本業のほかに仕事を探している人は493万人
住んでいる場所から離れた地域に関わる仕事を、本業と並べて持ちたい。そう考える人がどれくらいいるのかは、感覚では測りにくい。手がかりになるのは総務省統計局の就業構造基本調査で、本業を持ちながら「他の仕事もしたい」と答えた人を追加就業希望者として数えている。農林業以外を本業とする働き手のうち、2022年の追加就業希望者は493.4万人だった。
5年前の2017年は399.9万人で、93.5万人増えている。働き手に占める比率は7.8%、2017年からは1.3ポイントの上昇である。15年前の2007年が5.2%だったことを並べると、この希望は一時の揺れではなく、長い上り坂のうえにあることが見えてくる。地域側が「関わってくれる人がいない」と言うとき、母数そのものは年々太っているという前提から始めたほうが話が早い。
注意しておきたいのは、この数字が「探している」ではなく「したい」を数えていることである。求人に応募した段階の人だけを拾った数ではないため、実際に動き出す人はこれより少ない。それでも、受け入れ側が声をかける相手の輪郭としては、493万人という規模が出発点になる。
希望と実行のあいだに188万人の差がある
同じ調査は、すでに副業を持っている人も数えている。2022年に副業がある人は304.9万人で、働き手に占める比率は4.8%だった。追加就業希望者の493.4万人と引き算すると、188.5万人が「したいが、まだしていない」側に残る。関わり方を設計する余地があるのは、まさにこの層である。
この差が埋まらない理由は調査から直接は読めないが、間に何が挟まっているかは想像がつく。時間の取り方、勤め先の許可、仕事の探し方、報酬と税の扱い。どれも一つずつ確かめないと先に進めない項目で、どこかで止まった人が188.5万人の中に積み上がっていく。地域の側が募集を出しても反応が薄いとき、関心が無いのではなく手前の確認で止まっている場合がある。
逆に言えば、受け入れ側が用意すべきものは仕事の魅力だけではない。何時間でいいのか、いつ行けばいいのか、報酬はどう払われるのか。この三つが先に見えている募集は、同じ内容でも届く相手の数が変わる。FLASPOが学生や若手の相談で受ける質問も、動機より先に段取りへ向かうことが多い。
比率が高いのは東京都と沖縄県の10.2%
都道府県別に追加就業希望者比率を並べると、最も高いのは東京都と沖縄県で、どちらも10.2%だった。続くのが神奈川県と京都府の8.8%、その次が奈良県と福岡県の8.4%である。低い側は福島県の5.4%、岩手県の5.7%、新潟県の5.8%と並ぶ。
人数で見ると景色が変わる。東京都は82.2万人、神奈川県は43.7万人で、比率の高さと人口規模が重なるため厚い層になる。一方の沖縄県は7.1万人で、比率は東京都と同じでも実数は12分の1に満たない。送り出す側として数を期待できるのは都市圏で、比率の高さが地域の内側の事情を映しているのが沖縄県という読み方になる。
| 都道府県 | 2022年の追加就業希望者数(万人) | 追加就業希望者比率(%) | 2017年からのポイント差 |
|---|---|---|---|
| 全国 | 493.4 | 7.8 | 1.3 |
| 東京都 | 82.2 | 10.2 | 1.6 |
| 沖縄県 | 7.1 | 10.2 | 0.7 |
| 神奈川県 | 43.7 | 8.8 | 1.3 |
| 京都府 | 11.4 | 8.8 | 1.1 |
| 奈良県 | 5.1 | 8.4 | 1.5 |
| 福岡県 | 21.2 | 8.4 | 1.7 |
| 新潟県 | 6.1 | 5.8 | 0.6 |
| 岩手県 | 3.2 | 5.7 | 0.8 |
| 福島県 | 4.7 | 5.4 | 0.3 |
上がり幅で見ると、愛知県が2.1ポイント、熊本県と香川県が1.9ポイントと、必ずしも大都市だけが動いたわけではない。地域に関わる人を探すとき、送り出し元を首都圏に限って考える必要はないことが、この差分の並びから読める。
この5年で動いたのは正社員の側だった
雇用形態で分けると、変化の中身がはっきりする。正規の職員・従業員の追加就業希望者比率は2017年の5.3%から2022年の7.7%へ、2.4ポイント上がった。対する非正規の職員・従業員は8.4%で、5年前から0.1ポイント下がっている。2007年には4.0%と7.2%で3.2ポイント開いていた差が、0.7ポイントまで縮んだ。
非正規側の比率がもともと高いのは、収入を補う必要が背景にあると考えるのが自然である。これが横ばいのまま、正規側だけが押し上がった。つまりこの5年で増えたのは、生活のために追加の仕事を探す人ではなく、勤め先の仕事を続けたまま別の場をもう一つ持ちたいという層だと読める。
地域側にとっては、この変化が募集の書き方に直結する。平日の日中を空けられない相手が増えているのだから、週末や夜に寄せられる役割、遠隔で成り立つ役割の有無が応募の分かれ目になる。報酬の額より、勤め先と両立できる形かどうかが先に見られる。
辞めてから探す人まで含めた全体像
本業を持ったままの希望とは別に、すでに仕事を離れた人の層もある。同じ調査では、過去5年間に前職を辞めて別の仕事に就いた転職就業者が1,245.7万人、辞めたまま仕事をしていない離職非就業者が748.9万人だった。前者は5年前から19.0万人増え、後者は33.1万人減っている。
離職の理由で最も多いのは「労働条件が悪かったため」の232.6万人、次が「病気・高齢のため」の216万人、その次が「定年のため」の173.0万人である。注目したいのは増減で、5年前から最も増えたのは「自分に向かない仕事だった」の25万人増だった。待遇ではなく仕事の内容と自分が合わないことを理由に挙げる人が増えている。
働いていない人の側も見ておきたい。15歳以上で無業の人は4,313.5万人、そのうち就業希望者は782.7万人で、無業者に占める割合は18.3%だった。男女・年齢で分けると、男性では70〜74歳の35万人に次いで20〜24歳が34万人と多く、女性では35〜39歳の46万人が最多である。若い世代と子育て期の層に、まだ仕事に就いていない希望が固まっていることがわかる。
よくある質問
追加就業希望者と副業がある人は、どこが違うのですか。前者は本業を持ちながら他の仕事もしたいと答えた人、後者は実際に本業以外の仕事を持っている人を指す。どちらも農林業と分類不能の産業を本業とする人は除いて数えられているため、比較するときは同じ土台のうえで見ることになる。
この数字はどのくらいの頻度で更新されますか。就業構造基本調査は昭和57年以降は5年ごとに実施されており、直近は2022年10月1日を基準日とした令和4年調査である。全国で約54万世帯、15歳以上の世帯員約108万人を対象にした標本調査で、結果は2023年に公表された。次の調査結果が出るまでは、この値が最新の姿として使われる。
学生のうちから地域に関わる場合も、この統計に入りますか。入らない。追加就業希望者は有業者を母数にしているため、アルバイトを本業として答えていない学生は数に乗らない。学生の関わり方を考えるときは、インターンや大学の授業の枠、自治体の短期滞在の制度といった別の入口を見たほうが実像に近い。
勤め先に黙って地域の仕事を受けても構いませんか。制度上の可否は勤務先の規程によるため、就業規則の副業に関する条項を先に確かめることになる。許可や届出が必要な職場は少なくないうえ、報酬の受け取り方によっては確定申告が必要になる。FLASPOに届く相談でも、ここを曖昧にしたまま受けてしまって後から整えるほうが手間がかかっている。
受け入れ側は何人くらいを見込めばよいのですか。全国の比率をそのまま自分の地域に当てる使い方は向かない。送り出し元になりそうな都市の実数と、片道の移動時間、関われる曜日の条件を重ねたうえで、現実的な母数を絞っていくほうが見込みに近づく。
出典:総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」(PDF)、同調査の案内ページ。関連する記事として地域の副業は250万人、制度は299名、リージョナルキャリアとは何か、20代はどの入口から地域に関わるかも参照できる。
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