気に入った一軒を見つけてから引き渡しまでに、買い手が判断しなければならないことは十を超える。しかも、判断の順番を間違えると取り返せない項目がいくつか混ざっている。敷地の条件、資金の組み方、付いてくる農地の扱いは、契約を結んだ後では動かせない。探し始める前に、決め方の順序を組み立てておきたい。
探せる場所は思ったより限られている
古民家は一般の物件情報にまとまって出てこない。自治体が把握している情報を横断して調べられるよう、国土交通省は「全国版空き家・空き地バンク」を構築し、公募で選んだ2事業者によって平成30年4月から本格運用している。ここが最初の窓口になる。
規模は把握しておいたほうがよい。令和5年2月末時点で、47都道府県を含む1,788自治体のうち参画しているのは949自治体で、参画率は53パーセントだった。累積の成約数は約13,300件である。半数近い自治体は参画していないため、気になる地域が載っていないことは珍しくない。
そこで経路は三つに分かれる。全国版のバンクで横断的に探す方法、自治体が独自に運営するバンクを個別に当たる方法、そして地元の不動産業者や地域の紹介にたどり着く方法である。掲載情報は自治体によって差が大きく、写真や設備の記載が少ない物件も多い。見つからないことを在庫がないと読み替えず、市町村の担当課に直接聞く手間を惜しまないほうが早い(出典:国土交通省空き家・空き地バンク総合情報ページ)。空き家バンクの仕組みを先に押さえておくと問い合わせがしやすくなる。
建物より先に敷地の条件を確かめる
内見に行くと梁や土間に目が向くが、先に確かめるべきは土地の側である。建築基準法第43条第1項は、建築物の敷地が法律上の道路に2メートル以上接していなければならないと定めている。道路の側にも幅員の条件があり、原則として幅4メートル以上のものが対象になる。
この条件を満たしていない敷地では、今建っている家を建て替えられない。いわゆる再建築不可の物件である。古い集落の奥や、農道だけに面した敷地でこの状態になっていることがある。将来的に住み替えや売却を考える余地が大きく狭まるため、価格が安い理由がここにある場合は買い方を根本から考え直す必要がある。
確かめ方は単純で、市町村の建築指導を担当する部署に地番を伝えて道路の種別を照会すればよい。特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可すれば接道義務が緩和される例外もあるため、不可と断定される前に条件を聞いておく価値はある。この確認を売買契約の前に済ませておけば、あとから使い道が消える事故は防げる(出典:島根県建築基準法第43条【敷地等と道路との関係】の解説)。
資金の条件は建築年で切り替わる
古民家の資金計画で効いてくるのは、建物がいつ建ったかである。国税庁の定める住宅借入金等特別控除の要件では、中古住宅の場合に昭和57年1月1日以後に建築されたものであれば登記事項証明書で足り、それ以前に建った住宅には別の証明が求められる。
| 建築の時期 | 控除を受けるために必要なもの |
|---|---|
| 昭和57年1月1日以後 | 登記事項証明書(耐震基準の証明は不要) |
| 昭和56年12月31日以前 | 耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書(耐震等級1から3)、既存住宅売買瑕疵担保責任保険の付保証明書のいずれか |
| 昭和56年12月31日以前で基準に適合しない場合 | 居住までに耐震改修を完了し、適合の証明を受ける(工事請負契約書の写しも必要) |
古民家はほぼ全てが下の二段に入る。したがって、耐震改修をいつやるかが税の扱いに直結する。住み始めてから改修すると控除の対象にならない組み方もあるため、改修の時期と入居日の前後関係を先に設計者と共有しておく必要がある。金融機関の側でも、旧耐震の木造住宅には土地の評価を上限として融資する扱いがあり、建物分の借入が想定より伸びないことがある(出典:国税庁中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合)。
農地が付いてくる物件は手続きが別に走る
古民家には畑や田が付属していることが多い。全国版のバンクでは農地付き空き家が特集として扱われ、累積の成約約13,300件のうち約1,300件がこの類型だった。農地の権利を取得するには農地法第3条による農業委員会の許可が要り、住宅の売買とは別の手続きになる。
この許可は令和5年4月1日から入りやすくなった。農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律の施行により、取得後の経営面積が都府県で50アール以上という要件が廃止されたためである。新規参入者の多い野菜や果樹では参入時の経営面積が50アール未満の例が多く、実態に合わせた見直しだった。
| 農地法第3条の許可基準 | 令和5年4月以降 |
|---|---|
| 農地の全てを効率的に利用すること | 継続 |
| 必要な農作業に常時従事すること(原則年間150日以上) | 継続 |
| 50アール以上の面積を経営すること | 廃止 |
| 周辺の農地利用に支障がないこと | 継続 |
面積の壁は消えたが、耕す前提そのものは残っている。機械や労働力があるか、年間の従事日数を確保できるか、水利の調整に参加できるかが問われる。買ってから草だけ刈って放置するつもりなら許可は下りない。逆に、少しでも作るつもりがあるなら、以前より門は開いている(出典:農林水産省経営局農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律について)。
契約までに決める順番を固定する
以上を踏まえると、進め方は逆算で組み立てられる。まず用途を決め、次に敷地の法的条件を照会し、そのうえで建物の調査を入れ、改修の概算が出てから資金を確定し、最後に契約する。この順序を崩すと、価格に納得してから使えないことが判明するという結末になりやすい。
建物の調査については、床下と小屋裏を見せてもらえるかを交渉の材料にしておくとよい。範囲が確定しない工事が残る場合は、調査後に工事範囲と価格を見直せる形で契約を結ぶ方法もある。売主が個人であることが多い古民家の取引では、引き渡し後に見つかった不具合の扱いが契約書の条項次第で大きく変わるため、免責の範囲を読み飛ばさないことが重要になる。
費用の側では、自治体の空き家活用や耐震改修の補助が使えるかを、物件を絞る段階で確認しておきたい。地方移住の補助金と組み合わせられる制度もあり、申請の期限が工事の着手前に設定されている場合が少なくない。いきなり所有する判断に踏み込まず、FLASPOのようなプログラムで一定期間その土地に滞在してから決める道もある。二地域居住という形を先に試せば、通いの負担も実地で測れる。
よくある質問
空き家バンクに載っていない地域は諦めるべきか
必要はない。全国版に参画しているのは令和5年2月末時点で1,788自治体のうち949自治体で、参画率は53パーセントにとどまる。載っていない自治体が独自のバンクを持っている場合や、相談を受けてから紹介する運用をしている場合もあるため、担当課への問い合わせが有効である。
再建築不可の古民家は買ってはいけないのか
買い方によっては成り立つ。ただし建て替えができず、売るときの買い手も限られる。現状の建物を直して使い切る前提で、価格と改修費の合計が納得できる範囲に収まるかどうかで判断するのが現実的である。緩和の許可を得られる余地があるかは先に行政に確認したい。
住宅ローン控除は古民家でも使えるか
使える場合がある。昭和56年12月31日以前の建築であれば、耐震基準適合証明書などの証明を取るか、入居までに耐震改修を終えて適合の証明を受ける必要がある。改修の時期が要件に関わるため、工程を組む前に税務署や設計者に確認しておくと確実である。
農地付きの物件は農業経験がないと買えないか
経験そのものは要件ではない。求められるのは、取得する農地の全てを効率的に利用できること、必要な農作業に常時従事できること、周辺の農地利用に支障を生じないことである。面積の下限は令和5年4月に廃止されたため、小さな区画から始める選択がしやすくなった。
現地に何回行けば判断できるか
回数より確かめる中身が問われる。道路の種別、床下と小屋裏の状態、水と排水の経路、冬の気温と積雪、最寄りの病院と店までの距離は、いずれも一度の内見では把握しきれない。季節を変えて訪れるか、滞在型のプログラムで一定期間過ごしてから決める方法が安全である。
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