内向きだという評価は、どの数字から来ているのか
いまの若い世代は海外に出たがらない、という言い方は十年以上繰り返されてきた。留学の減少を報じる記事や、企業の採用担当者の嘆きとともに語られ、ほとんど前提として扱われている場面も多い。
ただ、この評価がどの調査のどの項目を根拠にしているのかは、意外に共有されていない。意識を聞いた結果なのか、実際に渡航した人数なのか、比べている相手が国内の過去なのか他国の同世代なのかで、結論の意味はまったく変わる。
そこで二種類の数字を並べてみたい。一つは5か国の同世代に同じ質問をした国際比較の意識調査、もう一つは実際に留学を始めた人数の統計である。両者は必ずしも同じ方向を指していない。
ずれているという事実そのものが手がかりになる。意識が低いから行動が起きないのか、行動の条件が整わないから意識が縮むのかで、打つ手は変わってくる。順に確かめていく。
「国際的に活躍している」は日本21.4、米国58.6
こども家庭庁の令和5年度「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」は、日本、アメリカ、ドイツ、フランス、スウェーデンの5か国で、満13歳から満29歳までを対象に令和5年11月から12月にかけて実施された。日本の回答者は1,089人である。
40歳くらいになったときの将来像を項目ごとに聞いた設問に、国際的に活躍しているというものがある。そう思うとどちらかといえばそう思うを合計した割合は、日本で21.4パーセントだった。同じ質問に対する他国の数字と並べると、位置がはっきりする。
| 国 | 国際的に活躍している | 外国に住んでいる |
|---|---|---|
| 日本(n=1,089) | 21.4% | 12.9% |
| アメリカ(n=1,064) | 58.6% | 41.4% |
| ドイツ(n=1,078) | 53.4% | 41.1% |
| フランス(n=1,026) | 52.9% | 49.5% |
| スウェーデン(n=1,026) | 55.6% | 47.8% |
他の4か国はいずれも5割を超え、日本だけが2割台に沈む。差はおよそ30ポイントから37ポイントで、誤差では説明しきれない幅である。内向きだという評価の出どころとしては、この種の国際比較が最も分かりやすい形をしている。
ただし同じ設問の時系列も見ておく必要がある。平成30年度の調査では日本の割合は14.1パーセントで、当時の項目名は世界で活躍しているだった。文言の違いを割り引いても、7.3ポイント上がっている。国際比較では最下位でありながら、自国の過去との比較では上向いているという二重の姿になる。
動いた項目と、5年間ほぼ動かなかった項目
同じ設問群の中で、もう一つ国際的な項目がある。外国に住んでいるという将来像である。そう思う側の合計は日本で12.9パーセント、そう思わない側が87.1パーセントを占めた。平成30年度調査は12.1パーセントだったので、5年を経ても0.8ポイントしか動いていない。
他国の同じ項目は、フランスが49.5パーセント、スウェーデンが47.8パーセント、アメリカが41.4パーセント、ドイツが41.1パーセントである。日本の12.9パーセントは、最も近いドイツとの間にも28ポイント以上の差がある。
二つの項目の動き方の違いは示唆的である。活躍の舞台を国際的なものとして思い描く割合は7.3ポイント伸びたのに、生活の場を国外に移す想像はほとんど増えなかった。国際的に働くことと外国で暮らすことが、同じものとして結びついていないと読める。
この分離は、必ずしも後退を意味しない。遠隔での共同作業が当たり前になり、国内に居ながら国外と仕事をする形が広がれば、移住を伴わない国際性という選択肢は現実味を増す。移住の意向の低さだけを取り出して意欲の欠如と読むと、判断を誤りやすい。
行動の側は増えて、91,054人になった
では実際の行動はどうか。日本学生支援機構の2024年度日本人学生留学状況調査によると、2024年度に海外への留学を開始した日本人学生は91,054人で、前年度より1,875人、2.1パーセント増えた。大学間の協定等に基づく留学が57,262人で702人増、協定等に基づかない留学が33,792人で1,173人増である。
期間別では偏りが強い。1か月未満の短期が60,301人を占め、前年度から3,257人、5.7パーセント増えた一方、それ以外の期間はいずれも前年度を下回っている。増加分はほぼすべて短期に集まっており、腰を据えた長期の留学は細り続けている。
全体の水準も回復の途上にある。2018年度に記録した115,146人という最高値には、2024年度の91,054人はまだ24,000人あまり届いていない。感染症の影響で一度ほぼ消えた流れが戻りつつあるが、元の高さには達していないという位置づけになる。
意識調査と並べると、ねじれが見える。外国に住みたいと考える割合は5年間ほぼ横ばいだったのに、実際に留学を開始した人数は増えている。短期の渡航は移住の意向を必要としないため、ここでも移住と国際経験が切り離されていることが確かめられる。費用と難易度から現実的な選択肢を比べるなら、学生が国際交流を始める7つの方法が入口の地図として使える。
出ていく流れより、入ってくる流れのほうが太い
若い世代の国際性を測るとき、出国する人数だけを見ていると半分を取りこぼす。出入国在留管理庁の令和6年末現在における在留外国人数では、留学の在留資格で日本に暮らす人が402,134人に上り、前年末から61,251人増えている。在留外国人の総数は3,768,977人で、10.5パーセントの増加だった。
数の大きさを比べると構図が反転する。海外へ出た日本人学生が91,054人である一方、留学で日本にいる人は40万人を超える。比率でいえば4倍以上で、国内のキャンパスにいる外国人学生と関わるほうが、人数の上では圧倒的に機会が多い。
実態として、若い世代はすでに接点の側に立っている。出入国在留管理庁の共生に関する意識調査では、通う学校に外国人がいて知り合いだと答えた割合が18歳から19歳で42.6パーセント、20歳から24歳で36.8パーセントだった。全年代の平均は11.5パーセントなので、三倍から四倍の開きがある。
つまり内向きという評価は、渡航を伴う国際経験という一種類の定義に依存している。定義を国内での接点まで広げれば、若い世代の数字はむしろ高い。地域の担い手として若者の関わりを設計するFLASPOの視点でも、入口は海外ではなく手近な場に置かれる。語学との関係は英語学習と若者の関係とは?今の時代に学ぶ意味を考える、地域側の人の動きは地域経済と若者|20代前半が動かす転入超過8万人の構造で補える。
よくある質問
若者が内向きだという指摘は、結局のところ正しいのでしょうか
測り方で答えが変わる。5か国比較では国際的に活躍している将来像が日本で21.4パーセントと最も低く、この面では指摘が当たる。一方で同じ項目は平成30年度の14.1パーセントから上がり、留学開始者数も2024年度に91,054人へ増えた。他国との比較では低く、過去との比較では上向きというのが実態に近い。
短期留学が増えて長期が減っているのは問題ですか
一概には言えない。1か月未満が60,301人まで増え、他の期間が減ったという偏りは、費用と学業日程の制約が強まった結果とも読める。短期で得られるものと長期で得られるものは別なので、短期を入口として設計し、長期の選択肢を閉じないことが実務的な対応になる。
海外に住みたいと思わないのは、意欲が低いということでしょうか
同じ意味とは限らない。外国に住んでいるという項目は5年で0.8ポイントしか動かなかったのに、国際的に活躍している項目は7.3ポイント上がった。居住地を移すかどうかと、国境を越えて働くかどうかが別の問いとして扱われている。移住の意向だけを指標にすると実態を見誤る。
海外に行かずに国際的な経験を積むことはできますか
人数の面では国内のほうが機会が多い。留学の在留資格で日本にいる人は402,134人で、海外へ出た日本人学生91,054人の4倍以上にあたる。通う学校に外国人がいて知り合いだと答えた18歳から19歳が42.6パーセントという結果も、接点が学内に存在することを裏づけている。
就職で評価されるのは、やはり長期留学の経験でしょうか
期間の長さが単独で評価されるとは限らない。協定等に基づかない留学が33,792人、基づくものが57,262人という内訳のとおり、制度の使い方は人によって異なる。何を決めて、どこで行き詰まり、どう処理したかを言語化できるかどうかが、期間よりも説明の質を左右する。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
