地域おこし協力隊の卒業後に定住できるか|7割が残る地域の条件

地域おこし協力隊の卒業後に定住できるか|7割が残る地域の条件

「7割が定住」という見出しを、そのまま受け取る前に

募集説明会でよく示される数字がある。地域おこし協力隊は任期終了後に七割が地域へ残る、というものだ。心強い数字ではあるが、どこからどこまでを定住と数えているのかを知らないまま受け取ると、任期が終わる頃に認識のずれが出てくる。

総務省が2026年4月24日に公表した令和7年度 地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果は、直近五年間(令和2年4月1日から令和7年3月31日まで)に任期を終えた8,762人の行き先を次のように分けている。

任期終了後の居住地 人数 割合
活動地と同一市町村内に定住 5,038人 57.5%
活動地の近隣市町村内に定住 1,125人 12.8%
他の地域に転出 2,013人 23.0%
その他 75人 0.9%
不明 511人 5.8%
(うち同じ地域に定住=上二段の合計) 6,163人 70.3%
出典:総務省「令和7年度 地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果」

七割という数字は、同一市町村と近隣市町村を足した6,163人のことである。活動していたその町にそのまま住み続けた人に限れば57.5%で、二人に一人強という数え方になる。さらに行き先が追えていない人が511人いる。受け入れ自治体が把握しきれなかった分なので、この層をどちらに寄せるかで印象はまた変わる。なお任期終了者は累計で15,045人に達しており、前回の調査から2,363人増えた。母数そのものが毎年太っている制度でもある。

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最初に詰まるのは、たいてい住まいである

任期中は自治体が借り上げた住宅に住み、家賃の負担がほとんどない。この状態が終わる日は委嘱の終わりと同じ日に来る。退去の期限が決まってから物件を探し始めると、選択肢がないまま隣の市街地へ出ることになり、結果として同一市町村の定住から外れる。

過疎地域で空き家が余っているという話と、すぐ住める家が見つかるという話は別物である。相続の名義が整理されていない、仏壇や家財が残っている、水回りが使えない。貸し出せる状態にするまでに数十万円から数百万円かかることは珍しくない。全国版空き家・空き地バンクのような横断して探せる仕組みも整ってきたが、掲載されるのは手続きが済んだ物件だけで、実際に動いている物件の多くは集落の中で先に話がついている。

制度の後押しもある。総務省の地域おこし協力隊についての資料には、任期終了後の隊員が定住するための空き家の改修に要する経費について、措置率0.5の特別交付税措置が示されている。自治体が改修費を出す前提があれば、住める家の数は増える。この措置を使った実績があるかどうかを任期の二年目に聞いておくと、三年目の動きがまったく変わる。

収入を一本に絞らない人のほうが、結果として残っている

住まいの次に来るのが生計である。同じ調査で、同一市町村内に定住した5,038人のなりわいを見ると、起業が2,296人(45.6%)、就業が1,753人(34.8%)、就農・就林が583人(11.6%)、事業承継が70人(1.4%)、その他が181人(3.6%)、不明が155人(3.1%)となっている。

ここで注意したいのは、調査が一人につき主たるなりわいを一つ選ぶ形式だという点である。現場で聞くと、ゲストハウスを営みながら冬は役場の嘱託で働く、農業をしながら集落支援員の報酬を受け取るというように、複数の収入源を組み合わせている人が多い。条件不利地域では一つの仕事で年収を満たすことが難しく、季節や曜日で仕事を入れ替える働き方のほうが現実に合っている。

任期中の報償費に慣れた感覚のまま計画を立てると、ここで落差が出る。特別交付税措置は隊員一人あたり550万円を上限とし、その内訳は報償費等が350万円、その他の活動経費が200万円とされている。任期後にこの水準を一本の仕事で置き換えようとするより、三つの収入を足して暮らしが回る形を先に描いたほうが無理がない。

同じ町に残るか、隣の町に移るか

近隣市町村へ移った1,125人を失敗と見る必要はない。子どもの学校、配偶者の勤め先、医療機関までの距離。生活の条件を満たす場所が活動地から車で三十分の町にあるなら、そちらを選ぶのは合理的である。地域との関係は続いたまま、寝る場所だけが隣町に移るという形は実際に多い。

転出した2,013人についても、全員が地域と縁を切ったわけではない。このうち228人は、転出後も活動地と関わりのある地域協力活動等に従事していると調査は注記している。離れた場所から仕事で関わり続ける関係人口としての道が、数字の上でも確認できる。

都道府県ごとの定住率には幅があり、高いところでは広島県の79.6%や北海道の78.3%、低いところでは宮崎県の55.6%や秋田県の55.9%という具合に、上下で20ポイント以上開く。ただしこの数値は任期終了者の人数を分母にしているため、任期終了者が数人しかいない県では一人の進退で大きく振れる。北海道は1,225人のうち959人、長野県は656人のうち512人という規模で78%前後を保っており、母数の大きい地域の数字のほうが、受け入れの型ができているかどうかをよく映している。

任期のうちに決着をつけておく三つのこと

定住を選ぶかどうかの判断は、三年目に考えても間に合わない。住まいの契約、収入の組み立て、人間関係の整理という三つを、それぞれ別の時期に片づけておきたい。

住まいは二年目の後半に動く。空き家の改修には設計と工事で半年前後かかり、自治体の予算も年度単位で動くため、三年目の春に相談しても次の年度まで待つことになる。収入は二年目の通年で試す。副業として小さく売ってみて、実際にいくら残るかを一年通して確かめた人は、任期後の見通しの立て方が違う。

最後の一つは人間関係である。任期中は協力隊という肩書きが名刺代わりになり、多少の遠慮も大目に見てもらえる。その看板が外れたあと、一人の住民として付き合える相手が何人いるか。消防団や祭りの係といった、役場を通さない関係をどれだけ持てたかが効いてくる。移住先の暮らしぶりを事前に確かめたいときは、FLASPOのような地域の情報に触れられる場も併せて使うと、募集要項からは読み取れない部分が見えてくる。

任期後の進路そのものを比べたい場合は、卒業後の進路一覧と卒業後の暮らしとお金の変化が判断材料になる。

よくある質問

定住しなければ制度としての失敗なのか。そう決めつける必要はない。協力隊は地域への定住・定着を図る取組と位置づけられてはいるが、転出した人の中にも活動地と関わり続けている人が一定数いる。三年の経験を別の地域で生かす進み方も、制度の外側にあるわけではない。

定住すると家賃や住居費はどうなるのか。任期中の借り上げ住宅は委嘱の終了とともに原則として返すことになる。引き続き同じ家に住めるかどうかは所有者と自治体の間の契約次第なので、退去か継続かを二年目のうちに確認しておきたい。空き家を買い取って改修する場合は、改修費への特別交付税措置を自治体が使えるかどうかが分かれ目になる。

家族を連れて定住する場合に気をつけることは。配偶者の仕事と子どもの学校が、本人の収入より先に決まることが多い。保育園の空き、小中学校までの距離、高校の通学手段は、任期の初年度に調べておく項目である。進学の時期と任期終了の時期が重なると、選択の幅が一気に狭まる。

定住を決めたあとに気が変わったら。戻ることも移ることもできる。実際、任期終了から数年のうちに近隣市町村へ移る人もいれば、都市部へ戻ってから再び同じ地域に戻ってくる人もいる。一度決めたら動けないという前提で考えると判断が重くなりすぎるので、数年単位で見直す前提にしておいたほうが決めやすい。


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