漁業に外から関わる|関係人口の受け皿としての海の仕事を数字で見る

十一万四千人という数の外側に、関わる人がいる

海の近くの町で手伝いをした学生が、自分は漁業に関わったことになるのかと迷うことがある。統計の側の答えははっきりしている。令和七年度の水産白書によれば、令和六年の漁業就業者数は十一万四千八百二十人で、前年から五・四パーセント減った。この「漁業就業者」とは、満十五歳以上で過去一年間に漁業の海上作業に三十日以上従事した者を指す。

三十日という線が引かれているため、夏休みに一週間通った学生や、月に一度だけ手伝いに行く人は、この十一万四千八百二十人には入らない。担い手の数が減り続けている一方で、関わっている人の総数は統計に出てこない。地域の側が「人が足りない」と言いながら、外から来る人を数えられないのはこの構造による。関係人口という言葉の整理は関係人口とはの記事に譲る。

数字を扱うときは、調べ方の違いにも注意が要る。出どころは農林水産省の漁業センサスと漁業構造動態調査で、センサスは五年ごと、動態調査はその間の年を埋める形で行われている。白書の注記は、平成二十年以降は雇い主である漁業経営体の側から調べたため、それ以前の数字とは連続しないとも書いている。単年の増減だけを取り出して語ると見誤りやすい箇所である。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

新しく入る人は年に千七百人ほどで、入口は二つある

毎年どれくらいの人が新しく漁業に入っているのか。白書の数え方では、令和六年度の新規漁業就業者数は千七百五十四人で、前年度の千七百三十三人から一・二パーセント増えた。おおむね千七百人程度で横ばいという状態が続いている。このうち三十九歳以下が占める割合は六割から七割で推移しており、新しく入る層は若い。

就業の形は二つに分かれる。雇用されて働く人が令和六年度は千七十一人で、前年度の千百五十人から六・九パーセント減った。独立や自営を目指す人は五百九十一人で、前年度の五百七十六人から二・六パーセント増えている。前者は漁業会社や養殖の経営体に入る道で、後者は船と漁業権を自分で持つ道である。学生が最初に触れるのは、ほぼ前者の側になる。

注目したいのは、新しく入る人の出身である。一つ前の年度版の白書は、新規就業者のうち他の産業から移ってきた人がおおむね七割を占めると書いている。漁家の子が継ぐ形だけでは数が足りなくなり、外から来た人が担い手の多数派になっている。つまり、外部から関わる人を受け入れる経験は、すでに現場の側に積まれている。

組合員になる日数は、法律が九十日から百二十日の幅で決める

関わりを深めていくと、どこかで制度の線に当たる。漁業の場合それは漁協の組合員資格である。水産業協同組合法の第十八条は、組合の地区内に住所を持ち、かつ漁業を営みまたはこれに従事する日数が一年を通じて九十日から百二十日までの間で定款に定める日数を超える漁民を、組合員の資格を持つ者としている。

幅があるのは、具体的な日数を各組合の定款に委ねているからである。九十日を超えればよい組合もあり、百二十日に近い線を引いている組合もある。河川や湖沼の内水面の組合では、採捕や養殖をする日数が三十日から九十日までの間で定款に定める日数を超えればよいと別に定められており、海の組合より入口が低い。

関わりの段階 年間の日数の目安 そこで変わること 根拠
体験・インターン・手伝い 数日から数週間 統計にも制度にも現れない 受入側の判断
漁業就業者として数えられる 海上作業三十日以上 漁業就業者数に含まれる 漁業センサス・漁業構造動態調査の定義
漁協の組合員になりうる 九十日から百二十日を超える 組合員として事業と漁業権に関わる 水産業協同組合法第十八条第一項
内水面の組合の場合 三十日から九十日を超える 同じく組合員の資格 同条第二項

同じ条文の第五項には、水産加工業者や遊漁船業を営む者なども、定款で定めれば資格を持てると書かれている。獲る人だけが組合の構成員ではない。加工や観光の側から関わる経路も、法律の中に用意されている。

漁港そのものが、外の人に開かれはじめた

受け入れの側でも制度が動いた。水産庁が進めている「海業」は、海や漁村の地域資源の価値や魅力を活用する事業であって、国内外からの多様なニーズに応えることで地域のにぎわいや所得と雇用を生み出すものと定義されている。これを進めるため、漁港漁場整備法と水産業協同組合法の一部を改正する法律が令和五年五月二十六日に公布された。

改正で生まれたのが漁港施設等活用事業である。漁業での利用を確保したうえで、漁港の施設や区域内の水域、公共空地を使って水産物の消費を増やしたり交流を促したりする仕組みで、施設の貸付けや水域の長期の占用ができるようになった。水産庁の海業の推進のページには、この事業を進めるための活用推進計画が策定された漁港が並んでおり、令和八年九月までに九つの漁港が名前を連ねている。

水産庁は、五年間でおおむね五百件の漁港における新たな取組を目標に掲げ、支援する地区を決めて助言や情報提供を行っている。飲食や直売、体験の受け入れが漁港の中で成り立つようになれば、外から来る人が通える場所が増える。離島での活動の入口については離島で活動する大学生の記事でも触れた。

学生が最初に踏める段は、相談会と研修の側にある

では、何から始められるのか。水産庁は、漁業の経験がない人でも就業して定着できるよう、全国各地での漁業就業相談会の開催とインターンシップの受け入れを支援している。漁業学校で学ぶ人への資金の交付や、就業した後の現場での長期研修も支援の対象になっている。段階ごとに別の制度が用意されている形である。

就業の情報をまとめている窓口としては、一般社団法人全国漁業就業者確保育成センターが運営する漁師ドットコムがある。求人と相談会の日程が載っているので、まだ就業を決めていない段階でも、どの地域がどんな人を探しているのかを眺めるには向いている。学生のうちに一度現場へ行ってみるなら、相談会で直接話を聞く経路が最も早い。

沿岸の仕事は海の上だけではない。水揚げ後の仕分けや選別のような陸上の作業では女性の割合が約三十四パーセント、水産加工業では約五十八パーセントを占めると白書は書いている。海上の作業に出なくても関わる場所はある。地域との関わり方を広く比べたいときは、FLASPOのような助走の場も選択に入れておくとよい。

よくある質問

漁業の経験がまったくなくても関われるのか。新規就業者のうち七割程度が他の産業から移ってきた人であり、経験のない人を受け入れる仕組みは制度の側にも用意されている。相談会やインターンシップの支援、漁業学校、就業後の長期研修と段階が分かれている。

漁協に入らないと漁はできないのか。沿岸の漁場は漁業権の下にあり、その行使は組合を通じて管理されている。組合員の資格には住所と従事日数の要件があるため、短期の関わりでは組合員にはならない。体験や研修として受け入れてもらう形が入口になる。

海の近くに住んでいなくても続けられるのか。海業の枠組みで漁港に人を呼ぶ取組が増えているため、訪れる形の関わりは広がっている。ただし漁業就業者として数えられるには海上作業三十日という線があり、通いで越えるのは簡単ではない。関わりの段階を分けて考えたほうが現実的である。

大学の活動として関わる場合に気をつけることは何か。漁港も漁場も利用の調整が細かく決まっている場所で、勝手に立ち入れる区域ではない。活用推進計画が策定された漁港のように、外部の利用を前提に整えられた場所から当たるほうが話が通りやすい。窓口は漁港管理者である都道府県や市町村になる。

数字はどこで確かめればよいか。就業者数と新規就業者数は水産白書の本文と図表に、根拠となる調査名まで書かれている。組合員の要件は水産業協同組合法の条文、漁港の活用は水産庁の海業のページで、それぞれ原文に当たれる。年度版が変わると数字も入れ替わるので、引用するときは版を確かめておきたい。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。