる。
客室稼働率は大阪78.6パーセント、長野39.0パーセント
泊まった人の数と、施設が埋まっているかどうかは別の指標である。2025年の客室稼働率は全国で61.6パーセントだった。前年差はプラス2.0ポイント、2019年差はマイナス1.1ポイントで、総数が過去を上回っている一方で稼働率はまだ届いていない。部屋の数が増えたためだ。
都道府県別で最も高いのは大阪府の78.6パーセント、次が東京都76.3パーセント、福岡県72.1パーセント、愛知県69.2パーセント、京都府66.8パーセントである。最も低いのは長野県の39.0パーセントで、山梨県43.8パーセント、新潟県46.1パーセント、福井県46.2パーセント、群馬県46.8パーセントが並ぶ。
ただし長野県の数字は中身を見ないと誤解する。施設タイプ別ではビジネスホテルが75.7パーセントで全国10位、シティホテルが76.1パーセントで8位と高く、旅館が27.2パーセント、簡易宿所が13.6パーセントと低い。全体の数字は、客室数の多い旅館やペンションが多いという宿の構成を反映している。全国の施設タイプ別では旅館38.2パーセント、リゾートホテル56.9パーセント、ビジネスホテル75.3パーセント、シティホテル74.1パーセント、簡易宿所29.6パーセントと開きが大きい。旅先で働く形はワーケーションとは?観光庁の公式定義・種類・始め方を解説に整理がある。
よくある質問
延べ宿泊者数とは何を数えた数字か。宿泊した人数に泊数を掛けたものである。1人が2泊すれば2人泊として数える。集計は宿泊施設の所在地で行われるため、観光の目的地が別の県であっても、泊まった県の数字に入る。
観光地の人気ランキングとして使えるか。そのままでは使えない。日帰り客は含まれず、ビジネスでの出張や帰省も同じように数えられる。東京都が首位なのは出張需要と空港からの動線が大きい。観光目的だけを抜き出したい場合は、同じ調査の観光目的の宿泊者比率や、別の旅行者調査を併せて見る必要がある。
速報値と確定値はどちらを見ればよいか。年間の比較には確定値を使う。2025年の場合、速報値では延べ宿泊者数が前年比マイナス0.8パーセントだったが、確定値ではプラス0.3パーセントに変わった。符号が入れ替わるほどの修正が入ることがあるので、確定値が出た時点で数字を更新したほうがよい。
地方の宿泊者を増やすために何が効いているのか。単一の答えはないが、地方部の外国人が2年で1.8倍になった背景には、地方空港の国際線や二次交通の整備、滞在型の体験の整備がある。地域の側で受け入れを作る人手は足りておらず、FLASPOのように学生が短期で企画や情報発信に関わる形が入る余地はそこにある。数字で現状を押さえてから、どの県のどんな受け入れが足りないのかを見にいくのが順番として早い。
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