内定先の「リモート可」は、どこまで約束なのか
地元に戻っても今の仕事を続けられる、と言われて住む場所の算段を先に立てる人がいる。ただ、面談で交わした口頭の「リモート可」と、就業規則に書かれた在宅勤務の定めは別のものだ。後者が無い会社では、回線代を誰が持つのか、始業前に家族の用を済ませた時間をどう扱うのかが、そのたびの相談になる。
国土交通省が令和8年3月24日に公表した令和7年度テレワーク人口実態調査は、2025年10月24日から11月4日にかけて就業者40,000人に尋ねたものである。回答の内訳は雇用型就業者36,391人と自営型就業者3,609人で、雇用型テレワーカーの割合は25.2%、前年度から0.6ポイント増えた。直近1年間に実施した人の割合は16.8%で、1.2ポイントの増加である。コロナ禍のあと減り続けていた両方の数字が、この回で増加に転じた。
勤務先に制度等が導入されていると答えた雇用型就業者は34.1%だった。そのうちテレワークをしたことがある人は64.8%に上がっている。制度を持つ会社では3人のうち2人が実際に使っているのに、制度そのものを持つ会社は3社のうち1社という形だ。「可」と言われたときに確かめる価値があるのは、この制度の有無である。
同じ会社名でも、配属される仕事で見通しが変わる
同じ調査は、テレワーカーの割合を業種ごとにも出している。雇用型で最も高いのは情報通信業の74.1%で、学術研究・専門技術サービス業が54.0%で続く。低いほうは宿泊業・飲食業の6.0%、医療・福祉の6.4%である。令和5年度との比較では電気・ガス業が約4ポイント上がった。
自営型でも並びは似ていて、情報通信業73.5%、学術研究・専門技術サービス業56.3%が上に来る。下は農林漁業や鉱業の6.6%、宿泊業・飲食業の9.3%だった。自営型では建設業の伸びが大きい。
| 業種 | 雇用型(令和7年度) | 自営型(令和7年度) |
|---|---|---|
| 情報通信業 | 74.1% | 73.5% |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 54.0% | 56.3% |
| 医療、福祉 | 6.4% | ― |
| 宿泊業・飲食業 | 6.0% | 9.3% |
| 農林水産・鉱業 | ― | 6.6% |
この数字は、会社がどれだけ制度を入れたかではなく、働く本人が実際にテレワークをしたかを数えたものだ。希望する業界が下のほうに並んでいるなら、戻る時期と職種の組み合わせを先に考えておく必要がある。Uターン先は三大都市圏で違うという転入のかたちと重ねて見ると、選べる地域の幅も見えてくる。
回線代と電気代の負担は、規則に書かれて初めて動く
厚生労働省のテレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインは、費用の扱いが企業ごとに様々であることを前提に置いている。労使のどちらがどのように負担するか、会社が負担する場合の限度額、本人が請求する方法をあらかじめ話し合い、就業規則等に定めておくことが望ましいという書き方だ。
望ましいで済まない部分もある。情報通信機器や作業用品その他の負担を労働者にさせる定めを置くときは、労働基準法第89条第5号により就業規則に規定しなければならない。つまり「自分の回線で働いてもらう」という運用は、規則に書かれていなければ根拠を欠く。
同じガイドラインは、本人が契約した回線で業務を行わせて通信費や電気料金が増える場合、実際の費用のうち業務に要した実費を、勤務時間等の実態を踏まえて合理的・客観的に計算して支給することも考えられるとしている。入社の条件を詰める段階で見るべきは、手当の名前よりもこの計算方法がどこに書かれているかである。
国税庁の算式は、2分の1から始まっている
では実費はどう割るのか。国税庁の在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQは、令和3年1月に出て令和8年4月1日に更新されている。通信費の業務使用部分は、1か月の基本使用料や通信料に、その月の在宅勤務日数を月の日数で割った比率を掛け、さらに2分の1を掛けて求める。
末尾の2分の1には根拠が示されている。1日24時間から平均睡眠時間8時間を引いた16時間のうち、法定労働時間の8時間が占める割合である。睡眠時間は平成28年社会生活基本調査の7時間40分を切り上げたものだ。9月に20日間在宅勤務をして基本使用料と通信料が1万円だった場合、1円未満を切り上げて3,334円が業務使用部分になる。
電気料金は、ここに業務で使った部屋の床面積を自宅の床面積で割った比率がもう一つ掛かる。より精緻な方法で算出した金額を支給する場合も、給与として課税しなくて差し支えないとされている。FAQの問7は、スマートフォン料金4,800円のうち通話明細で確認できる業務通話料800円は課税不要、基本使用料とデータ通信料4,000円については算式で出た1,000円が非課税、残る3,000円は給与として課税する必要があるという計算を示す。
| 会社からの支給の形 | 給与として課税されるか |
|---|---|
| 毎月5,000円を渡切りで支給する在宅勤務手当 | 課税される |
| 領収証を出して実費を精算する方法 | 課税されない |
| 会社所有のパソコンや椅子の貸与 | 課税されない |
| 事務用品等の支給で所有権が本人に移る場合 | 現物給与として課税される |
| 算式で計算した通信費・電気料金の精算 | 課税されない |
| レンタルオフィス代を立替えて領収証で精算 | 課税されない |
時間の管理と労災は、戻った先の部屋まで届く
働く場所が実家の一室になっても、労働基準法と労働安全衛生法はそのまま適用される。ガイドラインは、一定程度業務から離れる中抜け時間について、使用者が把握してもよいし、始業と終業の時刻だけを把握してもよいとしている。把握するなら休憩時間として終業時刻を繰り下げるか時間単位の年次有給休暇として扱い、把握しないなら始業と終業の間を休憩を除いて労働時間とする。どちらを採るかをあらかじめ就業規則等に定めておくことが重要だと書かれている。
事業場外みなし労働時間制を使う会社もある。適用の要件は二つで、情報通信機器を使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、随時具体的な指示に基づいて業務を行っていないことである。会社支給の携帯を持っていても、折り返すタイミングを本人が判断できるなら一つ目は満たす。指示が目的や期限といった基本的事項にとどまり、一日の作業内容と時間を決めてしまうものでなければ二つ目を満たす。
災害の補償も変わらない。労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じた災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象になる。私的行為が原因のものは対象にならない。なお事務所衛生基準規則や情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインは自宅には一般には適用されないが、会社は同等の作業環境となるよう教育や助言を行い、別紙2のチェックリストで状況の報告を求めることとされている。この違いを知らずに「自宅は対象外」と思い込むと、相談できる窓口を自分で閉じてしまう。
よくある疑問
制度が無い会社に頼み込む価値はあるか。ガイドラインは費用負担や中抜け時間の取扱い、連絡方法について労使で話し合ってルールを定めることを求めている。個人の例外として認めてもらう形では、規則の裏づけが残らない。入社前なら、制度の有無と規定の場所を確認するほうが早い。
在宅勤務手当は多いほうが得なのか。使わなくても返さなくてよい渡切りの手当は、金額にかかわらず給与として課税される。実費精算なら課税されないため、同じ1万円でも手取りは変わる。名目を確かめておきたい。
昼食の補助はどう扱われるのか。FAQの問12は、月16,200円分の食券を交付して本人が半額の8,100円を支払う例を挙げる。徴収額が食事の価額の50%以上で、消費税等を除いた会社負担が月額7,500円を超えないこと、利用を在宅勤務日の本人の食事に限り1回2,500円までとすること、繰越分の利用期間を交付日から1年とすることなどの条件を満たせば、課税は不要とされている。
住民票や税金はどうなるのか。働く場所と課税される場所は別の決まりで動く。ここは二地域居住と税金の整理が参考になる。回線そのものの事情は地域の光ファイバ整備率の側から見ておくとよい。
地域とのつながりを仕事以外からつくる道もある。学生のうちに地域の課題に取り組む企画へ応募しておくと、戻る先の人の顔が先に見える。FLASPOのようなコンテストの一覧は、その入口を探すのに使える。
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