「副業で地域に関わる」制度の実数
本業を続けながら地方の仕事を受ける働き方は、求人サイトの特集でも定番になった。制度として整っているものを数えると、規模はまだ小さい。総務省の地域活性化起業人は、三大都市圏などの企業の社員を自治体が受け入れる仕組みで、令和6年度の人数は871人だった。内訳は企業から派遣される企業派遣型が780人、個人が自治体と契約する副業型が91人である。受け入れた自治体は439団体で、企業派遣型が421団体、副業型が45団体だ。
副業型は令和6年度から対象に加わった枠で、勤務日数と時間は月4日以上かつ月20時間以上、受入自治体での滞在日数は月1日以上という条件がある。令和7年4月からは、企業を退職した個人を対象にするシニア型も設けられた。副業型が取り組んだ分野は観光が19人、DXが17人、地域経済活性化が15人と続く。
91人という数は、求人媒体で見かける「地域と関わる副業」の印象とずれる。特別交付税の対象になるこの制度の枠に入っているのが91人で、民間のマッチングを通じた契約はここに現れない。それでも、自治体が予算をつけて迎えた副業人材の規模としては、この数字が現時点の輪郭になる。
年齢で見ると副業型は30代から40代の制度
同じ資料には年齢構成が載っている。副業型91人の内訳は、20代が15人で16.5%、30代が31人で34.1%、40代が25人で27.5%、50代が13人で14.3%、60歳以上が7人で7.7%。30代と40代で6割を占める構成だ。企業派遣型780人では20代が98人の12.6%にとどまり、50代の219人が最も多い。
| 年齢 | 地域活性化起業人・副業型 | 同・企業派遣型 | 地域おこし協力隊 |
|---|---|---|---|
| 19歳以下 | 該当なし | 該当なし | 0.3% |
| 20代 | 16.5%(15人) | 12.6%(98人) | 33.6% |
| 30代 | 34.1%(31人) | 24.1%(188人) | 30.1% |
| 40代 | 27.5%(25人) | 25.9%(202人) | 20.1% |
| 50代 | 14.3%(13人) | 28.1%(219人) | 11.5% |
| 60歳以上 | 7.7%(7人) | 9.4%(73人) | 4.4% |
| 全体の人数 | 91人 | 780人 | 8,196人 |
この偏りには理由がある。副業型の前提は、企業に所属している社員または退職した個人が自治体と契約することだ。自治体が任せたい仕事は観光の売り込み方やDXの進め方で、社内で担当した経験がそのまま価値になる。経験を買う制度である以上、職歴の浅い20代には門が狭い。男女比も副業型は男性85.7%、女性14.3%で、全体の男性81.9%を上回っている。
協力隊では20代が3分の1を占める
同じ総務省の制度でも、年齢の分布はまるで違う。令和7年度の地域おこし協力隊は8,196人が1,187自治体で活動し、年齢構成は20代が33.6%、30代が30.1%で、合わせて6割を超える。19歳以下も0.3%いる。男女比は男性59.7%、女性40.3%で、副業型より女性の割合が高い。
協力隊は自治体が隊員として委嘱または雇用し、報償費などの形で生活できる水準の収入が出る。経験よりも、任期の3年間を地域で過ごす意思が問われる設計だ。だからこそ20代が入りやすく、実際に3分の1を占めている。人数と受入自治体の関係は受入自治体数と年齢構成から読み直すの記事が詳しい。
二つを並べると、若い世代に開いているのは「経験を売る関わり方」ではなく「時間を預ける関わり方」だと分かる。副業という言葉で探すと前者しか出てこないため、20代は入口が無いように見えてしまう。実際には名前が違うところに枠がある。
学生と20代に開いている有償の入口
報酬を受けながら短期間だけ地域に入る仕組みは、ここ数年で増えた。ふるさとワーキングホリデーは2週間から1か月程度、地元の農家や企業の業務に従事して収入を得る取組で、令和6年度は66団体が実施し858名が参加した。平成28年4月から令和7年3月までの累計は5,979名。参加者アンケートでは99%が満足と答え、97%が再訪の意向を示している。令和5年度は57団体で756名、令和4年度は49団体で572名だったので、受け入れる自治体も参加者も増え続けている。
協力隊の側にも短い入口が用意された。数日から2週間ほどの「おためし地域おこし協力隊」は令和7年度に1,450人、学生も対象にした「地域おこし協力隊インターン」は1,414人が参加している。インターンは令和5年度の393人から2年で3.6倍に伸びた。この二つの性格はおためしとインターンという入口で整理されている。
令和7年度からは、大学等と連携して学生のフィールドワークを受け入れる「ふるさとミライカレッジ」も特別交付税の対象になった。学生のフィールドワークは概ね14日以上で、複数回に分けた滞在も認められる。先に始まった制度の実務はふるさとワーキングホリデーとはの記事で確かめられる。地域と学生の接点を追うFLASPOから見ても、滞在日数で区切られた枠が増えたことは、学期の合間に地域へ入る計画が立てやすくなったという意味を持つ。
関係人口の全体像のなかで、どこを狙うか
国土交通省が令和7年6月に公表した調査では、全国の18歳以上の居住者のうち約2,263万人、2割強が特定の地域と継続的に関わっていると推計された。訪問を伴う関係人口が約18%の1,884万人、訪問を伴わない関わりが約4%の379万人である。有効回答は118,963人で、調査は令和5年9月から10月に行われた。
この調査には関わり方の類型もあり、現地で働く就労型とテレワークの就労型は、年間の訪問日数が8日以上の人が約半数を占める。働いて関わる形は訪問の回数が多くなり、そのぶん時間と交通費がかかる。関わりを持ちたい人が挙げた改善点の上位も、仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保が27.4%、移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減が26.7%、交通の利便性の改善が26.4%だった。
20代が組み立てを考えるなら、順序は逆から見るとよい。まず滞在費が出る短期の枠で地域に入り、受け入れ側と関係を作る。そこで覚えた産業や事情が職歴になり、数年後に副業型のような経験を前提とする枠へ手が届く。副業型91人のうち30代が31人という分布は、その道筋を通った人が含まれている結果とも読める。
よくある疑問
学生のうちに地域活性化起業人の副業型で関わることはできるのか。制度の要件は、自治体と、企業に所属する社員または所属していた個人が契約することだ。学生は想定されていない。学生が報酬を受けて関わる枠としては、ふるさとワーキングホリデーや協力隊インターンのほうが対象に合う。
副業型の91人という数は今後増えるのか。令和6年度に始まった枠であり、同じ年度に45団体が利用した段階にある。企業派遣型は780人まで伸びているので、自治体が契約の型を覚えるにつれて広がる余地はある。ただ、報酬の上限などの枠組みは特別交付税の措置に沿って決まるため、民間のマッチングほど速くは動かない。
短期の滞在は履歴になるのか。ふるさとワーキングホリデーは地元企業との労働契約を結んで働く形なので、職務経験として説明できる。参加後に同じ地域へ移住した人や、協力隊として戻った人の例も報告されている。関わった地域で何を担ったかを自分の言葉で語れるかどうかが、次の選考での差になる。
数字の出どころはどこか。副業型と企業派遣型の人数と年齢構成は総務省の地域活性化起業人についての資料、協力隊の人数と年齢構成は令和7年度の隊員数等についての資料に載っている。短期の枠はふるさとミライカレッジとふるさとワーキングホリデーについての資料、関係人口の推計は国土交通省の地域との関わりについてのアンケートが一次情報になる。
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