報償費が止まる日に、立場も切り替わる
任期の最終月は、引き継ぎと荷物の整理で手一杯になる。そこで抜けやすいのが年金の届出である。地域おこし協力隊は自治体からの委嘱を受けて活動する形が基本で、任期は1年以上3年以内と定められている。任用の形が自治体ごとに違うため、任期中にどの制度へ入っていたかも人によって変わる。
勤務時間が常勤に近い形で任用されていた人は、厚生年金保険の被保険者だった可能性がある。一方、委嘱で活動していた人は国民年金の第1号被保険者として自分で保険料を納めてきたはずだ。前者の場合、任期が終わって次の勤め先に入らないなら、厚生年金から国民年金第1号への切り替えが必要になる。
切り替えが要るかどうかは、感覚ではなく任用の形で決まる。協力隊の副業が任用形態で決まることを整理した記事と同じ分かれ目が、ここでも効いてくる。報償費が止まる日に何が止まり、何が始まるのかを先に押さえておくと、翌月の慌て方が変わる。
14日という期限は、退職日の翌日から数える
期限は思っているより短い。日本年金機構の案内では、国民年金に加入する届出は退職日の翌日から14日以内に行い、提出できるのは本人または世帯主である。提出先は住所地の市区役所または町村役場の国民年金担当窓口、もしくは年金事務所で、郵送でも出せる。マイナポータルからの電子申請も用意されている。
持ち物は、基礎年金番号通知書など基礎年金番号が分かるもの、または個人番号が分かるものである。退職の直後に手続きをする場合は、厚生年金保険の資格喪失日を証明できる書類、つまり離職票などを求められることがある。手続きから約2週間後に、加入した月の分からの納付書が届く。
忘れやすいのは家族の分である。退職した人に扶養されていた20歳以上60歳未満の配偶者は、国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者への変更の届出が必要になる。日本年金機構も配偶者の届出が必要かという問いに、必要だと答えている。世帯で任地を離れる場合は、自分の分と合わせて二人分を出すことになる。
届く納付書の額は、令和8年度で1カ月あたり17,920円である。報償費が入っていたころの手取りと並べると、収入が止まった月に固定費が一つ増える形になる。任期後の収支を組み立てた報償費が止まる日から先の収入の記事に、この金額を重ねて見ておきたい。
払えない月は、黙って放置しない
収入が途切れた時期に17,920円を毎月出すのは重い。制度はそれを前提に、免除と納付猶予という二つの出口を用意している。前年所得が基準以下であれば申請でき、区分は全額免除から4分の1免除まで四段に分かれる。納付猶予は20歳以上50歳未満の人が対象で、本人と配偶者の前年所得で審査される。
| 区分 | 前年所得の基準 | 年金額への反映(平成21年4月以降) |
|---|---|---|
| 全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 | 2分の1 |
| 4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 8分の5 |
| 半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 8分の6 |
| 4分の1免除 | 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 8分の7 |
| 納付猶予 | 全額免除と同じ計算式(20歳以上50歳未満) | 反映されない |
任期満了の年に効くのは、失業等による特例免除である。失業や倒産、事業の廃止などの事実が確認できたときは、前年所得にかかわらず免除や納付猶予を受けられる。審査では退職した人の前年所得をゼロとして扱う。必要なのは雇用保険被保険者離職票の写しや、ハローワークの雇用保険受給資格者証などで、申請は原則として毎年度行う。
出し方は窓口に限らない。免除と納付猶予の申請書は電子申請に対応しており、マイナポータル経由でも出せる。離職日の翌日を該当年月日として入力し、失業前の雇用保険の加入有無を選び、証明書類の画像を添える流れになる。任地を離れたあとで住所が落ち着かない時期でも、手を止めずに進められる。
さかのぼれる幅も決まっている。申請できるのは保険料の納付期限から2年を経過していない期間で、申請時点から2年1カ月前までが対象になる。承認された期間の保険料は、10年以内であれば追納できる。手元に余裕が出た年に、過去の穴を埋め直せる設計である。
上乗せの道と、免除は同時に通れない
任期後に自分で事業を始めた人が次に当たるのは、基礎年金だけでは薄いという問題である。第1号被保険者には上乗せの選択肢が二つある。一つは付加保険料で、月額400円を通常の保険料に足して納めると、受け取る付加年金の年額が「200円×付加保険料納付月数」で計算される。10年納めれば年額24,000円が一生加わる形になる。
もう一つは国民年金基金である。対象は日本国内に住む20歳以上60歳未満の第1号被保険者で、60歳以上65歳未満の人や海外に住む任意加入者も入れる。ただし基金に加入している間は付加保険料を納められない。二つは並べて使えず、どちらかを選ぶ関係にある。
ここで効いてくるのが、前の段で触れた免除との関係である。国民年金基金は、保険料の免除を受けている第1号被保険者は加入できない。一部免除や学生納付特例、納付猶予の対象者も同じ扱いになる。免除を使って目先の支出を抑えると、上乗せの入口は閉じる。免除していた期間の保険料を納めたあとに加入する人には、一定期間、掛金の上限が10万2,000円になる特例がある。
3年という期間を、年金の目で数え直す
協力隊の3年は、年金の記録のうえでは36か月の塊として残る。委嘱で第1号だった人は、その36か月が納付済みなのか、免除なのか、未納なのかで将来の額が変わる。全額免除で通した36か月は、納めた場合の半分として評価される。納付猶予にしていた36か月は、受給資格期間には入るものの老齢基礎年金の額には反映されない。
未納のまま放置した期間は、どちらにも入らない。追納できる10年という窓が開いているうちに手を打つかどうかが、分かれ目になる。任期中に報償費から保険料を払い続けるのは楽ではないが、猶予と未納は記録上まったく違う扱いを受ける。申請の紙を一枚出したかどうかで差がつく。
進路の決め方そのものも、ここに関わる。任期後に地域の法人へ就職すれば厚生年金に戻り、保険料の半分は事業主が負担する。独立すれば第1号のまま、上乗せを自分で設計することになる。卒業後の進路を5つの道に分けた記事の分岐は、年金の形の分岐でもある。地域に関わりながら進路を探す段階にいるなら、FLASPOのような場で現場を見ておくと判断材料が増える。
よくある質問
任期が終わってすぐ次の自治体の協力隊になる場合はどうなるのか。委嘱のままであれば第1号被保険者が続くため、切り替えの届出は要らない。常勤に近い任用から委嘱へ変わるときは、厚生年金の資格喪失に伴う届出が必要になる。自分の任用の形は委嘱状や辞令で確かめるのが確実である。
免除と納付猶予は、どちらを選ぶべきか。老齢基礎年金の額に半分が反映される全額免除のほうが、額の面では有利になる。納付猶予は受給資格期間には入るが額には響かない。50歳以上の人は納付猶予を使えないため、免除の側で申請することになる。
付加保険料は途中からでも始められるのか。納付は申出をした月の分から始まり、期限は翌月末日である。期限を過ぎても2年間は納められる。月400円という金額の割に、受け取り始めてからの回収は早い部類に入る。
申請は一度で済むのか。免除と納付猶予の申請は原則として毎年度必要で、特例免除で承認された人も翌年度はあらためて出すことになる。年度が替わったことに気づかず一年空けてしまう例があるため、承認通知の有効期間を確かめておきたい。
一次情報はどこを見ればよいか。加入の手続きは国民年金に加入するための手続き、保険料の額は国民年金保険料、免除と納付猶予は免除制度・納付猶予制度、付加年金は日本年金機構の付加年金のページ、基金の加入条件は国民年金基金の加入資格にある。
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