市区町村の橋は11,699橋が未着手|国土63%を支える道の算段

集落へ上がる一本道の途中に、重量制限の標識が立っていることがある。片側交互通行の鉄板が敷かれたまま何年も変わらない橋もある。あれは放置されているのではなく、点検で傷みが見つかったあと、直す順番を待っている状態だ。待っている橋が全国でどれだけあるのか、国土交通省が毎年とりまとめている数字から読める。

5年に1度、全部見る決まりになった

順番を待つ列が見えるようになったのは、点検が制度になってからだ。2013年度の道路法改正等を受け、2014年度から道路管理者はすべての橋梁、トンネル、道路附属物等について5年に1度の点検を義務づけられている。近接目視による全数点検で、結果は4段階の判定区分に分けられる。機能に支障が生じていない「健全」が区分I、支障はないが予防保全の観点から措置が望ましいのが区分II、支障が生じる可能性があり早期に措置を講ずべきなのが区分III、すでに支障が生じているか可能性が著しく高く緊急に措置を講ずべきなのが区分IVである。

この仕組みは一巡するのに5年かかる。2018年度に1巡目が完了し、2023年度に2巡目が終わり、2024年度から3巡目が始まった。令和8年8月26日に公表された最新の年報は3巡目2年目にあたり、2025年度の点検実施状況は橋梁が39パーセント、トンネルが34パーセント、道路附属物等が38パーセントだった。2巡目の2年目を上回るペースで、年度ごとの偏りが減りつつある。3巡目で早期または緊急に措置を講ずべきと判定された割合は、橋梁が7パーセント、トンネルが24パーセント、道路附属物等が10パーセント。トンネルの比率が高いのは、構造物の数が11,353箇所と少なく、劣化が目に見えやすいためでもある。

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24万橋が50年を超えた

点検を重ねるあいだに、橋そのものが歳を取っている。建設後50年を経過した橋梁は2018年度末で全体の27パーセント、約13万橋だった。それが2023年度末には39パーセントの約21万橋、2025年度末には44パーセントの約24万橋になった。7年で11万橋増えている。トンネルも同じ向きで、2018年度末の21パーセント約2,300箇所から2025年度末は29パーセント約3,300箇所へ増えた。高度経済成長期に一斉に架けられたものが、一斉に年齢の線を越えていく。

ところが、傷んだ橋の数は減っている。1巡目点検の時点で橋梁の総数は716,466橋あり、そのうち判定区分IIIが68,369橋、区分IVが682橋で、合わせて69,051橋が措置を要する状態だった。2巡目では723,552橋のうち56,463橋、2025年度末時点では725,525橋のうち51,046橋まで下がった。割合でいえばIIIとIVの合計が10パーセントから7パーセントへ改善している。健全と判定された区分Iは296,909橋から319,979橋へ増えた。古くなる橋が増えているのに悪い橋が減るのは、点検と修繕が追いついている部分がある証拠だ。全体としては、事後の修繕から予防保全へ移る途中にある。

直せていないのは市区町村

改善の内訳を管理者で割ると、話が変わる。2巡目の点検で区分IIIまたはIVと判定された橋梁について、2025年度末時点でどこまで手が入ったかを示したのが次の表だ。

管理者 措置が必要な橋梁数 着手済 着手率 完了率
国土交通省 3,684 3,370 91% 52%
高速道路会社 2,725 2,157 79% 52%
都道府県・政令市等 16,907 13,653 81% 49%
市区町村 31,587 19,888 63% 43%
合計 54,903 39,068 71% 46%
国土交通省「道路メンテナンス年報(3巡目2年目)」令和8年8月26日より、2巡目点検で判定区分III・IVとされた橋梁の措置状況

措置が必要な54,903橋のうち、31,587橋は市区町村が管理している。全体の6割近くが市町村道の橋だということだ。その着手率は63パーセントで、着手できていないのは11,699橋。都道府県と政令市の81パーセント、国土交通省の91パーセントとは20ポイント以上の開きがある。区分IIIとIVの橋は次の点検までの5年以内に措置を講ずべきとされているが、年報は地方公共団体において5年以上経過しても着手できていない橋梁が約2割あると書いている。人も予算も設計を外注する相手も足りない自治体に、数のうえで最も重い負担が乗っている。

面積63.2パーセントを885市町村が持つ

その負担がどこに集まるかは、過疎地域の形を見ると分かる。総務省の過疎対策室の資料によれば、過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に基づく過疎関係市町村は885団体で、全市町村の51.5パーセントにあたる。令和2年国勢調査ベースの人口は1,167万人で全国の9.3パーセント、面積は238,675平方キロメートルで全国の63.2パーセントを占める。人口の1割に満たない自治体群が、国土の6割を超える面積を受け持っている。道路や橋はその面積の上に敷かれているため、一人あたりで支える構造物の量が都市部とはまるで違う。

指定の基準は人口減少要件と財政力要件の組み合わせで、財政力指数は直近3か年で0.51以下という線が引かれている。つまり、構造物を多く抱える自治体ほど自前の財源が細いという関係がはじめから織り込まれている。手当てとして用意されているのが過疎対策事業債で、令和8年度の計画額は6,100億円。充当率100パーセントで、元利償還金の70パーセントが交付税で措置される。ほかに公立小中学校校舎の整備などで国庫補助率をかさ上げする仕組み、所得税や法人税の減価償却の特例と地方税の課税免除に係る減収補てん措置があり、税制の特例は令和9年3月31日までが適用期限となっている。過疎地域持続的発展支援交付金は令和8年度当初予算で8億500万円、令和9年度の概算要求額は11.2億円である。この法律そのものが令和3年度から令和12年度までの時限立法で、昭和45年以来、議員立法として五次にわたり作られてきた。

畳むという選択と、学生が入れる余地

直すだけが答えではない、という方向も年報に出ている。地方公共団体が施設の集約や撤去、機能の縮小を検討した割合は、2019年度末から毎年増え続け、2025年度末時点で97パーセントに達した。国土交通省は道路メンテナンス事業補助制度で集約撤去等に取り組む自治体を支援しており、2025年度の支援先は124団体だった。使われ方が変わった橋を架け替えずに通行止めにする、二本ある橋を一本に寄せる、歩道橋を撤去する。そうした判断を住民に説明する作業が、技術の話と同じ重さで現場にある。

足元の不安も数字になっている。2025年度に発生した道路陥没は、直轄国道で101件、都道府県管理道路で1,282件、市町村管理道路で9,844件。要因としては道路排水施設の割合が高く、都市部では占用物件に起因する割合が上がる。国土交通省が2025年度に行った路面下空洞調査は2,788キロメートルで、これは全体延長の約12パーセントにすぎない。見つかった空洞のうち路面陥没の可能性が高いと判定された194箇所はすべて修繕に着手している。裏を返せば、残る9割の延長は調べられていない。

学生がここに関わる入口は、工学だけではない。どの橋を残しどれを畳むかを決める過程では、通学路としての使われ方や、集落からの移動時間、代替路の雪の積もり方といった生活側の情報が必要になる。住民への説明資料をつくる仕事も残っている。インフラを担う職場そのものの輪郭は地方のインフラを担う職場はどこか|公営企業7,837事業と33.8万人の内訳に、過疎地域の指定の仕組みは過疎地域指定の基準とは?人口要件・財政力要件と3つの区分を整理にまとめてある。若者が戻る動きと885市町村の関係は過疎化と若者のUターン|885市町村と協力隊8196人の実際で確かめられる。FLASPOが各地で進めている学生の提言プロジェクトでも、生活の側から施設の優先順位を描き直す提案は自治体に通りやすい。

よくある質問

判定区分IVと言われた橋は、通行止めになっているのですか。緊急に措置を講ずべき状態とされた施設については、通行止めや通行規制といった緊急措置が早急に行われる。2025年度末時点で区分IVの橋梁は612橋で、全体の0.1パーセントである。1巡目の682橋から徐々に減っている。

50年を超えた橋は危ないということでしょうか。年齢と判定は別の指標である。建設後50年を超えた橋梁は約24万橋に増えたが、同じ期間に区分III・IVの橋梁は69,051橋から51,046橋へ減っている。架けられた年ではなく、点検で見つかった傷みの程度で措置の順番が決まる。

自分の住む市町村の橋の状態は調べられますか。調べられる。点検と診断の結果は道路メンテナンス年報として公表され、都道府県ごとの道路メンテナンス会議でも管理者別の判定結果が資料として出されている。市町村名と判定区分別の橋梁数が載っている資料も多い。

橋を撤去するのは行政の後退ではないのですか。年報は集約や撤去、機能縮小を検討した自治体が97パーセントに達したと記しており、国も補助制度で後押ししている。限られた予算で残す施設の水準を保つための選択という位置づけで、2025年度は124団体がこの支援を受けた。

出典:国土交通省道路局国道・技術課「橋梁等の2025年度(令和7年度)点検結果をとりまとめ 〜道路メンテナンス年報(3巡目2年目)の公表〜」令和8年8月26日(報道発表、別紙PDF)、年報の一覧は国土交通省の予防保全のページ。過疎地域の数値は総務省地域力創造グループ過疎対策室「過疎地域持続的発展支援交付金について」(PDF)による。


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