海外旅行と若者|20代の出国率は20年で1.2ポイントしか落ちていない

海外旅行と若者|20代の出国率は20年で1.2ポイントしか落ちていない

数字の下がり方が、言われてきた向きと違う

「若者が海外に行かなくなった」という言い方は、20代の出国者数の減り方を根拠にしてきた。観光庁の検討会がまとめた資料を読むと、その減り方そのものは事実である。若者のアウトバウンド活性化に関する最終とりまとめ(平成30年7月)によると、20代の出国者数は1996年の462.9万人から2016年の281.9万人へ、39.1パーセント減った。出国日本人数全体に占める20代の割合も、27.7パーセントから16.5パーセントまで落ちている。

ところが同じ資料は、出国率の数字を並べたうえで別の結論を置いている。20代の出国率は1996年に24.6パーセント、2016年に23.4パーセントで、20年間の下げ幅は1.2ポイントにとどまる。人口に占める割合という見方をすると、ほとんど動いていない。

動いたのは分母である。20代の人口は1996年の1,882万人から2016年の1,203万人へ、36.1パーセント減っている。人数が4割近く減ったのは、同じくらいの割合の若者が出かけたうえで母数が縮んだ結果になる。検討会は、人口そのものの大幅な減少こそが出国者数の減少の直接の原因とみなすべきだと書いている。

20歳未満の人口も同じ期間に22.2パーセント減った。このまま推移すれば若い世代の出国者数はさらに減ると予測されており、人数の回復を目標に置くなら、割合を上げる以外に道がない構造になっている。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

旅券の取得率は、出国の説明にならなかった

出かけない理由をパスポートの有無に求める見方もある。これも同じ資料で検算されている。毎年の旅券発行数をその年の人口で割った旅券取得率は、20代で2001年に6.8パーセント、2016年に6.5パーセントだった。こちらも大きな変化はない。

さらに、2009年から2016年の出国日本人数と旅券保有枚数で重相関係数を算出すると0.28で、両者の間に特段の相関関係はみられないとされている。旅券を持つ人が増えれば出国が増えるという関係は、数字の上に出てこない。

他の世代と並べると、20代の位置はもう少しはっきりする。

世代 1996年の出国率 2016年の出国率
20代 24.6% 23.4%
30代 20.0% 20.7%
40代 15.8% 19.2%
50代 15.8% 19.7%
60代 11.1% 12.1%

40代と50代は20年間で3ポイントから4ポイント上がっている。微減だったのは20代だけだが、水準としては今も最上位にある。1996年の出国者数の順位は多い順に20代、40代、30代、50代だったのに対し、2016年は40代、30代、50代、20代に入れ替わった。順位の入れ替わりは、割合の変化ではなく人口構成の変化を映している。

国際比較のほうが前提としては重い。日本の出国率はここ20年ほど13パーセント程度で推移してきたとされ、100パーセントを優に超えるシンガポール、マレーシア、香港を大きく下回る。空路か海路でしか出られない台湾、韓国、オーストラリアも日本より高い。若者の数字を切り出す前に、国全体の水準が低いという土台が置かれていることになる。

行く層と行かない層に分かれていった

割合が横ばいなら何も起きていないのか、というとそうではない。検討会が引いた観光学術学会での発表によると、若者の「海外体験」の未経験率は2010年の41.7パーセントから2016年の51.8パーセントへ、約10ポイント上がっている。出国率が動かないまま未経験率が上がるのは、行く人が何度も行き、行かない人がまったく行かない形に分かれたからだと分析されている。

民間調査の数字がその形を裏打ちしている。18歳から29歳の男女に直近3年間のプライベートの海外旅行を聞くと、経験なしが77パーセント、経験ありが23パーセントだった。そのうえで今後について意向ありと答えた割合は、経験なしの層で約55パーセント、経験ありの層で約95パーセントに分かれた。

同じ調査を意欲の強さで3層に分けると、すでに行くと決まっている層と日程未定でも行くと決めている層を合わせた「積極的行動層」が12.3パーセント、機会があれば行きたい層までを含む「受け身的行動層」が52.2パーセント、行きたくない「無関心層」が35.5パーセントになる。半分強が、誘われれば動く位置にいる。

経験の有無で割り直すと差はさらに開く。経験ありでは無関心層が4.6パーセントしかないのに対し、経験なしでは44.8パーセントに達する。一度出かけたかどうかが、その後の意欲をほぼ決めていることになる。

行かない理由は、世代では分かれない

では何が足を止めているのか。検討会が引いた調査では、海外旅行に行こうと思わない理由として最も多く挙がったのは治安への懸念で、これは20代も他の世代も同じだった。阻害要因に世代による差異はないと整理されている。年齢で説明できる部分は、思われているより小さい。

差が出るのは世代ではなく経験の有無である。未経験者は、旅行費用の確保、旅券取得の手続き、航空便や宿泊施設の手配といった事前準備への懸念が強い。経験者はWi-Fiの通信環境など、現地で快適に過ごせるかどうかに関心が寄る。心配している対象がそもそも違うため、同じ案内を配っても未経験者には届かない。

余暇の使い方の側にも変化がある。20代の参加率が高いのは、SNSなどデジタルコミュニケーションツールの利用と、複合ショッピングセンターや温浴施設の訪問だった。検討会はこれを「デジタルコミュニケーション志向」と「近場行楽志向」と呼び、相対的に海外旅行の魅力度が下がっていると見ている。

一方で、海外旅行に出かけたきっかけを全世代に聞いた調査では「家族や友人に誘われた」が最も多かった。誘われれば行く層が半数を占めるという先の数字と重ねると、動かすのは広告よりも隣にいる人だという読みになる。学生が国際交流を始める7つの方法で学内の入り口から順に並べているのは、この順番を踏まえている。

国の計画に、若者の項目が独立して置かれた

政策の側は、2026年に入ってこの話を数値目標の下に置いた。観光庁が長官定例会見で配った海外旅行2,000万人に向けた取組の資料によると、2026年3月に策定された第5次観光立国推進基本計画は、日本人の海外旅行者数の目標を2030年までに2,008万人と定めている。2025年の出国日本人数は約1,473万人で、2024年より約172万人増えた。

取組は4つの柱に分かれており、2本目が「若者の国際交流の促進」である。若者が海外に触れる多様な交流機会を通じて国際的な視野を広げる機会を拡大する、という位置づけで、具体策には海外教育旅行の普及啓発と機運醸成、ワーキング・ホリデー制度の活用促進や導入国拡大の検討が並ぶ。

柱として独立しているのは、残る3本が機運醸成、各国や地域との連携、環境整備という全世代向けの枠であることと対照的である。経験の有無で意欲が決まるという先の数字を踏まえれば、最初の1回を作る相手として特定の年代を切り出す判断には理由がある。

2026年6月16日には、観光庁、外務省、日本旅行業協会、駐日外国政府観光局協議会による共同記者会見も開かれた。手続きの費用を下げる話と、行きたい気持ちを作る話が同時に動いている。学生向けの企画やコンテストを扱うFLASPOのような場も、最初の1回をどう作るかという問いの側に立っている。

よくある質問

若者の海外旅行離れは起きていないのか。出国率で見ればほぼ横ばいだが、未経験率は約10ポイント上がっている。全体の割合と個人の分布は別の話として読み分ける必要がある。

20代の出国率は他の世代より低いのか。1996年も2016年も、20代は世代別で最も高い。落ちたのは実人数と全体に占めるシェアである。

パスポートを作れば出かけるようになるのか。旅券保有枚数と出国日本人数の重相関係数は0.28で、関係は見えていない。手続きの負担は未経験者の懸念として大きいが、それだけでは動かない。

費用が最大の壁ではないのか。未経験者では旅行費用の確保が強い懸念に入るが、全世代で最も多い理由は治安への懸念だった。費用は二番目以降に置かれる種類の障壁になる。

国内の旅行とは何が違うのか。国内側の数字は別に整理している。旅行のメリットと海外旅行のメリットで、それぞれ公表資料に基づく背景を並べた。

20代以外の若い世代はどうなのか。検討会は学生や未婚者の割合が高く、生活の組み替えが利きやすい20代を主な対象に分析している。20歳未満の人口も減っているため、高校生以下の動きは別の調査で追う必要がある。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。