三年目の秋になると、隊員のあいだで同じ質問が出る。任期が明けたあと、失業給付は受け取れるのか。結論から言えば、受け取れる人と受け取れない人がいて、その分かれ目は活動の内容ではなく、自治体がその人をどう扱っていたかにある。雇用保険法の条文をたどると、判定の順番がはっきり見えてくる。
まず「雇用されていたか」で分かれる
雇用保険法第4条は、被保険者を「適用事業に雇用される労働者」と定義する。第5条は「労働者が雇用される事業」を適用事業とし、第4条第2項は離職を「事業主との雇用関係が終了すること」と定めている。制度の土台に雇用関係が置かれているということだ。
地域おこし協力隊の受け入れ方は一通りではない。自治体が隊員を会計年度任用職員などとして任用する形と、雇用関係を結ばずに委嘱する形がある。前者であれば雇用保険の判定に進むが、後者は雇用関係そのものがないため、被保険者には当たらない。報償費を毎月受け取っていても、それが労働の対償としての賃金に当たらなければ、法律上の離職も起こらない。
自分がどちらだったかは、委嘱状や任用の辞令、そして毎月の明細を見れば分かる。雇用保険料が控除されていれば被保険者であり、控除がなければそうではない。任期中の身分の違いは、報酬の呼び方や社会保険の入り方にも効いてくる。地域おこし協力隊が任期を終えた後の収入も、この区別を前提にしている。
雇用されていても外れる三つの型
任用されていた場合でも、雇用保険法第6条が並べる適用除外に当たれば被保険者にならない。協力隊に関わりやすいのは三つだ。第1号は1週間の所定労働時間が20時間未満である者、第2号は同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者である。週の勤務時間が条例や要綱で短く設定されていると、ここで外れる。
もう一つが第6号で、国や都道府県、市町村などの事業に雇用される者のうち、離職した場合に他の法令や条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付および就職促進給付の内容を超えると認められる者であって、厚生労働省令で定めるものを外している。退職手当の仕組みが用意されている常勤的な職員は、こちらの考え方で整理される。
つまり週の勤務時間、任用の見込み期間、退職手当の有無という三つを確かめれば、被保険者だったかどうかの見当はつく。募集要項に「週29時間」や「週30時間」と書かれている自治体が多いのは、この線を意識した設計でもある。
受給資格は「2年で12か月」が原則
被保険者だったとして、次に見るのは期間である。雇用保険法第13条は、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あったときに基本手当を支給すると定める。被保険者期間は離職日から1か月ごとに区切り、賃金支払いの基礎となった日数が一定以上ある月を数える方式だ。
例外があるのが特定理由離職者と特定受給資格者で、この場合は「離職の日以前1年間に6か月以上」に緩む。第13条第3項は特定理由離職者を、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ更新がないこと、しかも本人が更新を希望したにもかかわらず合意に至らなかった場合などと規定している。任期満了で辞めた隊員がここに当たるかどうかは、更新を望んでいたかという事実関係で変わる。
活動期間が概ね1年以上3年以下という制度の設計上、被保険者だった隊員の多くは12か月の条件を満たす。問題になりやすいのは、年度途中で任用形態が変わった人や、1年未満で中途終了した人である。
待期7日、給付制限、そして90日
支給の始まりは第21条が定める。求職の申込みをした日以後、失業している日が通算して7日に満たない間は支給されない。これが待期である。自己都合による退職や重大な理由による解雇の場合は第33条の給付制限が重なり、待期の満了後1か月以上3か月以内で公共職業安定所長が定める期間は支給されない。
厚生労働省が配っている受給者向けの案内では、正当な理由のない自己都合離職の給付制限は、離職日が令和7年4月1日以降なら原則1か月、同年3月31日以前なら原則2か月とされている。5年間に2回以上自己都合で離職して受給資格決定を受けた場合や懲戒解雇の場合は3か月だ。令和7年4月以降に教育訓練等を受けた人は、この制限が解除される仕組みも入った。
| 項目 | 定め | 根拠 |
|---|---|---|
| 受給資格 | 離職の日以前2年間に被保険者期間12か月以上(特定理由離職者等は1年間に6か月以上) | 雇用保険法第13条 |
| 待期 | 求職の申込み後、失業している日が通算7日 | 同第21条 |
| 給付制限 | 待期満了後1か月以上3か月以内で職安所長が定める期間 | 同第33条 |
| 所定給付日数 | 算定基礎期間10年未満90日/10年以上20年未満120日/20年以上150日 | 同第22条 |
| 受給期間 | 離職の日の翌日から1年 | 厚生労働省の受給案内 |
| 失業の認定 | 原則4週間に1回 | 同 |
日数については第22条が、算定基礎期間10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日と定める。三年間の任期を終えた人は10年未満に入るため90日だ。倒産や解雇に当たる特定受給資格者と一部の特定理由離職者は別表が使われ、厚生労働省の業務取扱要領によれば30歳未満で算定基礎期間5年以上10年未満なら120日、10年以上20年未満なら180日となる。
任期後に事業を始めるなら、受給期間の特例を見る
基本手当の受給期間は離職の日の翌日から1年で、この期間を過ぎると日数が残っていても支給されない。任期が明けてすぐ開業の準備に入ると、求職活動をしていない期間に1年が流れてしまい、事業がうまく立ち上がらなかったときに何も残らない。ここに手当てをしたのが受給期間の特例である。
令和4年7月1日に新設されたこの特例は、離職後に事業を開始した人について、事業を行っている期間等を最大3年間、受給期間に算入しないという仕組みだ。要件は五つで、事業の実施期間が30日以上、事業を開始した日や専念し始めた日から30日を経過する日が受給期間の末日以前、就業手当または再就職手当の支給を受けていない、その事業により自立することができないと認められる事業ではない、離職日の翌日以後に開始した事業であること、である。
四つ目の要件は、開業届の写しや登記事項証明書、事業許可証といった客観的な資料で事業の実在が確認できるかどうかで判断される。任期後に起業する隊員は少なくないが、この申請を知らずに1年を使い切ってしまう例が出やすい。任期後の進路の分布は任期を終えた協力隊の23%はどこへ行ったかで数字を追った。
よくある質問
手続きはどこへ行けばよいのか。基本手当の受給資格決定は住居所を管轄するハローワークで行い、離職票と本人確認の書類などを持参する。医療保険と年金の切替は市区町村の窓口で、別の手続きになる。任期が切れた日から始まる年金側の期限は協力隊の任期が切れた日から始まる国民年金に整理がある。
1日いくら受け取れるのか。原則として離職の日以前6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割った金額が賃金日額となり、その5割から8割が基本手当日額になる。賃金の低い人のほうが給付率は高く、上限額と下限額も定められている。報償費が賃金として扱われていたかどうかで算定の元が変わるため、離職票の記載を確かめるのが先だ。
任期満了は自己都合に当たるのか。更新を希望したのに合意に至らなかった場合などは特定理由離職者として扱われる余地があり、該当するかどうかの判断はハローワークが離職理由をもとに行う。自治体が離職票にどう書いたかが起点になるので、受け取った時点で内容を読むべきである。
条文と資料はどこで読めるか。制度の骨格は雇用保険法の第4条・第6条・第13条・第21条・第22条・第33条に置かれている。手続きの流れは厚生労働省の雇用保険の失業等給付 受給者のみなさまへ、所定給付日数の表は雇用保険に関する業務取扱要領で確認できる。地域に関わる進路を考えている学生は、FLASPOのような窓口から受け入れ側の条件を見ておくと、任期中の身分の違いにも早く気づける。
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