年齢で割ると、思っていた並びとは逆になる
「いまの若い人は上を目指さない」という言い方は、職場の雑談にまぎれて何度も出てくる。この手の印象は確かめる方法がある。厚生労働省の能力開発基本調査は、働く人が自分の意思で学んだかどうかを毎年たずねていて、結果を年齢階級ごとに出しているからだ。令和7年度の公表分、つまり令和6年度の一年間の実績では、自己啓発を行った労働者は全体で35.5パーセントだった。
年齢で割ると、20歳未満が9.5パーセント、20から29歳が41.9パーセント、30から39歳が42.8パーセントと続き、そこから40代の37.0パーセント、50代の31.0パーセント、60歳以上の21.3パーセントへ下がっていく。山は二十代と三十代にあり、十代だけが極端に低い。学校を出て働きはじめた直後に、学ぶ人の割合がいちばん大きく跳ね上がる形になっている。
| 年齢階級 | 自己啓発を行った人の割合 | 平均の延べ実施時間 |
|---|---|---|
| 20歳未満 | 9.5% | 回答数が少なく非公表 |
| 20〜29歳 | 41.9% | 55.0時間 |
| 30〜39歳 | 42.8% | 39.6時間 |
| 40〜49歳 | 37.0% | 41.3時間 |
| 50〜59歳 | 31.0% | 39.7時間 |
| 60歳以上 | 21.3% | 34.7時間 |
| 労働者全体 | 35.5% | 42.7時間 |
割合では三十代と並ぶが、時間の総量では離れている
表の右の列に目を移すと、別の輪郭が見えてくる。同じ調査が推計している平均の延べ実施時間は、20から29歳で55.0時間。30代は39.6時間、40代は41.3時間、50代は39.7時間、60歳以上は34.7時間で、二十代だけが五十時間台に乗っている。やっている人の割合では三十代とほぼ並んでいても、一人あたりが積んでいる量はひと回り大きい。
会社を通して受ける訓練も同じ向きだ。令和6年度にオフ・ジェイ・ティー、つまり業務から離れた教育訓練を受けた労働者は全体で37.3パーセントだが、20から29歳では47.5パーセントに上がる。30代と40代はそろって38.5パーセント、50代は34.6パーセント、60歳以上は24.1パーセントである。入社直後の研修がここに含まれるため、二十代は自分で学ぶ量と会社から与えられる量の両方が多い時期にあたる。
裏を返せば、この二つは同じ数年のうちに重なって押し寄せる。資格の勉強をどこに置くかを考えるとき、空いている時間を探すのではなく、研修と重ならない時期を選ぶという発想のほうが現実に合う。
入口の広さは、雇用形態と学歴で大きく開く
年齢をそろえても条件が同じにはならない。自己啓発を行った人の割合は、正社員で43.3パーセント、正社員以外で15.9パーセントと、二・七倍ほどの差がある。オフ・ジェイ・ティーの受講も正社員44.5パーセントに対し正社員以外19.4パーセントで、同じ職場にいても機会の配られ方が違う。
最終学歴でも開きがある。中学・高等学校・中等教育学校が21.5パーセント、専修学校・短大・高専が30.2パーセント、大学の文系が49.0パーセント、理系が48.3パーセント、大学院になると文系68.7パーセント、理系69.6パーセントに達する。学び続ける習慣そのものが、入口の時点で分かれていると読める数字だ。
では費用がその壁なのかというと、そこは思ったほど高くない。自己啓発を行った人の一年間の自己負担額は「0円」が41.4パーセントで最も多く、一千円以上一万円未満が20.3パーセント、一万円以上二万円未満が13.7パーセントと、二万円未満の人が八割近くを占める。平均は推計で二万八千六百円。金額よりも、始める理由と時間の確保のほうが先に立ちはだかっている。
会社が若手に向けて置いているものは、何に寄っているか
勤め先の側はどう構えているのか。厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査によると、若年正社員の育成を行っている事業所は77.9パーセント。方法は複数回答で、仕事をさせながら教えるオン・ザ・ジョブ・トレーニングが69.8パーセント、業務から離れた訓練が35.2パーセント、自己啓発への支援が33.1パーセント、ジョブローテーションが24.0パーセントという並びになる。
正社員以外の若年労働者では、順番は同じでも水準が落ちる。仕事をさせながら教える方法が56.5パーセント、業務から離れた訓練が20.2パーセント、自己啓発への支援が15.8パーセント、ジョブローテーションが9.0パーセントだった。自分の勉強に会社の補助が付くかどうかは、雇用形態でおおよそ二倍の差がつく。
定着のための対策を見ると、力の入れどころが動いているのがわかる。対策を行っている事業所は73.7パーセントで、内訳では職場での意思疎通の向上が59.7パーセント、採用前の詳細な説明が58.4パーセント、能力・適性にあった配置が55.6パーセントと続く。目を引くのは労働時間の短縮と有給休暇の取得奨励で、平成30年調査の37.8パーセントから52.9パーセントへ大きく伸びた。いっぽう教育訓練の実施・援助は49.5パーセントから48.5パーセントで横ばいである。会社が増やしたのは時間であって、訓練そのものではない。
学んだ先に置かれているのは、たいてい次の職場
同じ調査は働く本人にも聞いている。いまの会社から今後転職したいと思っている若年正社員は31.2パーセントで、平成30年の27.6パーセント、平成25年の25.7パーセントから段階的に上がってきた。年齢で見ると20から24歳が35.0パーセントで最も高く、25から29歳が33.4パーセント、30から34歳が26.6パーセント、15から19歳は20.6パーセントとなる。
思う理由の上位は、賃金の条件がよい会社にかわりたいが59.9パーセント、労働時間や休日の条件がよい会社にかわりたいが50.0パーセントだった。二十代が学んだ時間は、いまの職場で評価されるためだけでなく、動くときの持ち出しとして積まれている面がある。資格取得のメリットを数字で確かめた回で見たように、採用する側が資格を見る度合いは三割前後にとどまる。それでも持ち出せる材料が少ない年代では、相対的な重みは小さくない。
進路の形も一本ではなくなっている。会社に属さない働き方を選ぶ人の分布は若者とフリーランスの回で、業種ごとの離れやすさは業界研究と若者のキャリアの回でそれぞれ扱った。地方で働く道を含めて考えるなら、FLASPOのように地域と人をつなぐ場で、その土地の仕事が実際に何を求めているかを先に聞いておくと、使う時間の向きを決めやすい。
よくある質問
二十代のうちに取っておいたほうがよいのでしょうか
時間の面では追い風がある。二十代は一人あたりの学習時間が年55.0時間で全年代の中で最も長く、会社の訓練も47.5パーセントが受けている。ただ、この時期は研修と重なりやすい。先に職場の予定を押さえ、受験の時期を外側に置くほうが、途中でやめずに済む。
正社員以外で働いていると、学ぶ機会は得にくいですか
統計の上では開きがある。自己啓発を行った人は正社員43.3パーセント、正社員以外15.9パーセントで、会社からの自己啓発支援も33.1パーセントと15.8パーセントで差がつく。勤め先の制度に頼りにくい分、受講料の補助が付く公的な仕組みを先に調べる価値がある。
お金がかかるので踏み出せません
自己負担の分布を見ると、ゼロ円が41.4パーセント、二万円未満が八割近くを占める。無料の教材や勤め先の補助で収めている人が多いという意味だ。高額な講座が唯一の道ではないので、金額を理由に止まる前に、無料で届く範囲を一度ためしてみるとよい。
会社の補助を使うと、辞めにくくなりませんか
費用の返還を定める規程がある職場はあるため、申し込む前に条件を読むのが先になる。ただ、会社が増やしてきたのは労働時間の短縮で、平成30年の37.8パーセントから52.9パーセントへ動いた。制度に縛られたくないなら、補助ではなく時間のほうを使うという選び方もできる。
何から手をつけるのが無理がないですか
志望先や勤め先の求人票を三件ほど開き、必須条件の欄に資格名が書かれているかを見るところから始めたい。書かれていれば持っていないと落ちる、歓迎条件なら同点のときの材料、記載がなければ別の指標で測られている。順番はそこで決まる。
出典
厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」の結果/厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」
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