働きながら2週間だけ地域に住む|877人と59団体の実績を読む

夏休みの一か月を、どこで働くか

大学の長期休みに入ると、短期のアルバイトを探す学生は多い。その選択肢のなかに、都市から離れた町で働きながら数週間暮らすという枠がある。総務省の「ふるさとワーキングホリデー」は、都市部の若者などが概ね2週間から1か月のあいだ地方に滞在し、働いて収入を得ながら地域の人と交わる仕組みだ(総務省「ふるさとワーキングホリデーについて」)。

制度の説明には「稼ぎも住まいも気にすることなく、新たな地域で新たな業務経験」という一文が置かれている。つまり、滞在先の確保や移動は自治体の側が組み立て、参加者は仕事と地域での時間に集中する設計になっている。就労先として並ぶのは農業、旅館・ホテル、酒造業、窯業などの製造業、スキー場や伝統工芸販売といった観光業で、いずれも繁忙期の手が足りない現場である。

働く以外の時間にも、受け入れ側は中身を用意している。先輩移住者や住民との意見交換会、歴史や産業を学ぶツアー、地域イベントの運営体験、地元大学生が運営するゲストハウスへの宿泊などだ。短期就業と書くと労働力の提供のように読めるが、制度の組み立ては「働く」と「関わる」を半分ずつ置いている。

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参加した人数は、9年で6,856人にとどまる

この仕組みは平成28年4月に始まり、令和8年3月までの受入実績は6,856人である。9年かけてこの数字なので、1年あたりは700人台という規模感になる。大学生の人口から見れば、ごく細い入口であることは最初に押さえておきたい。

直近5年の推移を見ると、参加者は増えているが自治体の数は減った年がある。実施自治体は令和6年度の66団体から令和7年度の59団体へと7団体減っているのに、参加者は858人から877人へ増えた。1団体あたりの受け入れが厚くなっている、という読み方ができる。

年度 参加者数 実施自治体数
令和3年度 303人 29団体
令和4年度 570人 49団体
令和5年度 756人 57団体
令和6年度 858人 66団体
令和7年度 877人 59団体

令和7年度に実施した自治体の並びを見ると、高知県が12市町村、北海道が7市町と厚い。岩手県・福島県・鳥取県・沖縄県は県そのものが実施団体になっている。逆に、三大都市圏の都府県名はほとんど出てこない。これは制度の財政措置が対象を絞っているためで、次の項で触れる。

自治体が使える金額には、滞在日数で決まる上限がある

受け入れ側の負担は特別交付税で見られている。対象は都道府県と、三大都市圏外の市町村、そして大都市圏内でも条件不利地域などに該当する市町村で、あわせて1,433市町村が対象に入る。措置率は0.5で、財政力に応じた補正がかかる。

特徴は上限の立て方だ。1団体あたり15,000千円、つまり1,500万円を基礎として、そこに「5千円×全参加者の延べ滞在日数」を足した額が対象経費の上限になる。受け入れた人数と滞在の長さが、そのまま使える枠の大きさに反映される形である。

対象経費は3つに分かれる。募集・受付(募集に係る経費、応募者との面談や受入企業との調整)、受入準備(受入準備と滞在場所の確保に要する経費)、活動支援(実施団体内の移動費や宿泊費、交流イベントの経費)だ。参加者の飲食費は対象外と明記されている。宿と移動は見るが、食事は自分で、という線引きになる。

国の予算そのものは大きくない。令和8年度当初予算額は30百万円、令和9年度の概算要求額も30百万円である。参加者募集のための合同説明会をオンラインで年4回程度開くこと、新規に取り組む自治体への伴走支援、ポータルサイトでのマッチングが、この予算の中身だ。お金のほとんどは特別交付税を通じて自治体側に回る構造になっている。

終わった後に残るものを、自治体は別に設計している

参加者の満足度について、総務省は約9割が満足、約9割が再訪意向を示したと記している。問題は、再訪意向が実際の再訪に変わるかどうかだ。令和7年度の実績が多い自治体は、そこを別の仕掛けで埋めている。

宮城県気仙沼市は110人を受け入れ、都市圏で定期的にファンミーティングを開いている。滞在が終わった後に都市側で会う場をつくる、という発想だ。新潟県南魚沼市の48人のうちには、地域運営組織に加入し翌年度以降は事務局スタッフとして動く人が出ている。受け入れられた側が受け入れる側に回る形である。

長野県伊那市の32人は、入口の設計が違う。元参加者である地域おこし協力隊員が応募者に事前面談を行い、移住意向の強い人を受け入れている。徳島県鳴門市の50人からは、移住して起業し特産品「鳴門らっきょう」の加工品開発に取り組みながら、受入事業者として市に協力する人が出た。茨城県水戸市は4人という小さな規模だが、地域企業と連携して内定直結型のプログラムを設計している。

制度の説明書きには、参加後に移住・定住や地域おこし協力隊として活躍する例もある、と書かれている。短期の就業そのものが目的ではなく、関わりの最初の一歩として置かれていることが、これらの事例からも読み取れる。地域との関わり方をもう少し長い目で考えたい人は、お試し移住の制度と参加者数と並べて見ると、滞在の長さごとの選択肢が整理しやすい。

学生が申し込むときに確かめたい4点

最初に見るのは時期である。合同説明会はオンラインで年4回程度、11月に複数回という形で開かれている。令和8年度の案内では11月11日と11月25日の19時から21時に設定され、登壇自治体が募集内容を紹介する。既に実施している自治体向けの振り返り説明会は10月21日の14時からで、こちらは自治体側の会だ。

次に、滞在の長さと単位を確かめる。概ね2週間から1か月という幅があり、授業期間と重ねるのは難しい。夏休みや春休みを前提に、往復の移動日を含めて日程を組むことになる。

3つめは収入の出どころだ。参加者は受入事業者のもとで働いて収入を得る。自治体が払う交通費や宿泊費の扱いは団体ごとに違い、飲食費は制度上の対象経費から外れている。募集要項で、どこまでが自己負担かを事前に読む必要がある。

4つめは、終わった後をどうするかである。先に挙げた自治体のように、参加後の場が用意されている地域と、滞在期間だけで完結する地域がある。関わりを続けたいなら、受け入れ実績が厚く、事務局や地域運営組織に関わる道が見えている団体を選ぶほうが早い。地域と仕事の関わりを就職活動の側から考える人は、FLASPOのような就職支援の情報と並行して見ておくと、滞在経験の置き場所が決まりやすい。

よくある質問

まず費用について。働いて収入を得る前提の制度なので、滞在中の生活費を賄える設計になっている。ただし、往復の交通費や食費がどこまで支援されるかは団体ごとに異なる。対象経費に飲食費が含まれないことは国の資料に明記されているため、食事は自己負担と考えておくのが安全だ。

次に、応募できる人の範囲。制度の説明は「都市部の若者など」としており、学生限定ではない。社会人の参加も想定されているが、2週間から1か月という長さを確保できるかどうかが現実の制約になる。

3つめに、就業先の選び方。農業、宿泊、酒造、製造、観光と幅があり、同じ自治体でも年度によって受入事業者が変わる。やりたい仕事から探すよりも、実施自治体の一覧から地域を決め、その年の募集内容を見るほうが確実だ。令和7年度は59団体が実施しており、高知県や北海道のように複数の市町村が並ぶ県もある。

4つめに、関係人口との関係。総務省はこの事業を、将来の移住・定住につなげるほか、まちの関係人口にすることを狙いとして位置づけている。短期間の就業は、その入口として制度に組み込まれている。制度の全体像や参加の流れを先に知りたい場合は、ふるさとワーキングホリデーの参加の流れと費用・支援を確認してから、個別の募集要項に進むとよい。


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