同じ相手を応援していても、週末の過ごし方は揃わない
土曜に何をしていたかを二人に聞くと、答えが噛み合わないことがある。一人は会場に並んでいて、もう一人は自宅で配信を流しながら手帳に書き込んでいた。どちらも同じ相手を応援している。それでも行動の中身は別物で、かかる費用も、使う時間帯も、必要な体力も違う。
推し活という言葉は行動の種類をまとめて指すため、やり方の違いが隠れてしまう。始めたばかりの人が「周りと同じことができていない」と感じるのは、たいていこの隠れた差のせいだ。先に形を並べておけば、自分の生活に入る形から選べる。
作品そのものへの向き合い方を軸に分けた整理はアニメの楽しみ方にある。この記事は、応援する相手が決まっている人が、どの形で関わるかという段階を扱う。
前提として、公的な統計に「推し活」という項目はまだない。ここでは文化庁の文化に関する世論調査と総務省の令和7年版情報通信白書の数値を手がかりにする。前者は18歳以上の2万4,996人、後者は情報通信メディアの利用実態の調査結果で、どちらも全国の値である。
五つの形に分けて、入りやすい順に見る
形を分ける軸は「何が必要になるか」でよい。移動が必要なもの、通信があればできるもの、置き場所が必要なもの、相手が必要なもの、自分だけで完結するもの。この順で並べると、始めやすさの差がそのまま見える。
| 形 | 主な行動 | 必要になるもの | 始めやすさ |
|---|---|---|---|
| 現地に行く | 公演・試合・展示・舞台になった土地を訪ねる | 交通費と移動時間、日程の確保 | 低い。年に数回が現実的 |
| 配信と放送で見る | 動画共有、定額配信、テレビ、ラジオ | 通信環境と月額の費用 | 高い。日常に組み込める |
| 物を持つ | 円盤、書籍、グッズ、雑誌の切り抜き | 購入費と置き場所 | 中ほど。増え方の管理が要る |
| 人と話す | 交流サイトでの発信、同好の集まり | 相手と、誤解を招かない書き方 | 中ほど。相手次第で変わる |
| 記録する | 感想を書く、写真や日付をまとめる | 紙かアプリ、少しの手間 | 最も高い。一人で完結する |
五つを全部やる必要はない。実際には二つか三つを組み合わせている人が多く、組み合わせ方に個性が出る。現地と記録だけの人、配信と交流だけの人、物を集めることに重心がある人、どれも成立する。
注意したいのは、費用の性質が形ごとに違うことだ。現地は一度に大きく出て、配信は毎月少しずつ出る。物は買った後も置き場所という形で負担が残り、交流は金額ではなく時間と気力を使う。合計額だけを見ていると、どこが重いのか分からなくなる。
現地に行ける回数は、住んでいる場所で決まる
会場に行く形を「本気の証」のように語る空気があるが、回数を決めているのは熱意より地理だ。文化庁の調査は、自宅から1時間30分以内に行くことのできる文化施設があるかを尋ねている。あると答えた人は76.5%で、種類別では映画館が67.1%、ホール・劇場が53.6%、美術館が47.1%だった。4人に1人は、そもそも届く範囲に施設がない。
住んでいる地域の文化的環境に満足していると答えた人は33.4%にとどまる。満足していない人にその理由を尋ねると、「魅力的な活動・イベントがない」が54.0%で最も多く、「参加できる活動がない」が30.5%、「近くに文化施設がない」が27.5%と続いた。行きたくても行き先がないという状態は、個人の工夫では埋まらない。
この1年間に外出を伴う形で鑑賞しなかった人の理由も同じ方向を指す。「関心がない」が23.6%で最も高いが、次に「近所で公演や展覧会などが行われていない」が15.6%、「入場料・交通費など費用がかかり過ぎる」が14.0%と並ぶ。距離と費用が、関心の次に大きな壁になっている。
頻度の実態も押さえておきたい。直接鑑賞をした人の頻度は「年に1回程度」が49.2%、「年に数回程度」が40.3%で、「月に1〜3回程度」は7.7%にすぎない。一方で18歳から19歳では「月に1〜3回程度」が12.8%、「週に1回」が4.8%と全体より厚い。現地に通う形は、学校や住まいの立地が味方しているうちに回数を稼ぐのが現実的だ。
舞台になった土地を訪ねる形なら、公演日程に縛られずに動ける。地域ごとの回り方は京都のアニメ聖地巡礼ガイドのようなモデルコースの形で組み立てられる。
配信の形が、いまの土台になっている
家にいる時間に関わる形は、この10年で立場が変わった。総務省の令和7年版情報通信白書によると、2024年のオンデマンド型動画共有サービスの利用率は92.3%で、2014年の66.9%から26ポイント上がっている。定額の動画配信サービスは61.2%、放送局による番組配信は44.1%、ABEMAのようなリニア型は18.2%だった。インターネット経由の動画やラジオを何も利用していない人は6.3%しかいない。
応援する相手の活動が配信に乗っているなら、接する回数はここで決まる。白書の集計では、ライブ配信型の動画共有サービスの利用率は7.8%で、2017年の10.1%から下がっている。生配信を追う形は、思われているほど広い行動ではない。
文化庁の調査でも、書籍やテレビ、ラジオ、CD・DVD、インターネット配信などによる鑑賞をした人は57.5%で、外出を伴う鑑賞の45.3%を上回る。ジャンルの上位は映画が28.6%、ポップス、ロック、ジャズなどが27.2%、アニメーションが19.0%だった。
頻度の差はさらに大きい。配信などによる鑑賞では「週に複数回」が18.6%、「週に1回」が11.5%、「月に1〜3回程度」が19.9%を占める。合わせて半数が月1回以上触れている。現地が年単位の行事なら、配信は週単位の習慣だ。どちらが上という話ではなく、役割が違う。市場の側から見た内訳は音楽の楽しみ方で金額として確かめられる。
配信を土台にすると、現地に行く日の意味も変わる。普段から見ているからこそ、会場で何が違うかが分かる。順番としては、配信を習慣にしてから現地を年に数回入れる形が、費用の面でも無理が出にくい。
現地に行くと決めた日に、最初に確かめること
日程を押さえたら、次は入場券の入手経路である。ここが推し活のなかで最も損失が出やすい場所だ。国民生活センターは2022年8月4日に転売チケットの購入トラブルに関する注意喚起を公表し、相談が1年で数倍に増えたことを示している。登録された相談件数は2021年8月の71件から、2021年11月に94件、2022年5月には204件になった。
同センターが挙げる問題点は、買う側の注意不足というより画面の作りに関わる。検索結果の上部に出る転売仲介サイトの広告を公式の販売サイトと思い込んでしまうこと、仲介サイトであることが分かりにくく表示されていること、残り枚数や制限時間のカウントダウンで購入を急かされることである。急かされている最中に見分けるのは難しい。
相談の中身は三つの型に整理されている。仲介サイトと気づかないまま高額で買った例、買った券では入場できなかった例、交流サイトで知り合った個人に代金を振り込んだ後に連絡が取れなくなった例だ。三つ目は個人間の取引で、取り戻す手立てがほとんどない。
対処は手順で決めておくのが早い。検索から入らず公式サイトを先に開く、仲介を使うなら転売が禁止されていないかを確かめる、個人名義の口座への振込には応じない、困ったら消費者ホットラインの188番に相談する。この四つを決めておけば、当日の焦りに引っ張られずに済む。
訪ねる先が町や催しであれば、応援はそのまま地域との関わりになる。FLASPOが集めている若者の活動事例は、好きな場所に通う行動が地域側からどう見えているかを知る材料になる。
よくある質問
どの形から始めるのがよいか。記録する形である。費用がかからず、相手も日程も要らない。見た日付と短い感想を残すだけで、後から現地や交流に広げたときに話す材料になる。
現地に行けないのは応援が足りないせいか。そうは言えない。先の調査では、届く範囲に文化施設がない人が23.5%いて、不満の理由としても「近くに文化施設がない」が27.5%挙がっている。距離の問題を熱意の問題として引き受ける必要はない。
お金をかけずに続けられるか。続けられる。配信や放送による鑑賞は57.5%と外出を伴う鑑賞より広く、頻度でも上回っている。無料で見られる経路を軸にして、物や現地は年単位で計画する形が無理が出にくい。
交流サイトで発信するのが怖い場合はどうするか。読む側に留まる期間を置いてよい。白書の2024年の数値では、X(旧Twitter)の利用率は全体で50.3%、Instagramは60.9%だが、利用しているからといって発信しているとは限らない。見るだけの使い方も多数派の一部である。
形を変えてもよいのか。変わるのが普通である。学生のうちは現地に通い、働き始めてから配信と記録に移る、という動き方はよくある。形の移り替わりを失速と受け取らないほうが、長く続く。
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