「新潟で副業」に二つの意味が混ざっている
求人サイトで「新潟 副業」と打つと、県内に住む人が二つ目の仕事を探す話と、都市部に住む人が新潟の企業へ関わる話が同じ画面に並ぶ。前者は収入の足し算で、後者は人の行き来をつくる取り組みだから、使える制度も募集の出どころも別である。地域の側が「ローカル副業」と呼んでいるのは後者で、県や市が予算を付けて募集しているのもこちらだ。混ざったまま探すと、県内在住者向けのアルバイト情報と、週に数時間だけ関わる企画職の募集が同じ重みで出てきてしまう。
分けて考えるために、まず県内側の数を押さえておきたい。そのうえで外から関わる側の制度を見ると、新潟という県が今どちらの方向に力を入れているのかが見えてくる。公表されている数字はどちらも国が集めたものなので、募集ページの言葉よりも先に当たっておくと判断がぶれない。
県内で副業をしている人は5年前より減った
総務省統計局の令和4年就業構造基本調査 結果の概要によると、新潟県で副業がある人は4.5万人で、副業者比率は4.3パーセントだった。5年前の2017年は4.7万人・4.3パーセントで、人数は0.2万人減り、比率は0.1ポイント下がっている。
全国の動きは逆向きである。同じ調査で全国の副業者は304.9万人、比率は4.8パーセントで、5年前から59.8万人・0.9ポイントの増加になった。つまり全国で副業が広がった5年のあいだ、新潟県では横ばいから微減で推移した。減った県は多くなく、ほかに秋田県・山形県・宮崎県などが並ぶ。
比率そのものの高低は、副業のしやすさを直接には表さない。この点は地方の副業者比率は都市より高いの側で詳しく扱っている。ここで押さえておきたいのは、県内の労働市場のなかから副業の担い手が自然に増えてくる状況ではない、という一点である。県内企業が人手や企画の力を外から借りようとするとき、県外に住む人へ声をかける理由がここにある。
外から関わる副業は、人数が公表されている
都市部の企業に勤める人が地方自治体の仕事に関わる仕組みとして、総務省の地域活性化起業人がある。かつて「地域おこし企業人」と呼ばれていた制度で、企業派遣型・副業型・シニア型の三つの入り方があり、受入にかかる経費が特別交付税で措置される。
総務省が2026年4月24日に公表した令和7年度 地域活性化起業人の状況等では、全国で538団体・1,215人となった。前年度は439団体・871人だったので、1年で344人増えている。ところが新潟県は逆に減っていて、令和7年度は17市町村・32人である。内訳は企業派遣型29人と副業型3人で、シニア型はいない。前年度の令和6年度の状況等では15市町村・40人(企業派遣型35人、副業型5人)だったから、受け入れる市町村は2つ増え、人数は8人減ったことになる。
29人の散り方も特徴がある。1人だけ受け入れている市町村が10もあり、最も多い市でも4人にとどまる。
| 人数 | 市町村(令和7年度・企業派遣型) |
|---|---|
| 4人 | 加茂市、燕市 |
| 3人 | 上越市 |
| 2人 | 三条市、南魚沼市、関川村、粟島浦村 |
| 1人 | 新潟市、長岡市、小千谷市、糸魚川市、妙高市、阿賀野市、佐渡市、魚沼市、湯沢町、津南町 |
副業型が動いているのは県内で3つの市だけ
三つの型のうち、本業を続けながら関わるのが副業型である。令和7年度に新潟県で副業型を使ったのは小千谷市・加茂市・燕市の3市で、それぞれ1人だった。全国の副業型は299人・148団体なので、県内の割合はごく小さい。
条件が決まっているぶん、見通しは立てやすい。副業型は自治体と個人が協定を結ぶ形で、勤務は月4日以上かつ月20時間以上、受入自治体に滞在するのは月1日以上でよい。国の財政支援は報償費等100万円と旅費100万円の計200万円が一人あたりの上限になる。企業派遣型のように企業と自治体が協定を結ぶ形ではないため、送り出す会社の承諾は要るが、人事異動としての派遣にはならない。制度の骨格は地域活性化起業人の派遣はどう決まるかにまとめてある。
注意したいのは、月20時間という線が社会保険の加入要件とずれている点だ。勤務時間が週に換算して20時間へ届かない設計だと、副業先で保険に入る話にはならない。詳しくは副業型の月20時間では社会保険は動かないで扱っている。制度の人数が少ない県では、募集が出た時点で条件を読み切れるかどうかが応募の速さに直結する。
新潟市は事業として外部人材を呼んでいる
制度の枠とは別に、自治体が独自の予算で副業人材を募る動きもある。新潟市の新潟市副業関係人口創出事業は、令和5年度から都市部で副業・兼業やプロボノを希望する人に市内企業の経営課題を持ち込む形で続いている。令和8年度は一連の取組を市内外へ発信し、外部人材を受け入れる市のイメージを定着させて、副業をきっかけとした関係人口を継続的に生み、将来の移住につなげることを目標に置いた。窓口は経済部雇用・新潟暮らし推進課で、運営は市から委託を受けた事業者が担っている。
市の動きは募集だけではない。令和8年11月24日には、人手不足の解消に外部人材をどう使うかを扱う副業人材活用セミナーが朱鷺メッセで開かれる。定員180名で、副業人材を受け入れた事業者と、実際に関わった副業人材の双方が事例を話す構成になっている。受け入れる企業の側がまだ慣れていないという前提で場が組まれていることが、プログラムの並びから読み取れる。
受け入れ側の変化が数字に出た例もある。令和6年度の企業派遣型では、燕市が株式会社マイナビから人を受け入れ、市役所のオープン・カンパニーを県内自治体として初めて開催した。本格的な就職活動の前にいる大学3年生などへ向けた説明会で、仕事体験やインターンシップを通じて翌年度の採用につながる母集団をつくり、接触人数は前年度を大きく超えたと報告されている。外部人材の活用が、学生の側から見える形になった事例である。
学生がこの流れに入るとき、副業型の協定にいきなり乗ることはできない。企業に勤めている人を対象にした制度だからだ。ただし自治体が開く説明会や、企業の課題を扱うプロジェクトの見学や取材は、学年を問わず入口になる。地域との関わりを短い単位から始める形は、FLASPOが学生と地域をつなぐときに取っている考え方と重なる。
よくある質問
新潟県内に住んでいても、地域活性化起業人の副業型に応募できますか。
対象は三大都市圏などに所在する企業等に勤務する人なので、同じ道県内からの参加は原則として対象外である。県内在住で地域の仕事に関わりたい場合は、自治体の会計年度任用職員の公募や、市が実施するプロジェクト型の募集を見るほうが早い。
県内の受入人数が減ったのは、制度が使われなくなったからですか。
公表資料は増減の理由まで示していないため、断定はできない。受け入れ市町村は15から17へ増えているので、やめた自治体が多いというより、1つの自治体が複数人を受け入れる形が縮んだと読むほうが数字には合う。
募集はどこに出ますか。
副業型は受け入れる市町村のサイトに出る。新潟市のように市の事業で募る場合は、担当課のページと委託先の運営サイトの両方に情報が載る。県全体をまとめて掲載する窓口は置かれていないので、関心のある市町村を絞って定期的に見るのが現実的である。
大学1年生でも関われますか。
制度の協定には乗れないが、自治体が開く説明会や、受け入れ企業が学生向けに実施する仕事体験には学年の制限がない場合が多い。燕市のオープン・カンパニーのように、大学3年生より前の段階を想定した催しも出てきている。
県内企業が副業人材を受け入れるとき、費用はどこから出ますか。
地域活性化起業人は自治体が受け入れる仕組みなので、民間企業が直接使うものではない。新潟市の事業のように、市がプロジェクトを組んで市内企業の課題を扱う形であれば、企業側の負担は軽くなる。企業が独自に募る場合は、謝礼も交通費も自社で持つのが前提になる。
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